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ケルトの笛 インタビュー

ポジティブリー・テストカード Positively Testcard:
デイヴ・ウッドヘッド Dave Woodhead (クウェラ・リバイバル・バンド)

※ この記事は、ホームページChiff and Fippleより、著作権保有者のDale Wiselyの許可を得て翻訳、公開しています。英語翻訳:村上亮子

 

この愛すべき小さな楽器を、アイルランド伝統音楽や他のヨーロッパ民族音楽以外に使ったとしても、ホイッスルを熱狂的に支持する人を傷つけることはないだろう。
近年チーフタンズは様々なジャンルの音楽家と共演して、そのことを批判する者もあるが、このようなレコーディングやコンサートは、多くの人々をアイルランド音楽に引き込んだといえる。
たとえば、クウェラである。

クウェラは、アパルトヘイトが吹き荒れた1950年代の南アフリカで、大衆向きの音楽として生まれてきた。
多少軽蔑的ではないにしろ、「風変わり」と言う人はいるだろう。
もしアフリカンジャズを聞く機会があったなら、その特徴的な音はアップビートで陽気でダンスに向いたものだと納得するだろう。

若い頃、オシビサ(Osibisa)というアフリカのジャズバンドのファーストアルバムを聞いたことがある。(アメリカでリリースされたものは、かのロジャー・ディーンがジャケットのデザインを担当している)
このバンドは自らの音楽を「幸福感を炸裂させる自在なリズム」と言っていた。
クウェラもそうだ。
そのスタイルはホイッスルを中心におき、本来のアフリカの音楽ばかりでなく、スウィングやジャズ、ブルース、ブギウギの影響も聞き取ることが出来る。

ホイッスルの流行は徐々に非白人居住区(township)のジャイヴ音楽に替わっていった。
演奏者はサクソフォーンや電子楽器に引きつけられていったのだ。

これはホイッスルの限界を越えたいという欲求だと見る人もいる。
その限界とはまず音量で、エレキベースやギターの登場で、ホイッスルは音が小さくて聞こえないのだ。

クウェラの演奏者やファンががサックスジャイブやムバカンガ(南アフリカのポピュラー音楽)に移って行って、クウェラは消えざるを得なくなってしまった。

ホイッスル界の我々は、クウェラの演奏者はホーナー(ドイツの楽器メーカー)のホイッスルにこだわっている、という伝説を信じる傾向にある。ホーナーがホイッスルの生産をやめ、生産機械も破壊し、それでクウェラの演奏者は他の楽器に移らざるを得なかったというのだ。(ホーナーの鋳型を破壊したことは、ブライアン・ウィルソンがアルバム『Smile』のテープを破棄したのに等しい。しかし、私はホーナーのホイッスルを何本か持っているが、実は、それらは大騒ぎするほどのものではない。)

私は最近になってポジティブリー・テストカード(Positively Testcard)というイングランドのクウェラ・リバイバル・バンドのファンになったばかりだ。

実は、何年も前にファンになる貴重な機会を逃してしまっている。
誰かがEメールをくれて、そのバンドの大まかな紹介をしてくれたのが、私はそれをスパム、迷惑メールだと思ってしまったのだ。
残念だが無視してしまった。
とにかく、今はファンだ。

『GAS UP MY HOTROD STOKER、 THE KWELA GROOVE FRENZY’S HIT TOWN』とか『THE INDESTRUCTIBLE BEAT OF SOUTH NORWOOD』なんてタイトルのCDを持つバンドのファンにならずにおれるだろうか?
私は後者のほうが一番かっこいいCDタイトルだと思うが、どうしてだかわからないと言うのなら、説明の仕様がない。

このバンドは、1996年に、かつてビリー・ブラッグでトランペットを吹いていたデイブ・ウッドヘッド(彼はその後、賢明にもホイッスルに転向した)とギターのアダム・キーランによって結成され、レコーディングや演奏活動をしている。
彼らのウェブサイトはこちらである。

最近ベルリンでデイブ・ウッドヘッドにインタビューする機会があった。

茶枠:デール(インタビュアー) 緑枠:デイブ・ウッドヘッド

たぶん、メンバーの誰かがクウェラに出会って、このバンドが生まれたと思うのですが、どうやってクウェラに出会い、その結果どうなりましたか?

