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ケルトの笛 インタビュー

ハミー・ハミルトン (Hammy Hamilton)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。
インタビュー: 1998年10月

 

コリン(ハミー)・ハミルトンは1953年にベルファストで生まれた。
多くの人と同じように初期のバラードの録音を通して伝統音楽に魅了され、最初はティン・ホイッスルを、それからフルートを吹くようになった。
民族音楽学の学位を取るため、1976年に調査のためにコークに居を移し、1979年にはアイルランドで最初のフルート工房を作り、アイリッシュ音楽のためのフルートの制作に没頭した。
現在はウェスト・コーク・ゲールタハト(Gaeltacht:ゲール語使用地区)に住んでいて、フルート制作に携わっている。
アイルランドの伝統音楽の様々な側面の研究を続け、アイルランド伝統音楽の商業目的の録音に関する研究で博士号を取り、アイルランドにおける伝統音楽の社会史に関する著作を執筆中である。

ハミーはフルート奏者のための優れた手引書、”The Irish Flute Player’s Handbook”の著者である。
彼の演奏は、”The Moneymusk”(テープ及び2001年にオシアンから再販されたCD)と、同じくオシアンからCon Fada O’Drisceoil と Seamus Craighとともに出した”It’s No Secret” で聞くことができる。
ハミー・ハミルトンの情報は、Hammy's Web siteまたは、下記へ。

Breac Publications
Coolea
Macroom, Co/ Cork
Ireland
Tel +353-26-45209; Fax: +353-26-45219

19世紀イギリスではコンサートピッチは今よりずっと高く、いくつかの例では、A=455もあった。 このピッチで演奏するように作られたフルートを現代のピッチに合わると、その魅力を失うことになる。

※左枠:インタビュアー 右枠:ハミー・ハミルトン

ハミルトンさんは、ベルファストのすばらしいフルート奏者のお一人ですが、どなたから音楽の影響を受けられたのですか。 フルートを始めたのは何時ごろで、どなたからフルートを習いましたか?

1973年か74年頃、フルートを吹き始めました。
それまでも様々な楽器をやっていましたが、やがてホイッスルに落ち着きました。
でも、ずっと、フルートに憧れていて、フルートが手に入ると、すぐに乗り換えたのです。
当時フルートはなかなか手に入らない楽器でした。

どうやって学んだかと言うと、当時は伝統音楽の教室などはなく、ほとんどの人が自分で苦労して、レコードなどから学ぼうと努力したのです。

主に影響を受けたのは、当時一緒に演奏した人々でした。
私が定期的に行きだした最初のセッションは、フォールズロードのO'Donovan Rossa Gaelic Athletic Associationにあり, 通常ロッサ・クラブと呼ばれていました。
そこで、伝統音楽家になるべく鍛えられたのです。
フィドルのアンディー・ディクソンAndy Dixonや、バンジョーとフィドルのダーミー・ディアマドDermy Diamondや、フルートとホイッスルのレスリー&タラ・ビンガムLeslie & Tara Binghamがいました。
厳しい学校でした。
音をはずしたり、曲を知らなかったりすると、「うるさい」と言われたものです。
ベルファストの典型的な率直さです。
でも、演奏のしかたとか、セッションでどう振舞うべきかを学ぶことができて、よかったと思います。

1970年代の初めから半ばにかけて、ベルファストには、フルート奏者として身を立てようとしていた人たちが集まっていました。
私のほかには、デシ・ウィルキンソンDesi Wilkinson、フランキー・ケネディー Frankie Kennedy、ゲリー・オドーネルGerry O’Donnell、ガリー・ヘースティングズ Gary Hastingsなどがいました。
私はDesiやフィドルのベン・ガンBen Gunnとよく一緒にいました。
一家でファーマナーから移住してきた人です。
(父親のトミーはThe Boys of the Loughの結成メンバーの一人)私がカホル・マッコーネルCathal McConnellに初めて会ったのは、ガンの台所でした。
カホルは当時ベルファストの若いフルート奏者に強い影響を与えていた方です。
カホルのほかに、強い影響を与えてくれたのはスライゴーやリートリムやロスコモン地方のフルート奏者で、2人名前を挙げるなら、シーマス・タンジーSeamus Tansey やパッツィー・ハンレイPatsey Hanley がいます。

西コークのゲール語使用地区、Cuil-Aodhaに長くお住まいですね。★そこにはフルートの伝統があるのですか。
西コークやケリーは、フルートではなくて、フィドルやアコーディオンが盛んだと思っていたのですが。

