近年、その豊かな暮らしで注目を集めている北欧の国、スウェーデン。
歴史、文化的にはケルトとは直接の関係はないのですが、音楽的にはケルト音楽と良く似た雰囲気を持っています。
つまり、フィドルやアコーディオンやバグパイプなどの楽器は共通であり、楽譜を使わずに短いフレーズのダンス曲を繰り返して演奏する点ではアイルランド音楽とまったく同じなのです。
しかし、ハープや様々な笛が盛んなアイルランドとは対照的にスウェーデン音楽で圧倒的に盛んな楽器はフィドルとニッケルハルパ。
笛は残念ながらマイナーな楽器です。それでは、どんな笛がどのように使われてきたのか?これまで余り知られなかったスウェーデンの笛音楽を探ってみましょう。
スウェーデン音楽の音階と演奏に向いている楽器
楽理的な観点でスウェーデン音楽がアイルランド音楽と最も異なる点は、音階です。
アイルランド音楽では、7音音階、簡単に言うとピアノの白鍵のみを使った音階を使います。
譜例をご覧ください。
ドから始めると(1)イオニア調(長音階)、レから始めると(2)ドリア 調、ソから始めると(3)ミクソリディア調、ラから始めると(4)エオリア調(自然 短音階)という音階になります。
この(1)~(4)の4種類がアイルランド音楽で主に使われる音階です。
※分かりやすくハ長調を基準にしていますが、アイルランド音楽では実際には2度高いニ長調が一般的です。ですから、譜例よりもすべて2度上がります。
C管のティン・ホイッスルを使って考えると、この4つの調は半音階の運指を使わずに自然に演奏できることがわかりますね。
ですから、アイルランド音楽はティン・ホイッスルにとって、合理的でやさしい音楽なのです。
ところが、スウェーデン音楽では(1)~(4)の他に、(5)の自然短音階が使われます。
このソ#がくせ者で、C管のティン・ホイッスルでは半音の運指になります。
スウェーデンではこの音階があまりに一般的なため、バグパイプは予めこの音階に調律されているほどです。
また、スウェーデン音楽ではGm(ト短調)やDm(ニ短調)がよく登場しますから、D管のティン・ホイッスル1本では対応ができません。
そこで、ティン・ホイッスルではなく、半音階に強い管楽器が有利となります。