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ケルトの笛 インタビュー

キャサリン・マケヴォイ(Catherine McEvoy)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。英語翻訳:村上亮子
 

経歴

1956年5月にバーミンガムで生まれる。
両親は二人とも1940年代にアイルランド、ロスコモン州から移住している。

父のパディーはストロークスタウンから6マイルの、キルモアという土地の出身で、その父マーク・マケヴォイは当時の優れたフルート奏者で、長年その地域のダンスパーティーやお祭りで演奏している。
マークは大家族の出身で、その多くは優れた音楽家である。

キャサリンの母サラもストロークスタウン出身で、若い頃は、優れた伝統的バラードの歌手だった。
両親ともストロークスタウン周辺の多くの音楽家のことを覚えている。
その中には、フルート奏者のジミー・タイJimmy Tighe、フィドルのパット・キャスリンPat Caslin、ストロークスタウンの郵便配達夫でフルート奏者のマティー・フラナガンMutty Flanaganがいる。

ロスコモンの豊かな伝統音楽は、キャサリンが育った頃のバーミンガムの音楽家に影響を与えていた。

60~70年代でもっとも有名なバンド、バーミンガム・ケーリーバンドに関しても然りである。
1960年代、このバンドではロスコモンのフルート奏者が多く演奏していて、その中にはバラハドリーン Ballaghadereen出身のフランク・ジョーダン Frank Jordan、クルーンサック出身のフランク・フラナガン Frank Flanagan、パディー・ジョー・マロニー Paddy Joe Maloneyなどがいる。
このバンドの創立当時のメンバー、ローリー・ファミリーthe Lawrie familyはロスコモン州、Knockvicar出身である。

キャサリンが若い頃、アイルランド伝統音楽に最初に触れたのは、このバーミンガム・ケーリーバンドを通してであった。

キャサリンの兄、ジョン Johnはアイルランドでもイギリスでもよく名の知られたフィドル奏者で、若い頃のキャサリンに影響を与えた。
ジョンは伝統音楽に熱心で、よく優れた音楽家のレコードを家に持ち帰ってきた。
その中には、デニス・マフィー Denis Murphyやその妹のジュリア・クリフォード Julia Clifford、ゴールウェイのフィドル奏者マーティン・バーンズ Mairtin Byrnes、ウォーターフォード出身でロンドン在住のフィドル奏者ジミー・パウアー Jimmy Powerなどがいた。

マケヴォイの家に持ち込まれた最初のレコードは、マイケル・コールマン Michael Colemanが78年に録音したものである。

キャサリンは13歳の時、アコーディオンのレッスンを受け始めた。
指導したのは当時バーミンガムで人望を集めた音楽家で、バーミンガム・ケーリーバンドのメンバーでもあるキャスリーン・ローリー Kathleen Lawrieだった。
やがてキャサリンもバーミンガム・ケーリーバンドのメンバーになって、最初はピアノを弾いた。

1970年代初め、ロスコモン Tulsk出身でホイッスル、フルート担当のトム・マックヘイル Tom McHaleがバンドを去ったとき、キャサリンはその後を継いで、フルートを吹くことになった。
きちんとしたフルートの訓練を受けていなかったが、すぐにマスターして、レパートリーを増やしていった。

当時のバーミンガム・バンドのフルート奏者にはもう一人、バラハドリーンBallaghadereen出身のフランク・カーティーFrank Cartyがいた。

また兄のジョンとのデュエットでも演奏しているし、後に、当時バーミンガムに住んでいたニューヨーク、ブロンクス出身のフィドル奏者、ブレンダン・マルヴィヒル Brendan Mulvihillとチームを組んでもいる。

キャサリンは引き続き、ティペラリーのショーン・ライアン Sean Ryanやキリーナ・ケイリーバンド Killina Ceili Bandなどの音楽をテープで聞いていた。
これらのテープの多くはバーミンガム・バンドのメンバーで、ロスコモン出身のフィドラー、パディー・ライアンPaddy Ryanに借りたものだった。

伝統音楽の録音やラジオアイルランドの放送も熱心に聴いていて、これらの多くはマケヴォイ家の音楽生活に大きな影響を与えた。
幾つか挙げてみると、シェイマス・タンゼイ Seamus Tansyやロジャー・シャーロック Roger Sherlockの録音や”All Ireland Champions”という初期の伝統音楽のLPで、これにはクレア州のパディー・キャニー Paddy Cannyや、P.Jヘイズ Hayes、パダー・オラクリン Peadar O’Loughlinなどが入っていた。
キャサリンは”The Tribute to Coleman” のレコードをプレゼントしてもらったことを覚えている。
それは、ジョー・バーク Joe Burke、アンディー・マクガン Andy McGann、ピアノのフェリックス・ドーラン Felix Dolanの入ったレコードだった。

