アイルランド音楽を演奏していると、#(シャープ)が1個か2個の曲ばかり。だから、突然 ♭(フラット)がついた曲が出てきたり、低音がレより下の曲があると、びっくりしますよね。
そんな曲を吹きたくなった時や、吹かなければいけなくなった時、それがD管以外のティン・ホイッスルを買う時です!
リコーダーやモダン・フルート、キー付きフルートであれば、1本の笛ですべての半音階や調に対応できます。
ですが、ティン・ホイッスルやキー無しアイリッシュ・フルートは半音が苦手ですから、演奏できる調は限られてしまいます。無理をして指を半分開けて半音を吹いたりしても、音程が悪く、せっかくのケルトの笛らしさが全然出ずに、ストレスがたまってしまいます。
さあ、今こそ違う調子(ちょうし)の笛の使い方を覚えましょう!
様々な調子の笛を用意すれば、もうどんな調が来ても、怖くはありませんよ。
いつも吹いているD管の運指のまま、異なる調のティン・ホイッスルを吹くと、異なる調を簡単に演奏することができます。
例えば、「Down by the Salley Gardens」をC管やBb管のティン・ホイッスルを使って、いつもの#2つの楽譜(譜例①)を読みながらいつもの運指で吹いたとき、下の譜例のようになります。
★譜例① いつもの楽譜
★譜例② C管のティン・ホイッスルで吹いた時に出ている音
★譜例③ B♭管のティン・ホイッスルで吹いた時に出ている音
演奏者が読んでいる楽譜の音程と実音とが異なる音になります。
このような楽器を「移調楽器」と呼びます。D管以外のティン・ホイッスルやアイリッシュ・フルートは、すべて移調楽器です。
たとえば歌手と演奏する時、原曲の調ではその歌手の声域に合わない場合があります。
そんな時にたくさんの調子の楽器を用意しておけば、同じ楽譜を使い、同じ運指で演奏しながら、歌手に合わせてどの調でも対応できるようになり、便利なのです。
D管では演奏しづらい調……たとえば#だらけの曲、#も ♭ も1つもない曲、♭の曲。こんな曲には他の調子の笛を使うことで演奏がしやすくなる場合があります。
たとえば、アイルランド音楽の「Julia Delaney's」という曲。
★譜例① Julia Delaney's の実音。
Fナチュラルが出てきますので、D管では演奏が困難ですね。
このようなとき、C管を使って譜例②をD管の運指で演奏すると、実音は譜例①と同じになります。
★譜例②
つまり、楽譜の書き換えが必要ではありますが、他の調子の笛を使うと吹きやすくなることがあるのです。
全12半音ごとの笛の調子と、それをいつものD管で言うと何調の運指にあたるのかを 一覧にまとめました。吹きやすい調は#が1個か2個ですから、GかDということになります。
表では、吹きやすい調を赤色にしました。
たとえば、G管の笛を使った時、C調(#も ♭もなし)の曲は、いつものD管で吹きやすいG調を演奏するのと同じ運指になります。
このように使ってみて下さい。
1. これから演奏する楽譜の調号(#や ♭の数)を調べて、その下をたどってDやGにあたる調子の笛を使うと、吹きやすくなります。
例えば、♭が3つの曲を吹くときに使いやすいのはB♭管とE♭管です。どちらを使うかは、どちらが笛の音域に収まりやすいかで決めましょう。
2. お店で販売している笛が、何の調に対して得意なのかを調べることができます。
例えば、E♭管の笛は、E♭(♭3つ) A♭(♭4つ)が得意な笛だということがわかります。
半音の苦手なケルトの笛ですが、他の調子の笛を使うことで演奏の可能性が広がりますので、このアイデアをぜひ活用してみてください。