その通りです。
この地域はフルートの伝統はあまりありません。
もちろん演奏されていましたが、中西部ほどではありませんでした。
私がCuil-Aodhaに来た頃、フルート奏者のほとんどは、と言ってもそんなに大勢はいなかったのですが、私のような若い「リバイバル」奏者でした。
あの広い地域で私が思い出せる唯ひとりの年配のフルート奏者はミッキー・クローニンMickey Cronin(フィドルのパディー・クローニンの兄弟)だけでした。

ハミーさんは美しい曲を書いていらっしゃいますね。
もっとも有名なのは、”The Woodcock” (ウッドコック:ヤマシギの意)と “The Kerfunten” (ケルフォントン)で、単にハミー・ハミルトンのジグと呼ばれていて、あるいは、忘れられていた伝統曲を基にしたものだとも言われています。
それらの曲について、少しお話ください。
いつ作ったのですか。
曲名はどうしてできたのでしょうか。

この二つの曲は、普通、一緒に演奏されますが、別々の時期に作られたものです。
“The Kerfunten”の方が先で、ブルターニュのワークショップで教えていた時に書きました。
そこはカンペールの郊外でケルフォントン (Kerfunteun)というところでした。
だからその名
前を取ったのです。
スペルは長年の間に混乱したように思いますが、uのあるほうが正しいと思います。
そのワークショップにギター奏者がいて、その人も教えていたのですが、ある日、コードをつなげて遊んでいました。
私はホイッスルを手にとって、それに曲をつけました。
10分後には、Kerfunten Jig が生まれていました。
”The Woodcock”はその数年後に書きました。
いつのことだったかは、よく覚えていないのですが、1980年代だったと思います。
それにつなげるもうひとつの曲を探していて、このジグを思いついたのです。

この組み合わせには、何か人々が好むものがあるようでした。
そして1990年代までに、このセットはかなり人気が出ていました。
今でもパブに入っていくと、この2曲が演奏されているのが聞けます。
2曲目をWoodcock(ヤマシギ)と呼んだのは、メロディーが急に変わるところが、ヤマシギが犬に追われたときに飛ぶ姿を連想させるからです。

研究やフルート製作者としての仕事の中で、今日の音楽家に見過ごされたり、過小評価されたりしてきた多くの優れたフルート奏者に出会われたと思います。
ハミルトンさんのお気に入りの方を上げて、その演奏スタイルを説明していただけませんか?

ここ20年ほどの伝統音楽の商業化で、それぞれの楽器が特定の名人と結びつけて考えられるようになってきました。
悪く取らないでください。
これらの演奏家はほとんど例外なく素晴らしい音楽家で、その名声に値しています。
でも、地理的な理由で録音したものでしか音楽に触れられない人にとっては、多くの素晴らしい音楽家やスタイルは見過ごされてしまうのです。
最近ミュージシャンが個人で質の高い録音が簡単にできるようになって事態は改善されました。
でも、聞いてみる価値のある演奏家で、レコードを作っていない、もしくは、レコードが手に入りにくい人はたくさんいます。
何人かの名を上げて、名前を上げない人もいるのは不公平だと思いますが、私が賞賛するすべての人を話題にすることはできないので、心に留めておいてほしい名前を少し挙げます。

スライゴー/リートリム/ロスコモン出身
●パッツィー・ハンレイ Patsy Hanley
●ジェームズ・マレー James Murray
●クルム&シーマス・オドーネル Colm and Seamus O’Donnell

クレア/ゴールウェー出身
●ヘイネス・ブラザーズ、 シーマス&マイケル
The Hynes brothers, Seamus and Michael
●ゲイブ・オサリバン ‘The Gabe’ O’Sullivan

西リムリック出身
●フランシス・オコナー Francis O’Connor
●ジョー・サリバン Joe Sullivan

アメリカの「黄金時代」に録音されたものについては、ジョン・グリフィンJohn Griffin、トム・モリソンTom Morrison、マーティー・ラビットMurty Rabbitteのレコードを探してみてください。
彼らのスタイルについては、これほど複雑なことを数語で説明するのはとても難しいのです。
聞いてみてください…もし見つけられたら。

ハミルトンさんのソロアルバム”The Moneymusk”は素晴らしいですね。
次のアルバムを作るご予定はありますか。

ええ、あります。
でも、作るのはずっと先になりますね。
自分の中で収録する曲を選んできてはいますが。
それより、”The Moneymusk”をCDで作り直そうかと思っています。
*編集者注=”The Moneymusk”は、テープにはなかった数曲を加えて2001年にCDとして再リリースされた。(オシアンレーベル)
また2001年に、Con Fada O’Drisceoil, Seamus Creaghが参加して”It’s No Secret”がリリースされた。

