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ケルトの笛 インタビュー

トーマス・アエビ(Thomas Aebi)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurleyの許可を得て翻訳、公開しています。英語翻訳:村上亮子
インタビューは2004年にブラッド・ハーレー Brad Hurleyにより、トム・アエビの工房にて行われました。
2016年現在も彼はフルートを作り続けており、人気と信頼ある高級モデルを製造しています。(hatao)
インタビュー: 2004年
 
 

出典 A Guide to the Irish Flute

トム・アエビ Tom Aebi はシンプルシステムの木製フルートにおいて、世界でも指折りの製作者としての評判を急速に築いていった。
彼の作るフルートはアメリカでもヨーロッパでも、熟練した演奏者から輝かしい評価を得ている。
フランス、ストラスブールのHerve Yesouに感謝したい。
このインタビューをするよう強く勧めてくれて、質問を提案し、私をスイス、バーゼルのトムの工房へ連れて行ってくれたのは、Herveだったのだから。
ブラッド・ハーレー

※左枠:インタビュアー 右枠:トム・アエビ

どうして楽器製作をするようになったのか教えてください。
一時期、イリアンパイプス製作者のアンドレアス・ロゲ Andreas Rogge の下で働いていたことは知っています。
それ以前にも楽器を作っていたのですね?どうしてパイプからフルートへ転向したのでしょうか?

私はいつも楽器をいじっていました。
主に平凡な楽器で、満足できるものではありませんでしたが。
まずギター、それからバグパイプです。
特にパイプ(最初はハイランドパイプス、それからノーサンブリアン、そしてイリアンパイプス)で毎晩毎晩、練習したり、リードの作り方を学んだり、パイプを調整したりして過ごしました。
最初、周りには助けてくれる人は誰もいませんでした。
それで、問題は山積みでした。

アンドレアスと会ったとき、私はまだ大学生で考古学を勉強していましたが、イリアンパイプスやアイルランドの音楽に夢中になっていました。
自分で調整したリードとチャンターを吹いていました。

アンドレアスのところで働いていたHeikeという娘に夢中になって、ますます彼と会うことが多くなりました。
アンドレアスは私に新しいチャンターとドローンを1セット作ってくれました。

アンドレアスが自分のところで働かないかと誘ってくれたときのことはよく覚えていません。
でも私にとってそれはチャンスでした。
私は大学をやめ、ドイツのチュービンゲンに移り住みました。
楽器製作について本格的に学び始めたのはそのとき以来です。
私たちはあらゆる種類のバグパイプを作りましたが、イリアンパイプスがメインでした。

その頃には、フルートの音にも興味を持つようになっており、自分用に1つ作ろうと思いました。
アンドレアスは気前よく材料を提供してくれたし、リーマー(拡孔器)を使わせてくれました。
ですから、あとは、手本にする優れたフルートを見つけることだけでした。
私が始めて作ったフルートは、プラム材で、古いドイツのフルートを基にしていました。
でも満足できるものではありませんでした。
私はプラテン型にしたかったのです。
漠然とした知識しかなく、寸法もよくわからなかったのですが、私は少しずつ自分のフルートを設計していきました。

ドイツにいるフルートを吹く友達みんなに私のフルートを試してもらいました。
みんなとても協力的で励ましてくれました。
私たちは色々話し合いましたが、それでもそれぞれのフルートの寸法を取るのは大変なことでした。
やがて、プラテン型のフルートを作り、評判もよく、アンドレアスが注文を出してくれました。
チュービンゲンで見習いをし、それから働いて7年がたちました。
母国へ戻って、自分の工房を持ちたくなりました。
資金も設備も乏しかったけれど、すでにフルートの注文も受けていたので、バグパイプよりもフルートを作る方がいいのは明らかでした。
それ以来、ずっと忙しくしています。

プラテン型とルーダル型と両方作っていますね。
あなたのこの2種類のフルートについて、特にあなたが工夫された点について教えてください。
たとえば、ルーダル型のB♭のキーに2つのタッチ(キーを左右どちらの出ても操作できる)を与えたそうですね。
元々のルーダル&ローズのフルートにもそういうのがありましたね。