このバンドは、クウェラを演奏するために始まったのではないのです。
ビリー・ブラッグなどで演奏をする合間に、唇をいい状態にしておくためにバンド活動をしたかったのです(トランペット奏者ですから)。
カバー曲をカバーしました。
オンリーワンズとか、アール・ボスティックとか、ベーシーとか、ジャクソン5などです。
バンドでトランペットセットを全部吹いていましたので、コンサートの合間に、唇を休ませるものがほしかったのです。
それで、ホイッスルでスポークス・マシヤネ(南アフリカのクウェラのホイッスル奏者)の曲を何曲か練習しました。
少しずつ、クウェラの曲がセットリストに多く占めるようになって来ました。
アンディー・カーシュ(BBCラジオのDJ)がBBCのラジオ・ワン(局)のセッションにクウェラだけでセットを組まないかと言ってきました。
それが発端でクウェラの道を突き進むことになったのです。

クウェラ音楽のことは聞いていましたし、CDも1、2枚持っていました。
私達のバンドの編成にも合っていました。
それで他にも聞くべき音楽がないか探してみました。友達がテープを作ってくれましたが、お店で手に入るのはあまりなかったのです。
スポークの”King Kwela"とWest Nkosiのアースワークス(社)のCDだけでした。

では、あなたにとって、まずクウェラ音楽で、それからホイッスルを始めたのですね。

クウェラを演奏するために、ホイッスルを習ったのです。
レミーやスポークスのような音を出したいと思いました。
今は同様の状況でマンドリンやハーモニカを多用しています。

マーケットは広くないでしょう。
クウェラのファンは多くないでしょうね。
最初の頃、バンドはどのように受け入れられていたのですか?

マーケットが狭いですって?大陸が違う、時代が違う、色が違う、でも音楽は本物でした。

いえ、マーケットなんてゼロでした。
でもロンドンのパブで演奏した時、お客さんは喜んでくれましたよ。
南アフリカ出身の人は何をやっているかわかっていたでしょうが、ほとんどの人にとってクウェラは全く新しいものでした。
私達はクウェラをストレートに、正統派的に演奏しようとは思っていませんでした。
1950年以来多くのものがポピュラー音楽に入ってきて、そのうちのあるものは、私達も取り入れようと思いました。
先住の人たちがマラビー(1930年代に非白人居住区で人気のあった音楽)や他の非白人居住区の音楽など、アメリカの黒人音楽を取り入れようとしたのと同じように。

他にもクウェラ・リバイバル・バンドってあるのですか。
つまり、皆さんが一番だとはわかっていますが、他には…

今やっているのは、私の知るかぎりTobogo Leroleの率いる”Kwela Tebza” だけです。
TobogoはBig Voice Jack Lerole(大声ジャック) の甥です。
「大声ジャック」は新しいCDを出したところですが、最近体調が悪いようですね。

クウェラを文化的に定義することは出来ると思います。
リード楽器としてホイッスルを使っていると言っていいでしょう。
でも、音楽理論として何かクウェラの特徴となることはありますか。

クウェラを数値で表せば、こうなります。
(1) 3つのメジャーコード、たとえばI、I、IV、VまたはIV、I、V、IとかI、IV、V、IとかI、IV、V、I
の単純な循環
(2) このサイクルは2または4小節以上。最も覚えやすい2-4小節をトップに置く。次の
(3) 途中にホイッスルとギターのソロを20秒くらいずつ入れる。テーマに戻って終わる。
(4) リズム感はスイングした8ビート。
(5) 曲の長さは2分30秒。
(6) Bb

クウェラは元々路上の音楽だったのです。ホイッスルとギターとか、リードホイッスルに、伴奏のホイッスルとギターとか。
この音楽がレコーディングされ、町の若者がそういったレコードの音を自分達も作りたいと思ったとき、ベース(tea chest or string 注:共鳴体に茶箱を使ったもの)とドラムが入ってきました。

バンドの今の編成はどうなっていますか?

