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ケルトの笛 インタビュー

ガリー・シャノン(Garry Shannon)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。英語翻訳:村上亮子
インタビュー: 2000年7月
 

出典 A Guide to the Irish Flute

ガリー・シャノン Garry Shannon氏は、クレア県のキルフェノーラに住むアイルランド音楽のフルート奏者です。

これまでいくつかのレコーディングに参加するほか、セッション・ワークショップ などで活躍しています。
有名なアコーディオン奏者であるSharon Shannonの兄でもあります。
アイルランド音楽ではあまり用いられなかったタンギングテクニックや、クロマチックなヴァリエーションなどを用いた独創的な演奏をしています。

※左枠:インタビュアー 右枠:ガリー・シャノン

あなたはとても音楽的な環境に生まれましたね。
家中にいろんな楽器があったと思いますが、どうしてフルートを選んだのですか?

私は長男で、私がホイッスルを始めたのは8歳でしたが、当時は、家にはミュージシャンなんていませんでしたし、楽器もありませんでした。
妹のマジェラ、シャロンやメアリーは、それぞれ8歳になると、私に続いて楽器をやりはじめました。
13歳にましな楽器、フィドルを始めるまでは、私はずっとホイッスルばかり吹いていました。

フィドルを弾いていると、私はホイッスルに似ているフルートが吹きたくなりました。
そんな私を見て、16歳になったとき、父がゴールウェイのそばのスピッダルのフルートメーカーのブルースのところに連れて行ってくれて、楽器を注文してくれました。
ブルースが私に紹介してくれた彼の奥さんは…なんと、メアリー・バーギンでした!

一度フルートを始めると、フィドルなんて弾かなくなってしまって、19歳の時にはやめてしまいました。
初めてのレコーディングは、セント・フラナガンケーリーバンド St.Flanagan Ceili band の「リユニオン Reunion」というもので、私の学校の先輩のトニー・リネイン Tonny Renain や、ノエル・ヒル Noel Hill、今も私が尊敬しているストックトンズ・ウィングのフルート奏者、Paul Rocheポール・ロッチェなどをフューチャーしたものでした。
彼らは私にとって神様のような存在でしたし、この録音の体験が私の根元的な体験となりました。

あなたの新しいアルバム、"Loozin' air"を聴いて私が最初に感じたことは、あなたの音楽的な発明性でした。
あなたは曲のヴァリエーションやひねりに、すばらしい感性をもっていますね。
Niall Keeganナイル・キーガンや、ジョン・スケルトン John Skelton を連想させる、半音階的な変奏もしていますね。

チューンに、どのようにして変奏を施すのか、教えてもらえますか?
…つまり、頭で考えたものをフル-トに置き換えるのか、あるいはヴァリエーションが自然と指から出てくるものなのでしょうか?
あるいは両方、とか。

後者ですね。
ライブやセッションでは、ほとんどのヴァリエーションはその場のプレーヤーへの即座の反応としての、本能的なものです。
私のセッションでのヴァリエーションのいくつかは、気に入らない人がいるのもよく承知していますけど、そういう悪ふざけを私はすごく楽しんでいます。
一方、録音ではほとんどの装飾は予め考えられたものです。
スタジオの中では、私はとても実験的なんです。
さっきあなたがあげた二人のフルート奏者は、アルペジオに基づいた、半音階を駆使した複雑なヴァリエーションをしますよね。
彼らは私よりもずっと、即興演奏が自然にできるんでしょうね。

あなたのアルバムは、マイコー・ラッセル Miko Russel のチューンを取り上げたり、エーモン・コッター Eamonn Cotter やパダー・オラクリン Peader O'Loughlin、ケヴィン・クロフォード Kevin Crawford とフルート四管でリールを共演したりと、伝統的な演奏があり、ブライアン・フィネガン Brian Finneganのようなタンギング(3連符、ときには4連符も!)や、先に述べた半音階的な変奏などの、現代的な演奏もあって、そのブレンドがすばらしいバランスを持っていますね。

あなたは明らかにどちらの方法でも演奏できるし、場面や仲間に合わせて自分のスタイルを変えることができるのでしょうね。
「伝統を守る」と「現代的な演奏も生きた伝統の証拠である」という論争は過去のものになりつつありますが、どんなテクニックやスタイルがアイリッシュフルートに最適かについて、意見がありますか。

伝統音楽においては、それぞれ新しい世代は、前の世代に肩車をしてもらって、新たな高みに到達することができます。
わたしはパダーの世代を、彼らがその世代に築いた進歩において尊敬しています。
それと同じ理由で、私はパダーの50年先の世代の、フィネガンを尊敬しています。
伝統音楽教の狂信者は、彼らを混乱させるような、半音を使いすぎたり手の込んだ変奏を曲に施す人のせいで、嫌な思いをするのでしょう。

それをやっている演奏者自身は、十分に楽しんでいるのでしょうが、周りはちっとも楽しくはない、ということもありますよね。

そういったプレーヤの何人かは、メロディーをあれこれといじくることに腐心するあまりに、リズムやテンポをキープするといった、ほかの技術的な点が崩れてしまうことがあります。
そういう演奏は、聞き手にとっては、乱雑で、あまり心地よいものではありません。