さっき言ったように、最初はプラテン型を作りました。
当時はこの型にもっとも関心があり、他の型には興味がなかったのです。
私が一番好きなのは1856年頃のハドソンが作ったプラテン型でした。
それはドイツの優れた演奏家、レジーナ・アイリング Regine Eillingが所有していて、彼女が吹くと素晴らしい音を奏でました。
私はまずその音を模倣したかったのですが、寸法がわかりませんでした。
それで、手探りで始め、どの寸法がいいのか模索しました。
だんだん、ひどいミスはしないようになり、フラットなテイパーボア(円錐の内径)がうまくいくことがわかり、いい歌口の作り方がわかってきました。

ずっと後になって、レジーナのフルートの寸法を測らせてもらいましたが、自分の作ったフルートが彼女のフルートにかなり近いことがわかりました。
一番大きな違いは脚部管にありました。
私のはより細いテイパー型になっていて、それでDの音が震えるのを避けることができ、高い音域で豊かな音色を奏で、第3オクターブもいい音を出すことができるのです。
しかし幾つか問題が残りました。
低いCが弱く、歌口の切り込みにあまり変化がつけられないのです。
しかしチューニングはまっすぐで、レジーナさえも私のフルートに乗り換えてくれたのです。

後に、2000年にパリのThierry Mayes に会い、彼のルーダル&ローズ製のフルートを調べさせてもらいました。
私たちは音色や反応(response)について長い間話しました。
3日目に彼のルーダル&ローズの指孔の大きなフルートのコピーを作りました。
フルート製作の新しい世界に足を踏み入れたのです。
音色が今までのものとまったく違いました。
豊かで、まろやかで、充実している。
音の深み、倍音。
このデザインはどの点においても、ずっとバランスが取れていると思いました。
トータルに素晴らしい。
私は彼のフルートから多くを学びました。
演奏もずっと上達しました。
それ以来、ますますのめり込んでいます。

やがて、プラテン型の生産をやめ、より優れていると思うルーダル型に没頭するようになりました。
本物の名人のデザインを基にしていたので、私のフルート製作は大いに進歩しました。
しかし、同時に私のプラテンをもう一度デザインしなおす努力もしていました。

ThierryのルーダルのBbはダブルキーになっていて扱いやすく、私のフルートにもこれをつけようと思いました。
普通の親指のキーではすばやく動かせないのです。
私はこれを採用し、いい評価を得ました。ブルターニュの奏者は独特の装飾をするのにこれがいいのです。
さらに、左手の指をまっすぐにして上の孔を押さえる(パイパーグリップ)癖のある奏者は普通のBbのキーの位置からずっと離れたところに親指を置きます。
ダブルキーがあれば、右手の人差し指で押さえることができます。
だから普通のキーのデザインで、Bbに指が届くのです。
しかし実は今はこれをお勧めしていません。
少し練習すれば、親指のBbで十分役に立つし、私も二つ目のキーは使っていません。
親指のキーにはより強いバネが必要なので、私のフルートにはつけたくありませんが、多くのお客様はこれを求められます。

アイリッシュ音楽を演奏するために、私が今作っているルーダル&ローズ型のフルートは、1841年の頃とは少し違ったものを基にしています。
それはボアが少し広いのですが、内側の形はよりきっちりしています。
作るのは難しいのですが、バランスも反応もよく、さらに、深く豊かな音色になります。
歌口の形も様々に作れますし、音色も様々です。
私はこのフルートを3つの形で作っています。
オリジナルの形、アイリッシュ用に進化させたもの、そして指孔が中くらいのサイズのものです。

他の調のフルートも作り始めていますね。
最近お作りになったB♭のフルートは指孔の間隔がかなり狭いそうですね。
D管フルートと大して変わらないとか。
これについて少し教えていただけませんか。