まもなく、キャサリンはフェリックス・ドーランと出会い、このCDでは彼がキャサリンの伴奏をしている。

1970年代初め、キャサリンは彼女の音楽に長く影響を与えるもう一人の人物と会うことになる。
それは偉大なフルート奏者、作曲家でバリーファーノン Ballyfarnon(ロスコモン北端の村)出身のジョシー・マクダモット Josie McDermottである。
彼がバーミンガムに来るときには、もう一人の有名なフルート奏者ペグ・マグラー Peg McGrathと一緒のことが多かった。

「女性でフルートを吹くのを見たのはペグが初めてでした」とキャッサリンは言っている。

キャサリンはロスコモンのKnockvica/ Boyle 地方で多くの休暇を過ごしている。
Kilrooskyのフルート奏者パツィー・ハンリー Patsy Hanleyと一緒にボイルのドミニック・コズグレーブ Dominic Cosgrove’sで幾晩も演奏した。
Patsyは彼女が高く評価するフルート奏者である。

ロスコモン滞在中にキャサリンはよくキーデュー Keadueへ行って、ジョシー・マクダモット Josie McDermottが”Flynn’s Men”というバンドで演奏するのを聞いた。
このバンドにはフィドルの Tommy FltnnとアコーディオンのLiam Purcellもいた。
ジョシーは若い音楽家をいつも励まして、キャサリンの演奏に深く心を動かされていたことをキャサリンは忘れていない。

キャサリンはバーミンガム・バンドの演奏を続け、イングランドやアイルランド中のFleadhanna(伝統音楽の大会)、Ceilis(伝統音楽、ダンスの大会)、Fleadh Cheoil(アイルランド音楽のコンクール)、Oireachtas competitition(国民文学大会) に参加し、1977年にはアイルランドに移住することを決意した。

キャスリーン・ローリー Kathleen Lawrie からのお別れのプレゼントは彼女がそれまで吹いていて、今も吹いているルーダル&ローズのフルートだった。
それはチューニングスライドのない19世紀の珍しいルーダル&ローズである。

1975年キャサリンは将来夫となるトム・マクゴーマン Tom McGormanに出会った。
トム自身も優れたフルート奏者だった。

アイルランドへ移住すると、ふたりは週末ごとにリートリム州ドラムシャンボー Drumshamboでパッキー・ディグナン Packie Duignan, トム・アンド・ネリー・マリガン Tom and Nellie Mulliganや多くのアーティストと共に演奏した。

この頃、キャサリンはよくジョン・ケリー・シニア John Kelly Seniorがセッションをしているチャペル通りのフォーシーズンズ・パブを訪れている。
そのセッションにはオファリーのアコーディオン奏者パディー・オブライアン Paddy O’Brien、ジェームズ・ケリー James Kelly、ダヒー・スプロール Daithi Sprouleなどがいて、彼らはみんな今では合衆国に住んでいる。
また、ジョン・ケリー・ジュニア John Kelly Jr.もいて、今では定期的にキャサリンと演奏している。
こうして、キャサリンはレパートリーを広げ続けていった。

1980年台前半、当時最高の音楽は木曜の夜のフォーシーズンズ・パブの2階にあった。
フィドルのジョン・ケリー・ジュニア John Kelly Jr. と ジョン・マケヴォイ John McEvoy、フルートのミック・ハンド Mick Hand、ミック・ギャビン Mick Gavin、ピアノとコンサティーナのJacinta McGormanがいた。

よく名を知られたダブリンのフィドル奏者トミー・ポッツ Tommy Pottsもよくセッションに顔を出していた。

1984年から1988年の間、キャサリンは女性だけの初めての伝統音楽のグループ Macallaのメンバーだった。
最近になって、彼女はクレア州のミルタウン・マルベイ Miltown Malbayのウィリー・クランシー・サマースクールでフルートの上級向け講師をしている。
現在は夫のトム、3人の子供ジェーン、Ruairi、ファーガス Feugusと共にミース州に住んでいる。


(キャサリン・マケヴォイのCD”Catherine McEvoy with Felix Dolan:Traditional Flute Music in the Sligo –Roscommon Style” Clo lar-Chonnachta, 1996のライナーノートから許可を得て再録)キャサリンのCDはお店、またはClo lar-Chonnachtaからお求めできます。

写真提供:ポール・ウェルズ

※左枠:インタビュアー 右枠:キャサリン・マケヴォイ

音楽のスタイルを言葉で説明するのは難しいと思いますが、スライゴー/ロスコモンのフルートの演奏スタイルを他の地域(クレアやゴールウェイなど)と比べて、説明してくださいませんか。
どういった点が異なっているのでしょうか。