わたしもこの点については、責があることは認めましょう。といっても、私は自分の演奏を、人が私の演奏を聴くみたいには聴けないので、わからないですが。

そういうわけで、私はすべての革新的な装飾音を認めます。特にそれが、音楽をくだらないものにするのでなく、むしろよりよくするものなら。

アルバムで使用しているフルートについて話してもらえませんか?
マイコーの曲で使っているのは、霧笛 foghorn のような音がしていますが、あれは違う笛なんでしょうか、それともただ違うように吹いているだけなんでしょうか。

今はエニスのブレンダン・マクマホン Brendan McMahon が作った楽器を使っていますが、それまでは19年間、ブルースのフルートを吹いていました。
ブレンダンは今70歳代ですが、すばらしいフルートを作り続けていますよ。

それから他には、E♭のフルートはハミー・ハミルトン Hammy Hamilton ので、Fはホークス&サン Hawkes & son の、ピッコロはブレンダンのを持っています。
それらすべてを使うことなんて、滅多にありません。
録音では、すべてのトラックでブレンダンのDフルートを使いました。

ちょっと先の質問に関係のあることですが、あなたは私の出会った多くのフルーティストのように、左構えで吹いていますね。
あなたは、キーを使うために、左利き用にカスタムしたフルートを使っているのですか?

私は右利きですが、最初にホイッスルを始めた頃、まわりには教えてくれる人なんていませんでしたから、右手を上に、左手を下にして(つまり反対に)構えて吹いていたんです。

他にも私には、もう修正できなくなった悪い癖がついています。

フルートを肩に載せたり、左手親指(訳者注;彼は左構えなので、右構えでいうと左手親指)を、楽器を支える代わりに立てて押しつけたり。
右手(訳者注;同じくして、これは左手)はストレートフィンガーで指穴を押さえています。
まぁ、これはa、b、cのロールをするときに役立つから、いいんですけれど…。

そういうわけで、左構えでストレート・フィンガーの私は、左構え用にカスタムしたキーフルートを使っています。
それ以外のフルートは吹けません。

あなたはフルートを教えてもいますね。
初心者や経験者に対して、初心者が気をつけなければならないことなど、なにかアドバイスをいただけますか?

私は生徒に、「私をよく見て、私とは正反対のことをするように」と教えているんですよ。
つまり、左構えにしない、ストレート・フィンガーにしない、肩に楽器を載せないってね。

あと、曲をできるだけ、早く耳で覚えられるようにすること。
音楽は、内面化していって、心から演奏するべきものなんです。
スタンダードな曲から限られたレパートリーを楽しみでやっている、社会的なグループと定期的に演奏すること。
音色や音程に問題があるという理由から、安い楽器は使わないこと。
他のミュージシャンや音楽自身が、自分の社会生活の一部にならなければ、音楽を続けることは難しいでしょう。

あなたの好きなフルート奏者は誰ですか?
その理由もお教えください。

最初のヒーロ-は、ポール・ロッチェでした。
しかし誰にも、彼にソロ・アルバムを作らせることはできませんでした。
彼は、「マット・モロイ Matt Molloy の『ブラックアルバム』(訳者注:一枚目のソロ・アルバムのこと)を越えるものを作らないと、録音する意味なんてないじゃないか」というのです。

モロイは神様ですよ。
だから、私は無意識のうちに彼の演奏をコピーし始めてしまわないようにと、彼を聴くのは慎重に避けてきました。(訳者追加:それだけ、影響力があるんですね。)

ナイル・キーガンの妙技はうらやましく思います。
彼が曲にやるすべてのことをしたいとは思いませんが、できたらいいなとは切実に思いますね。
フィネガンの完璧主義と、タンギングのテクニックはすばらしいと思います。

トム・ドゥーリー Tom Dooley やマイク・マクゴールドリック Michael McGoldrick、デシ・ウィルキンソン Desi Wilkinson から学ぶことも多いでしょう。
彼らは、実際の演奏には役立てられないかもしれないけれど、みな違ったものを持っています。
マイコーのホイッスルとフルートの演奏は好きでしたよ。
あの、風代わりな人柄とよく結びついていますよね。
あなたは彼が生きているときに聴いておくべきでしたよ。

昔のキルフェノーラ・ケーリー・バンドのパディー・マリンズ Paddy Mullins のように演奏し続けられたらと熱望します。
とても元気で、80までフル-トを吹いていて、なおもホイッスルを吹いているんですから!
若者では、リムリックのMichael Kingマイケル・キングに注目しています。
私が今一緒にフルートを演奏していて楽しいのは、キルフェノーラ・ケーリー・バンドのAnthony Quingney ですね。

今はどんなプロジェクトに関わっていますか?
ツアーの予定はありますか?
近々キルフェノーラ・ケーリー・バンドのCDが出そうですか?

私は伝統音楽演奏のM.A.(修士)を、キルフェノーラの起源についての論文を書いて取ったところなんです。
その時に書くことに興味を持って、もっとやってみたいと思いました。
私は伝統音楽の様々な事柄についてのセミナーやレクチャーをしています(ガリーのサイト)。

それから、リルティングのアルバムを作ろうかと思っているんです。
時々、ほかのミュージシャンのアルバムをプロデュースもしています。
毎年夏、フラーのコンペティションで、エニス・ケーリー・バンドに手伝いで参加するのを楽しんでいます。

次の夏には、フェスティバル・サーキットをしているかもしれません。
キルフェノーラ・ケーリー・バンドは次のアルバムのリハーサル中ですよ。
数ヶ月先には出るでしょう。