“The Irish Flute Player’s Handbook” は世界中のフルート奏者にとって、素晴らしい教材です。
どうしてこの本を書こうと思ったのですか。
また、この本の改訂版に何を加えるおつもりなのか、教えていただけませんか。

ある意味、私がなぜフルート製作者になったのか、というのと同じ理由です。
1970年代、ほしくなるようなフルートはなかった…こう言ってもいいのですが、まともなフルートを入手するのはとても困難でした。
同様にアイリッシュ・フルート奏者のための教本もありませんでした。
それで、“The Irish Flute Player’s Handbook”は、その必要を満たすために思いついたのです。
私の工房に訪ねてくる人々に始終聞かれる質問や、私のやっているワークショップで質問されることにも基づいています。

第2版は、できれば、特に作品リストについて、時代に合わせたいと思います。
また、今回は、設計にもっと焦点を当てて、フルート製作の項も含めたいと思っています。

私がこの本を書いて以来、古いフルートと新しいフルートの間の、価値の転換がありました。
1980年代には、ほとんどのフルート奏者は上等な古いイングランド製のフルートを望んでいました。
今では、ほとんど誰もが新しいフルートをほしがります。
新しい版では、この変化を反映させたいと思います。

フルート製作者として、今日のフルート製作の現状をどう考えますか。
ほとんどの製作者は古いイングランド製のフルートの複製を作っているのでしょうか。
それとも、古いデザインを改良する努力がなされているのでしょうか。
この100年間で、フルートのデザインやフルートの作り方で、何か新しいことを学んだのでしょうか。

1970年代後半、その頃手に入るのは古いフルートだけだったのですが、それに代わる演奏性のいいフルートを作ろうとし始めてから、多くの変化がありました。
正確なことはわかりませんが、アイルランド伝統音楽を意識してフルートを作ろうとしたのは、私が初めてではないかと思います。
最初の頃は、この種のフルートを作っているのは私ひとりだけでした。
ほかの製作者は、基本的にバグパイプだったり、ほかのタイプのフルートの製作者だったりしました。
今ではアイリッシュ・フルートに特化した製作者が30人もいると思います!古いフルートのコピーを作る人もいますが、これは、もしオリジナルのフルートが手に入らないのなら、その正確なコピーが次善だという、初期の音楽運動の考え方に影響されています。
でも、ここ数年、それとは違って、私が歓迎する考え方が起こってきていると思います。
そして最高の製作者達は顧客の要求を満足させる楽器を作り始めています。

フルートのデザインに進歩があったかと言うことについては、円錐型ボアのフルートのことを言っているのだと思います。
答えはイエスです。
でも、比較的小さな進歩です。
今日作られている最高のフルートは、19世紀のフルートの中の最高のものより、音程がいいし、とりわけ反応がいいと思います。
一方で、19世紀中頃のベームの画期的なフルートのデザインを別にすれば、―これは伝統音楽の奏者にとってはあまり関係ないのですが― 私のような製作者は、17世紀以来の基本的な設計上の特徴を調整しているだけだとも言えるのです。
それで、あなたの質問の後半の答えは、今日の製作者がしていることは古い設計上の特徴を再調整して、アイリッシュ音楽の奏者にとってより演奏しやすい形にしているのだと言えると思います。

私の知っているフルート製作者の中に、いいアフリカン・ブラックウッドを手に入れるのがますます難しくなっていると言っている人がいます。 本当でしょうか。
この木材は、この先も手に入るのでしょうか。
代替の素材はどんなものでしょうか。

今のところ上質のアフリカン・ブラックウッドを手に入れるのに困難はありません。
でも、ここ数年、状況は変わりつつあるという噂が絶えません。
ほかの自然に育った木材と同様に、供給には限度があるし、需要は増えています。
将来は問題も起こるでしょう。
この問題を扱った本当に面白いテレビのドキュメンタリー番組がありました。
アフリカン・ブラックウッドが直面している主な問題のひとつは、あきらかに、原生地での森林火災の増加です。
アフリカン・ブラックウッドが生えているのは、東アフリカのベルトと呼ばれる開けた草原地帯で、多くの人が想像するような熱帯雨林ではないのです。
大きくなった木は―と言っても、アフリカン・ブラックウッドは大木にはならないのですが―火事を生き延びることができるかもしれません。
でも苗木はそうはいかないので、問題は、生き残った株を移植することなのです。
プランテーションのようなところでは育たないという理由はないでしょうし、東アフリカのどこかの政府が始めているそうです。