私達が1度だけメンバーチェンジをしたのは、ベースのクリス・モーガンがマーセル・ストゥラネス(Marcel Stranis)に代わったことです。 アダム・キーランは今でもドラムをを叩いていますし、マリオ・ガルニエもたたいています。
一番大きな変化は、”Hot-Rod stoker”が録音されてから、マリオがベースドラムを弾くようになったことでしょう。

皆さんのCD以外で、関心のあるひとが聞いてみるべきクウェラのCDは何でしょうか。

買うべきCDは:
Big Voice Jack Lerole(ライブCDと最新のCD)
Spokes Masheyane(King Kwela)
West Nkosi(アースワークスのホイッスルのCD)

これでいいでしょう。
クウェラ音楽を1、2曲入れた南アフリカのコンピレーションアルバムならたくさんあります。
残念なのは、レミ・マバーゾのCDがないと言うことです。

あなたがお持ちのホイッスルについて教えてください。

「『私と私のホイッスル』- 毎週、私達は著名なブラス楽器修理人に彼の楽器について語ろう…」

私はショウ(Shaw)のに決めています。
彼のは鋭さがあるし、いい具合に音をはずしている。
また、先が細くなっていて、3オクターブ目に指使いを間違える可能性が多々ある。
トリルやフラタータンギングにも役に立ちます。

G、A、Bb、C、D管で、私達の曲は全部吹けます。私は安物のプラスティックの吹き口のD管を使っています。
ショウのは、音が外れ過ぎていますから。

オーヴァートンを使ったこともありますが、音がよすぎてフルートみたいです。
スザートも同じです。

私はスピーカーを古いフライパンをたたいている様な音楽が好きなのです。
ショウのホイッスルはそのような音なのです。
これで莫大なスポンサー契約が取れる…

デイブ・ショウは誇らしいでしょう。
ジェフリー・フリーマンが調整したショーのホイッスルいかがですか。
音が良すぎてダメだというのなら別ですが。
ホーナーのホイッスルについては何かご存知ですか?
どうしてそれがアフリカのクウェラ奏者にとって一般的な笛になったのでしょうか?

ホイッスルを吹く南アフリカの若者は、1930年代からいました。
彼らはスコットランドのパイプバンドの模倣をしていました。(今ではそれをアフロケルト音楽といっています。)

1940年代に、スウィングやリズム&ブルースの78回転盤があふれ出し、若者はその影響力をアメリカのブラックカルチャーにシフトさせました。(世界中の音楽愛好家から安堵の息が…)
50年代半ばに始まったホイッスルの流行に目をつけて、1958年にはホーナーはニッケルメッキの真鍮のホイッスルを量産し始めましたが、それは若い南アフリカのホイッスル奏者が提供したモデルに基づくものでした。
ホーナーはそれを南アフリカに輸出し、市場を独占しました。

クウェラの演奏家はホイッスルをユニークな吹き方で吹くとか、ホイッスルを口で支えるとか聞いています。
その点、どうなのでしょうか?

吹き方はとてもユニークです。
(1) ホイッスルを普通に構える。
(2) 右の手首を上げ、左の手首を下げる。指穴は垂直から左に倒す。
(3) 首を右に倒す。
(4) ホイッスルを口に入れ、唇はサウンドホール(エッヂ)の上と下に。
(5) 吹く

これでわかるでしょうか。
整骨医は推薦しないでしょうね。本当に首が痛くなります。
でも、こうすればほしい音が出るのです。
ずっと豊かな音だし、音を曲げるのにこのテクニックを使うことが出来ます。

おかしいですよ。首が痛くなります。喉が詰まりそうだ。おかしくなりそうです。泣きたくなりますね。
でも、ホイッスルの「まど」から出てくる息を塞ぐことで、ピッチを下げる方法が何かあるはずだ、といつも信じていたことは認めますよ。
思いつかなかったのはマウスピースで扁桃腺を触れると言うことも含んでいると言うことでした。
本来のクウェラ音楽で使われた調子は何ですか?

もっぱらBbで、時にはC、G、またはAです。(これはBbが少し下がったものだが)
Bbが多いですね。それは、
(a) 豊かな音で、D管のように甲高い金属音がしないし、指穴の間隔がいい。
(b) ホーナーが複製したホイッスルがBbだった
(c) Bbはトランペット、クラリネット、テナーサックス、トロンボーンにマッチする。
これらは皆Bbだ。(ホイッスルがこれらの楽器と一緒に演奏されることは最近までまずないことだったが)
(d) いずれでもない。または、すべて該当する。

ありがとうございました。
いつか、世界的なクウェラの第2の波が起こって、皆さんがその中心になって、おおいに儲けることが出来るように祈っています。
まあ、信じてください。いつか実現しますから。

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