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店長の少し偏ったケルト話

ナンシー・マリガンとエド・シーラン

世界中で大人気の歌手エド・シーランが2017年に発表したアルバム「÷」の中に、2曲のアイリッシュ・テイスト満載のステキな曲が収録されています。
前回「Galway Girl(ゴールウェイの女の子)」を紹介したので、今回は2曲目の「Nancy Mulligan(ナンシー・マリガン)」を紹介したいと思います。

こちらはエドの祖父母の馴れ初めを歌った心温まる「家族の歌」ですが、紹介されている歌詞はなかなかに歴史の重みを感じるものになっています。
そんなアイルランドのネタを少しまとめてみました。
おおまかな歌詞はこんな感じ。

24歳の時に運命の女性に出会ったんだ。
彼女のお父さんには猛反対されたけど、ぼくらは結婚した。
宗教なんて関係ない、ウェックスフォードの境界で、
愛する人と結婚したんだ。
ぼくはウィリアム・シーラン、そして彼女はナンシー・マリガン。

はじめて彼女を見たのは戦争中の病院だった。
彼女は見たことがないぐらい美しい女性で
見た瞬間、ぼくの黄色いバラになったんだ。
借り物の服で結婚式を挙げた。

ぼくはベルファスト生まれの田舎者、一度だって王様のことを
心配したことなんてない。
だって、南の女性に恋したんだから。
そこに違いなんてひとつもない。


的な、内容です。
まず、アイルランドの地図を見ておきましょう。

ご存知の方も、ご存知でない方も、アイルランドはこんな感じで南北に分かれているんです。
上のオレンジ色が「北アイルランド」で、英国の領土です。(グレートブリテン及びアイルランド連合王国という名前の理由はこのオレンジ部分ですね)

そしてその下にある緑色の部分が「アイルランド共和国」、1949年にそれまで支配されていた英国から完全に分離して現在の形になります。
が、独立運動前後で、うまく折り合いをつけきれなかった部分がアイルランド島北部だったわけです。

すごくざっくりお伝えすると、英国がアイルランドを支配している間、英国人がたくさんアイルランド島にやってきます。

アイルランドで昔から受け継がれてきたのは、聖パトリックが広めたカトリック、でもお隣英国はエリザベス女王時分にごにょごにょして、新しい宗派プロテスタントに移行しました。

そのため、カトリックの町にやってきた新しいリーダーはプロテスタント、しかも『後から来たくせに宗教を変えろとか言ってくるし、横柄だしろくでもねぇな、プロテスタント』みたいな空気に包まれます。

英国人だって、その空気はちょっと気まずいので、じゃあ北に安全圏をこさえましょ、ってな具合に、プロテスタントが北に集まります。
アイルランド人の中でも、カトリックよりプロテスタントの方がナウいよねーってな人は北に移動しました。

そんな状況の中で、英国からの独立運動が始まり、「北にいるプロテスタントも出ていけよなー」っていう人たちと、「いやいや、北にいるのは英国人が主だし、南の連中とはソリが合わないからムリー」っていう人たちに分かれてケンカが勃発。(IRAのみなさんとかが張り切っていた時代に突入)

そういった時代背景があったということを、ぜひともこの曲を聴く時に思い出してください。
さて、久しぶりに曲に戻って来ましたね。

エドのおじいさん、ウィリアム・シーランは、北アイルランドのベルファストの出身でプロテスタント、対しておばあさんのナンシー・マリガンはアイルランドの南部出身、もちろんカトリック。

そんなわけで、ナンシーのお父さんは「ベルファスト?プロテスタント?冗談じゃない!」という反応を示したわけです。
ウィリアムの方だって、「なんだって南のカトリック娘を選ぶんだい」ということで、誰も結婚式に参加したがらなかったこともあり、ふたりにゆかりのない地、ウェックスフォード(英国に面した港町なので比較的寛容だったのでしょうか)の州境で結婚したというわけです。

そんなわけで「宗教なんて関係ない」「王様や王位なんて気にしない」「だって南の女性に恋したんだから」といった歌詞の間に、すごく大きな時代の流れに翻弄されながらも、国や宗教を超えて幸せになれたカップルの素敵で重みのある物語がつまっているんですね。

ちなみに使われている伝統楽器はティン・ホイッスル(なんとブライアン・フィネガン)、フィドル(アイルランド出身の女性フィドル奏者ニアム・ダン)、バウロン(英国のバウロン奏者イーモン・マレー)、アコーディオン!
 
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