セカンドアルバム"Road to Road"
2012年5月パク・ヘリとキム・ジョンファンの完全2人体制として再構成されたBardが新しく発表したセカンドアルバム『Road to Road』はアイルランドの伝統音楽とオリジナリティが合わさり前作に比べ一層多彩な音楽性を感じることができる。
キム・ジョンファンの甘美な声色が耳に心地よいタイトル曲「踊る風」(Dancing Wind)は、環境破壊や開発至上主義などによって昔からの場所に潜んだ“小さく美しい秘密”が消えてしまうことを嘆くフォークバラード。
アイルランド風の旋律と軽快なリズム、そしてパク・ヘリの美声が織りなす「今日の旅行」(Today’s Journey)は、人生をひとつの“旅”と捉え、自分なりの方法で旅をすることの楽しみと、そんな予測不能な人生を生きている“私”を歌った気持ちのよい歌だ。
彼らが毎年恒例としている音楽旅行で移動に使うユーロラインのバスを題材にした「Euroline Reel」は、胸をときめかせた旅行の記憶とアイルランドの伝統音楽特融の活気が詰まっている。
そしてアコーディオンの演奏で始まるミディアムテンポの曲「幼少時代」(Kidhood)。
“大人になれば世の中からすべての悲しみと痛みをなくし、世界を幸せにできると信じていた”という歌詞には、果てしない夢を抱いていた幼少時代の気持ちを忘れないでほしいというメッセージが込められている。
出会いによって抱く幸福や歓喜、嫉妬や憎しみは、別れによっていつの間にかどこかへ消え去ってしまう。そんな“愛のもの悲しさ”を歌った「どこへ」(Where are they going)は、囁くようなパク・ヘリの繊細な歌声が印象的な一曲だ。
唯一のコラボレーション曲である「昔話」(A story that’s old but can return no more)は、韓国の伝統楽器であるカヤグムの演奏者ジョン・ミナと共に無分別な開発によって破壊されている韓国の洛東川について歌ったものである。
韓国とアイルランドの伝統音楽、としてフォークを合わせるという彼らの新しい挑戦が見られる。
アルバムのタイトルにもなっている「Road to Road」は、“道”に対する思いを感傷的なアコースティックギターの旋律で奏でている。
続く「The Right Time」は同じくアコースティックで始まる曲だが「Road to Road」とは180度違う曲調で、恋に落ちた時に抱く胸の高鳴りを軽快なリズムで表現している。
“この思いをいつ伝えようか”とタイミングを見計らうドキドキ感を歌った曲だ。重いギターサウンドで始まる「Terminator」は、平安だった森に突如侵入した巨大な機械に追いやられた自然や動物たちが、新たな生きる道を探していくというストーリーの元に作られている。
続く「島の歌」(Song of Eire)は、アイルランド伝統音楽の情緒を感じることができる。
長年に渡り侵略と戦争、大飢饉に苦しめられてきたアイルランドだが、そのような状況でも文学と芸術を大切に守り続けてきた人々について歌った曲だ。
不思議な雰囲気を帯びた曲「ひとつになる」(One)は、静かなアコーディオンで始まり軽やかなアイリッシュホイッスルで終わる。
世界は不平等であるが、ひとつの空の元で生きる私たちは手を取り合い、ひとつになって生きていくべきだという希望を歌っている。
アルバムの最後に収録されている「旅行者の最後」は、人生という旅行を先に終えた人々に贈る曲だ。アイリッシュ・フルートの美しい旋律がとても印象的である。
このアルバムは、チェロ、カヤグムなどアイルランド音楽では使用しない楽器を用い、より追及されたBardの音楽を感じることのできる一枚に仕上がっている。
1. 춤추는 바람 (踊る風)
2. 오늘의 여행(今日の旅行)
3. Euroline Reel
4. 아이시절(幼少時代)
5. 어디로(どこへ)
6. 오래된 이야기 feat. 정민아 Jung-Mina(昔話)
7. Road to Road
8. The Right Time
9. Terminator
10. 섬의 노래 (島の歌)
11. 하나로 이어져(ひとつになる)