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ケルトの笛 インタビュー

ステファン・エケダル(Stefan Ekedahl)

※ このインタビューは、ケルトの笛屋さんが著作権を保有しておりますので、無断での転載はご遠慮ください。
インタビュー: 2015年8月

ダーラナ在住のステファン・エケダル氏はチェロ、フルート、バグパイプなどを操る音楽家である。
スウェーデン伝統音楽のリヴァイバルの中心的存在として、アレ・メッレル氏らとともに、つねに伝統のコアから音楽を作り演奏しつづけてきた。

そんな彼が、近年はダーラナ地方伝統の縦笛の復興に取り組んでいる。
6~8つの指孔をもつ、円錐形の、木で作られたリコーダー型の笛である。このようなタイプのさまざまな笛は、一般的にスピーロピーパと呼ばれている。

その経緯と、笛で奏でられる音楽について、話を伺った。

スピーロビーパについて教えて下さい。

この8つの指穴の空いた笛の起源は一つの村でした。
エーベックスヴァーリーと言います。

最後の製作家は3年前(2012)に85歳前後で亡くなりました。
名前は、ラース・エリック・アンダーソンと言います。
彼は鉱夫で、この地域の人が皆そうだったように牛や羊を買っていました。
彼にとって、笛作りは趣味でした。彼自身が笛吹きではなかったのです。
彼には息子がいましたが、笛作りを引き継ぐことはありませんでした。

彼の父も祖父も笛職人で、少なくとも3代にわたって笛を作っていました。
ですので、この笛の歴史は19世紀末までは遡れるでしょう。
彼の前に、製作家が何人かいました。

遺されたいくつかの笛は、それぞれに形や長さが異なりました。
それらは様々な素材で作られていました。スプルースや、松、ネム、Al(オーラ、水辺に育つ木)などです。

この笛は本来はダーラナ地方で演奏されていましたが、1950年頃からフィドラー達の伝統音楽復興運動によって、スウェーデン各地で演奏されるようになりました。本来はフィドルと合奏するためではなく、ソロ楽器でした。80年になって、二本の笛で合奏する試みがなされましたが、笛の音程がそれぞれ異なるため、合奏は難しかったのです。

この笛では、行進曲、ポルスカ、歌の曲、宗教曲など、なんでも演奏されました。
他に楽器がなければこれでダンスの伴奏もしましたが、あまり大きな音は出ないので、不向きかもしれません。

笛に刻まれたこの紋章は、私がつけたロゴです。
スウェーデンには各地域に紋章があって、昔の笛にも刻印されていたのですか、それに倣って私が独自に考えたロゴです。

この笛は、今や私以外には作る人はいません。
この笛を最初に手に入れたのは、1970年代のことでした。当時私は音楽学校におり、何人かの学生でラース・エリック・アンダーソンに注文したのです。
 

ラース・エリック・アンダーソンは、笛作りを誰にも継承せずに亡くなってしまいました。
それが私が笛作りを始めた動機でした。
彼とは違い私はこの楽器を吹けるわけですしね。

私が最初にしたことは、楽器製作家の友人の工房に行き、マシンを借りて、どうやって笛を作ろうかと話し合うことでした。
友人はダーラナ地方の他の地域の笛を作ってしました。
それは、ユーラパイプと言い、ルネサンスリコーダーのような見た目の7孔の円錐形の縦笛です。
レクサンド市の近郊のユーラという村が発祥です。友人がリタイアしたので、この笛も今では私が作っています。

ダーラナには、様々なタイプの笛がありました。指穴の数も6、7、8つと、いろいろあります。
笛の種類がいくつあるのか、数えたこともありませんが、不思議なことにすべてが円錐管です。
それに対してヘリエダーレン地方の笛は3種類で、円筒管ですね。

現在のスウェーデンにおいて、ダーラナ地方の他では、ほとんど笛の伝統はありません。
かつてはとても盛んだったものの、衰退し息絶えたのでしょう。ダーラナは伝統を注意深く守り続ける地域ですから、笛の伝統が残ったのです。

この笛は現代ではほとんど演奏されませんし、録音もほとんどありません。
その意味においては、80年代のヘリエーダルスピーパの録音プロジェクトは大きな効果がありましたね。
フィドルと合奏し、レパートリーを復刻させたのですから。
この笛においても、私はこれから、そういうことをしたいと考えています。

この笛はソロ楽器である、と今でも言われています。
それは、この曲で演奏される曲が変で他の楽器とは合奏しにくいということもあるのですが、私はそれを変えたいのです。
この笛のもともとの調子はD#でした。ソロ楽器なので、どんなピッチでも良かったのですね。私は、それをAで作っています。

この笛についての書物の記述はほとんどないのですが、森や平原にいるときに自分を楽しませる目的で吹いていたようです。
そして笛は女性の楽器でした。過去のスウェーデン伝統音楽について記述に残っているのは男性音楽家とその楽器のみなのですが、この笛は女性の楽器ということで曲も記述も残らなかったのです。

そのため、この笛の特定のレパートリーは多くはありません。笛吹きの録音が一つだけあるので、私はその録音から覚えたレパートリーに加え、ダーラナ各地の曲をこの笛に合うように移し替えて演奏します。

まだこの笛は販売を始めたばかりですので、私が次にやることは、まずはホームページを作り、楽譜や運指を載せ、録音を発表することですね。

ステファン氏は、その後ホームページを公開し、注文を受け付けている。

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