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アングロ・コンサーティーナのキー配列

前回登場したボタン・アコーディオンと共に、ダイアトニック式(蛇腹の押し引きで音の高さが変わる)の代表と言える、アングロ・コンサーティーナは六角形で小さく可愛らしい楽器です。

左手側、右手側にそれぞれ15個のボタン(たて方向3列(段)に5個ずつ)があって、各列はボタン・アコーディオンやハーモニカと同様の配列で、左手側から右手側に、低→高となっています。

下から2列は、それぞれキー違いですが順番に音が並んでいます。例えば下段がG音階の列で、中断がC音階の列だと、C/Gと呼ばれている機種になり、アイルランド音楽ではこの機種が一般的です。C/Gは広く普及している様ですが、ボタン・アコーディオン同様、各地域で様々なキーの組み合わせがあり、他にはイングランドで主流のG/Dや, D/A、Bb/F等々があって、どの機種も下段と中断は完全4度の関係になっています(特注で別の組み合わせも出来るとの事)。

そしてアクシデンタル列と呼ばれる最上段の列には、前述の2列にない半音系の音などがランダムに配置されていて、一応どんな音階でも演奏可能なクロマチック的な要素も兼ね備えている点は、B/Cのダイアトニック・アコーディオンと同様と言えるでしょう。最上段を加えた30ボタン(左右15ずつ)式が基本的な機種になりますが、下2列だけ(20ボタン)の機種は安価でもあり、弾ける音階は限られますがお試しには適していると思います。

ここで、単にコンサーティーナと呼ばれる楽器には、大きく分けて2種類ある事をご紹介します。19世紀に、先ず、今日イングリッシュ・コンサーティーナと呼ばれている、押し引き同音式の楽器が発明されて、その後やはり19世紀にアングロ式が産まれました。他にも種類はあり、アルゼンチンタンゴで有名なバンドネオンもコンサーティーナから進化した楽器です。押し引き同音か異音かは大きな違いになるので、どちらを購入されるかは用途に依って変わります。

ここでは、アイルランド音楽で主流のアングロ式だけを取り上げていますが、クロマチック式のイングリッシュ・コンサーティーナは、持続音が出せるため歌の伴奏に適していると言われています。但し、この楽器でアイリッシュ・チューンなど、速い曲を弾く事も可能ですし、両方ともを弾きこなす人もいます。

同じ頃に産まれたアコーディオン類とコンサーティーナは、異なった経緯ながら、共に金属製のリードに蛇腹の操作で風を送って音を鳴らす、という仕組みから一般的にこの両者は、蛇腹楽器や、フリーリード楽器などと呼ばれています。

日本にも、コンサーティーナだったのか、1列式のダイアトニック・アコーディオンだったのかは定かでないですが、一番古くには江戸時代に既に持ち込まれていたという話もあり、その後は「手風琴」と呼ばれて随分人気もあった様です。

明治時代には、ダイアトニック・アコーディオンを弾きながら薬を行商して歩く「オイチニの薬屋」などでブームを起こし、国内での楽器作成も何度か試みられた様です。そして昭和に入ると「トンボ」ブランドが生まれて、最初の頃はダイアトニック式アコーディオンを制作していました。その後は、鍵盤式アコーディオンが隆盛を極めたので、いつしかダイアトニック式の生産は打ち切られましたが、今日アンティーク楽器として、あちらこちらに存在している様です。
私の家にも1台ありますが、2列式でB/C機種だったと言うのも興味深いところです。一方、コンサーティーナに関しては、これまでに日本国内で生産に乗り出した事は一度もなかったとの事です。今日、欧米からの輸入に頼っていると、常に需要に供給が追い付いていない状況なので、日本の技術力で国産品を生産しても良い時期に来ているのかなと思ったりもします。

前回にもご紹介した、アイルランド音楽の「Eb」での演奏の場では、C#/G#、Ab/Eb、の2機種も使われます。C#/G#は通常の機種C/Gから各列が半音上がった機種で理解できますが、このAb/Ebという機種は、普通の「D」での演奏の場ではG/D機種に当たります。G/Dは、モーリスダンス等イングランドで主流の機種として知られていますが、実はアイルランド音楽の演奏にも大変適していたりします……。
キーに関する事を文章で表すとややこしく思われてしまいそうですが、ご参考にして頂けたら幸いです。
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