スライゴー/ロスコモンのスタイルは流れるように、されどリズミカルに。
ということが出来ると思います。
スライゴー・スタイルは息継ぎを利用してフレージングをしていますが、もちろん個々のプレイヤーによって違います。
また、ショートロールやロングロールなどの装飾も多用します。
たとえばロジャー・シャーロック Roger Sherlockやシェイマス・タンゼイ Seamus Tanseyの演奏を聞いてみてください。
ロールを多用し、リズミカルでかつ流れるようです。
もう一人例を挙げるとスライゴー州バリモート近くの生まれのジョン・ジョー・ガーディナー John Joe Gardiner (1893-1979)がいます。
録音したCDが出回るようになって、フルート演奏のスタイルは標準化してきていると思います。
ジョシー・マクダモットJosie McDermottの演奏はCD(Darby's Farewell)で聞くことが出来ます。
スライゴー・スタイルの演奏をするすばらしいプレイヤーです。
ゴールウェイのフルートの演奏はとてもスムーズでまるでシルクのようです。
それにたぶん違った曲をやっていると思います。
Paddy Fahyなどの音楽家の影響を受けています。
レイトリムのフルートはスライゴーやロスコモンほど装飾がなく、とても強い息のリズムがあります。
フルートの盛んな地域間の違いを明らかにするのは簡単ではありません。
ゴールウェイ州 Glenamaddy出身のトム・モリス Tom Morris(1889-1958)とレイトリム州のジョン・マッケナ John McKenna(1880-1947)やTom Drumkeerinの間に共通性を聞き取ることも出来ます。

多くのリスナー(私自身も)はあなたとフェリックス・ドーラン Felix Dolan で作ったCDのダンス曲のテンポに心を奪われています。
これらの曲には気持ちよく肩の力を抜いたノリがあり、最近のレコーディングでよく聞かれるがむしゃらなスピードとは気持ちのいいコントラストをなしています。
よりリラックスしたペースで演奏することのメリットについて、何かコメントはありませんか。

ゆっくり演奏するほうが難しいこともあります。
息のコントロールがより必要になってきます。
しかし、それは内部から必然的に起こってくることなのです。
曲を理解するためには、まず曲を感じることが出来なくてはなりません。
それぞれの曲には独特のムードがあります。
元々ゆっくりなものもあるし、速いものもあります。
音楽というものは生気あふれるものでなければならないと思いますが、それは必ずしも速いということではありません。
曲に盛り込まなければならないのはリズムで、曲に高揚感を与えるのはどのようにフレージングするか、装飾をつけるかなのです。
音楽がスピードを上げて大量生産されるなら、意味を失うし、ただの音符の羅列になってしまいます。
私が演奏する速さは、曲のムードや誰と一緒に演奏しているかによっても変わってきます。
もしピーター・ホランPeter Horan や パツィー・ハンリーPatsy Hanleyと一緒に演奏するのなら、少し速くなります。
ダブリンでクレアのミュージシャンと一緒に演奏するときには、ゆっくり演奏する傾向になります。
一人で吹くときにはリラックスしたペースで吹くことが多いです。
それが一番気持ちよく感じられるのです。
売れるCDを作ろうとすると(特にライブで演奏するとき)即効のインパクトを与える必要があると感じるのでしょう。
そのための一番いい方法はスピードで圧倒することだと思います。
一旦速いスピードに慣れてしまうと、遅くするのは難しいのです。
車を運転するのと同じですね。
私は今でも馬や馬車の方がいいですね。
リラックスして演奏すると、その曲の美しさやフレージング、また誰から習ったのか、誰のことを思い起こすのか、等を考える余裕があります。
一緒にCDを作ったフェリックス・ドーランFelix Dolanもリラックスしたタイプの人です。
一緒に楽しく演奏できました。

あなたが吹いているフルートについてお話していただけますか?あなたのCDのライナーノートには古いルーダル&ローズのことが載っています。
Unline headjoint(頭部管に金属のチューブを入れていない)のフルートように聞こえます。
本当に「木製の」音がしますね。

私が吹いているフルートはルーダル&ローズで、チューニングスライドがなくて、すべてが木製の頭部管です。
1820年代中ごろのものです。
元々ヘッドは2つあったのですが、いつの間にか1つは紛失したようです。
チューニングスライドがあったかもしれません。
バーミンガムで手に入れ(いただいたのです)、25年間ずっと同じフルートを吹いています。
本当に木製らしい音色で、とてもソフトです。
他の楽器特にフィドルと相性がいいのです。

