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アイルランド狂詩曲(ハーバート)

前回に引きつづき、今回もアイルランド出身の人物の作品についておはなしします。その名も、ヴィクター・ハーバート(1859-1924)の「アイルランド狂詩曲」。
「アイルランド狂詩曲」? どっかで聞いたことがあるとお思いになったかたは、第2回をきちんと読んでくださった、ということです。あちらでとり上げた、チャールズ・スタンフォードの作品も、同じ名前です。
ぶっちゃけ、「スペイン狂詩曲」や「日本狂詩曲」も、複数の人物が同名異曲を書いています

先に、作曲者について説明しましょう。
ハーバートは、スタンフォードと同じダブリン生まれ。ですがアメリカ国籍を取得し、新大陸に活躍の場を見いだしました。
主要な作品の多くは、ライトオペラと呼ばれる、娯楽的な要素の強い軽~いノリのオペラ。ミュージカルの前身でもあります。
またこの人物、生前はかなりの売れっ子作曲家だったようです。

ハーバートの「アイルランド狂詩曲」は、早いはなしが、アイルランドの有名な伝承曲をつなげたメドレーです。長さは15分ほど。
スタンフォードのものと比べると、原曲のメロディをあまりいじらず、忠実にオーケストラ・アレンジを施したような印象です。そのため晦渋な部分はなく、終始明快。ただ、スタンフォードの狂詩曲のような物語性は、たぶんナイな。
こちらでお聴きになれます。
 

引用されている伝承曲は、私が知っているものだけでも、次の3つ。いずれもかなりの有名曲です。
すなわち、(1)Believe Me If All Those Endearing Young Charms、(2)The Rocky Road To Dublin、(3)St. Patrick’s Day。

前奏がおわると、直ちにBelieve Me If All Those Endearing Young Charmsが出現。
このいやに長ったらしい題名は、トマス・ムーア(1779-1852)がつけた歌詞の歌い出しです。内容は、あなたの美貌もいずれ失われるだろうけれど、それでも私の愛はますます募るばかりだ(だから私を信じてほしい)、というもの。カッコいいですね
これ実は、皮膚病を患った妻に贈った詩だといわれています。

トマス・ムーアは、アイルランドに古くから伝わる多くの旋律に詩をつけた人物として、「アイルランドの国民的詩人」と敬愛されています。
第1回で紹介した、「アイルランド組曲」にも引用されている、The Last Rose Of Summer(夏の名残りのばら)の歌詞も、彼の手になるものです。前回の「アイルランド交響曲」で用いられた、Avenging and Brightもそうですね。

またBelieve Me(以下略)は、日本でも「春の日の花と輝く」という題で、戦前から親しまれています。「春の日の花と輝く」もまた、堀内敬三氏(1897-1983)による訳詞の最初の部分。
日本語は英語などヨーロッパの言語と比べ、音節の種類が少ないため、1つの音符にこめられる情報量が、相当程度制約されます。であるところ、少ない語数で原詩の大意を的確につかんだこの訳詞は、個人的にかなりの名訳だと思うのです。

そしてこの堀内敬三という人物。世間的にはたぶん「若き血」という、大学野球の応援歌を書いた人物として、知られていると思います。
しかしその一方で彼は、スコットランド民謡 Annie Laurieや、ノルウェーの作曲家グリーグが書いた、同国の文豪イプセンの劇の挿入歌「ソルヴェイグの歌」などの訳詞も、手がけています。

ハーバートの「アイルランド狂詩曲」には、他にも、おそらく伝承曲と思われる旋律が、3つほど出てきます。
そのうちの1つ。St. Patrick’s Dayの直前に現れる3拍子の曲からは、どことなくオキャロランの匂いがします。
また、The Rocky Road To Dublinに接続されているポルカは、このセットにも含まれていますね。
 

どちらも、なんという名前なのでしょうか。
ハーバートの「アイルランド狂詩曲」が聴けるCDは、私の知るかぎりこれだけです。

【アイルランド狂詩曲】
 リチャード・ヘイマン&ヒズ・オーケストラ
 録音年:1989年
 レーベル:ナクソス

このCD、アイルランド伝承曲やアイルランド風の旋律を用いたクラシック音楽を集めたディスク、という企画のようです。「アイルランド狂詩曲」以外に、先述した「アイルランド組曲」も収められています。
また、ハーバートの「アイリーン」なるライトオペラから1曲を抜粋しているほか、CohanやO’Connorといった、いかにもアイルランド人っぽい名前の人物の作品がズラリ。

 
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