ほかの代替素材については、よいフルートを作れる素材は他にもたくさんあります。
コークスウッド(アメリカコクタン)、インドジャボク、ローズウッド(いわゆる、インディアンローズウッドを除く)などですが、問題はこれらの植物もアフリカン・ブラックウッドと同じ問題に直面しているということです。
もしこれらの素材に切り替えたら、今度はこれらがアフリカン・ブラックウッドと同じ問題に苦しむことになります。
合成素材について言えば、大いに希望が持てると思います。
私も合成樹脂でいくつか作ってみましたが、どの点から見ても、アフリカン・ブラックウッドに劣らないものでした。
反応と調律の安定性においては、むしろ優れています。
見た目の美しさとなると、また別ですが、いずれはそのようなことを言っておれなくなるでしょう。

アイリッシュ・フルート奏者の間で、プラタン式(Pratten style)と、ルーダル&ローズ式(Rudall-and-Rose style)のどちらがいいかという議論が続いていますね。
ハミルトンさんのお好みはどちらですか?この二つの長所と、もしあれば問題点をどうご覧になりますか?この二つに注目しすぎて、1800年代以来の他のメーカーの優れたフルートを無視することになっているとは言えませんか。

この議論はそろそろ決着がつくと思います。
その根底にあるのは、ルーダル型の楽器は、音色が甘く、より癖があるということです。
反対にプラタン型の楽器は、より直線的で力強いといえます。
別の要因が、特にアンサンブルにおいて、ますます重要になってきていると思われますが、忌憚なく言ってしまうと、ルーダル型のチューニングが実にひどいという事実です。
Dは低いし、F#は高いし、Bも高いのです。
これらの欠点はキーを使って空気を逃すことで改善できますが、アイリッシュのダンス音楽を演奏しているときには実用的な方法ではありません。
プラタン型のフルートのチューニングのほうがずっとましですが、両方とも全体的なピッチの正確さには欠けていると言わねばなりません。

19世紀イギリスではコンサートピッチは今よりずっと高く、いくつかの例では、A=455もありました。
このピッチで演奏するように作られたフルートを現代のピッチで演奏しようとすると、その魅力を失うことになってしまいます。
私の意見では、これはルーダルのフルートのほうが顕著です。
その理由のひとつは、プラタン型が多く作られるまでに、ピッチが上がり始めたからです。
私がプラタン型のほうを好んでいることはお判りでしょう。
でも、実は20年もルーダル&ローズ型のフルートを吹いているのです。
私が作るフルートの多くはプラタンのデザインを基にしていますが、コピーではありません。
注文があれば今でもルーダル型のフルートも作ります。

ご質問の最後の部分ですが、イエスです。
この2つの名前の影で、隠れてしまっているフルートもあります。
多くの製作者が、特にルーダル型と同じくらい質の高いフルートを作っていました。
フェンタムFentum や ワイルドWyldeや キャンベルCampbellや プラウズProwseといった名前がすぐに浮かんできますが、他にも多くあります。★プラタン型のいい製作者はそれほど多くはありません。
ブージー社Boosey and Co.が筆頭ですが、他に、ホークスHawkesや ハドソンHudsonも作っています。
あまり知られていないことですが、ニコルソンNicholson によって広まった、指穴の大きなイギリス式フルートが出現する前は、標準的な小さな指穴の8キーフルート、特にウィリスWillis、ルーダルRudall、ポッターPotter、 ミルハウスMilhouse などのメーカーによるものは本当にチューニングのいい、すばらしい音色の楽器でした。
今日の奏者が要求する音量が欠けていましたが。

初心者が楽器を求めるとき、新品の、また、中古のフルートにどのようは質を求めたらいいのでしょうか。

フルートを買うのは、難しいところがあります。 新品のほうが簡単です。
その場合は普通、あなたはそのフルートを使っている人を知っていて、その人が意見を言ってくれるでしょう。
満足できなかったらメーカーに持っていくこともできます。

中古の場合は、こうはいきませんし、他にもややこしい点があると思います。
長年使われていなかった古いフルートは、数週間吹いているうちに、本当に変化することがあります。
良くも悪くも変化します。
しばらく吹いていると、割れ目ができることもあります。
修復できないと思った問題が簡単に片付くこともあります。
反対に小さな問題と思ったものが、克服できなくなる場合もあります。

たぶん一番いいアドバイスは、買うときには、経験をつんだ演奏者について来てもらうことです。
そして格好のいいキーや金具に夢中にならないことです。
見かけは問題ではありません。
大事なのは演奏性なのです。

最後にピッチをチェックするのを忘れないでください…現代のピッチで演奏できないフルートもありますから。

  • アイルランドの美しい田舎町コークに工房をかまえる熟練の笛職人!

    • Hammy Hamilton 5キー付きアイリッシュ・ピッコロ D管

      アイルランドの笛職人ハミー・ハミルトン製作の5キー付きアイリッシュ・ピッコロ D管です。

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