O’Donnell’s のホーンパイプでは何ヶ所かでタンギングでトリプレットをしているようなのですが、アイリッシュ・フルートでこのような装飾はあまり聞かないのですが。
多くのアメリカ人はアイリッシュ・フルートやホイッスルではタンギングはしないという誤解をしていますが、これについて何かありませんか。

O’Donnell’sの録音の音は正確にはタンギングではないのです。
のどで出している音です。
これを説明するには、小鳥のさえずりの方法という言い方しか思いつきません。
ジョシー・マクダモットJosie McDermottがフルートでこのやり方をしていて、私がO’Donnell’s のホーンパイプを学んだのは、彼からなのです。
”Fluters of Old Erin”(Viva Voce 002から発売された1920-30年代のフルート、ピッコロ、ホイッスルの録音)のホーンパイプでも同じようなテクニックが使われています。
Dwyer’sというホーンパイプがあって、ティペラリー州のRoscrea出身のウィリアム・カミンズWilliam Cummins (1894-1966)が演奏しています。
彼も同じテクニックを使っていて、これはフルートの傑作です。

あなたに影響を与えたフルート奏者についてお尋ねしたいのですが。

長い間たくさんの音楽を聴いてきたので、それぞれが何らかの形で私に影響を与えてきたと思います。
―しかし何人かの人からは特に大きな影響をもらいました。
ロスコモン州Tulsk出身のフルート、ホイッスル奏者のトム・マクヘイルTom McHale 。
彼はしばらくバーミンガムに住んでいて、特にホイッスルのほうで広く知られていると思います。
でもフルートもすばらしく、実は私が今吹いているフルートは彼が吹いていたものなのです。
マイク・マックヘイルMike McHale というお兄さん(弟?)がいて、Catskills に住んでいる素晴らしい音楽家です。
それからジョシー・マクダモットJosie McDermottも色々と影響を与えてくれ、バーミンガムにツアーで来たときとか、私がお休みにアイルランドに行った時とか、よく聞いたものです。
シェイマス・タンゼイSeamus Tansey ロジャー・シャーロックRoger Sherlock もよく聞きました。
Tanseyの力強い音楽も、Rogerの繊細な変奏も大好きでした。
またずっと年上のトム・モリスTom Morris (Morrison)、ジョン・マッケナJohn McKenna, レイトリムのPackie Duignan もよく聞きました。

またデニス・マーフィー Denis Murphy, ジュリア・クリフォード Julia Clifford, ティペラリー州のショーン・ライアンSean Ryan, パディー・キャニー Paddy Canny, P.J. ヘイズ P.J.Hayes, ショーン・マクグァイア Sean McGuire などの多くのフィドルの演奏も聞きました。
あらゆるスタイルを味わうことができ、理解しようとするのは素晴らしいことです。
私は若い頃あの地域でいっぱい演奏したことと、両親がその地域の出身だったことで、自然にロスコモン/スライゴー・スタイルを育んでいったのだと思います。
あの頃バーミンガムにはロスコモンのミュージシャンが大勢いました。
バラハドリーン Ballaghadereen 出身のフルート奏者フランク・カーティー Frank Carty, ロスコモン出身のフランク・ジョーダン Frank Jordanなどです。
人は音楽の面であなたに影響を与えることは出来るかもしれません。
でも、必ずしもその人と同じように演奏する必要はないのです。
彼らの音楽に対する態度があなたに影響を与えるのです。

後になって、ジョン・ケリー・シニア John Kelly Senior に会いましたが、彼は音楽や生活一般に本当に豊富な知識を持っていました。
彼はいつも音楽に敬意を払っており、私はそれに感服しています。/p>

 

フルートを演奏するだけでなく、教えてもおられるのですが、初心者に何かアドバイスはありませんか。
また、経験のある奏者にも何かヒントはないでしょうか。

(1)出来るだけたくさんの演奏を聞いてください。
今売られているCD だけでなく、昔の録音も探してみてください。
再版されているものもたくさんあります。

(2)覚えるときはゆっくり吹いてください。
時間をかけて正確に吹いてください。
あわてて、軽くなぞるようなことはしないでください。

(3)いい音が出せるように集中してください。
たくさん練習してください。
時間がかかります。
でも、急いでどうするのですか?私は25年も吹いていて、今でも学んでいます!

(4)もし新しいフルートを手に入れたら、しっかりとオイリングしてください。
新品のフルートは古いフルートよりも手入れが必要です。

(5)他の人と一緒に演奏するときはチューニングをきちんとしてください。

(6)もっと経験のある方にアドバイスなんてとんでもないです。
私のほうが教えていただきたいぐらいです。

(7)演奏するときには、自分自身に忠実になってください。
誰かを真似しようなんて思ってはダメです。
そんなことでは安心して演奏しておれません。
あなた自身のスタイルを築いていってください。

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