最初に作った低い音のフルートはBでした。(Bのバグパイプと一緒に演奏するため、パイプ奏者の間ではBが好まれている)
しかしフルート奏者はBbやCを望みます。
お手本とするものはありませんから、また最初から作っています。
ルーダル&ローズのデザインから学んで、私のB♭のフルートを徐々に改良しています。
基本的には、問題になるのは寸法なんです。
ちょっと待ってください。
まずDフルートの限界を考えてください。
もしすべての指孔を正しい場所に置いたら、それだけでもDフルートは吹きにくいと思いますよ。
指を広げすぎて、演奏しにくいと思います。
だからDフルートでさえ、指孔の幾つかは音楽的に正しい場所にはないのです。
管が長いので、Bbフルートではさらに問題が大きくなります。
Dフルートでもチューニング、デザインの諸要素、指使いと位置の間にすでに多くの妥協があります。
Bbではさらに問題が大きくなります。
この問題を解決する最も効果的な方法はチューニングと指の広げ方をコントロールするキーをつけることですが、客の多くは今までと違う感覚や、外見や、費用がかさむことに躊躇するものです。

それで最初にBbの伝統的な6孔のフルートで、かつ私のような小さな手でも扱えるものを作ろうとしたのはこのためなのです。
他のデザインは後から何とかなるでしょう。
たとえば私はジル・レアールの大きなBbの音色が好きですが、私自身や他の手の小さな奏者にはこれを演奏するのは大変なことです。

長いこと、実験したり、ボアの調整をしたりして、手ごろな指間隔で、ふくよかで豊かな音色、すばやい反応のBbフルートを手にしました。
Dフルートと同じように演奏することができます。

あなたのお作りになるフルートは人気がありますね。
予約待ちの人も多いのではないでしょうか。
キーなしフルートだとどのくらい待つことになりますか?
フルキーのフルートだとどうでしょうか。

十分に乾いた木材であったとしても、作業の様々な段階で(リーマーをかけたり、チューニングしたり)、木を休ませ、落ち着けておく最低限度の時間がかかります。
今の待ち時間は1年から1年半です。
主にフルキーや6キーのフルートで、キーなしフルートならもう少し短い時間でできます。

他のタイプも生産していますか。たとえばバロック・フルートとか。

はい、もちろんです。
どのような音楽も、どの時代にも、ふさわしいフルートがあり、そのような楽器を求める人々がいます。
そして、興味深いフルートや様々な音色があります。
私は、ロマン派や、前期クラシックのフルートに興味があります。
フランスやドイツで作られるようなもの、また、イギリスの指孔の小さなフルートなどです。
バロックやクラシックのキーつきフルートをコピーしたり、実験的に作ったりもしています。
でも一番作りたいフルートはピッチが435~440Hzのイギリススタイルの指孔の小さなロマン派のフルートです。

お住まいの地域(スイス、バーゼル)では、音楽が盛んで、ファイフやバロック音楽の伝統が強くあります。
このことはあなたの楽器製作に影響がありますか。

ありがたいことに、ここバーゼルでバロックやルネッサンス・フルートとのつながりが強くあります。
フルート奏者で教師のLiane Ehlich と一緒に、バロックやルネッサンスのフルートを作っています。

バーゼルのピッコロ&ドラム・シーンの影響ですか?ないですね。
私はピッコロはやりません。
私の耳には音が甲高すぎる。
たぶん、それが理由でしょうね。
アメリカン・ファイフ&ドラム(鼓笛隊)をする人たちもいて、3つか4つのバンドがありますが、楽器はアメリカのスキップ・ヒーリーから買っています。
そちらの繋がりなんですね。

世界中から多くの方が訪ねて来てくれますが、自分の町からは少ないのです。クラシックや、地元の音楽とではなく、アイリッシュ音楽と繋がっているからでしょう。

これは多くのフルート製作者にお尋ねしていることなのですが、様々な見方をお聞きするのはとても興味深いことです。
プラテン型とルーダル型の違いをどう認識していらっしゃいますか?
もし初心者がどちらを買うか迷っていたら、どうアドバイスされますか?またその理由は?

簡単にはお答えできません。
もう少し深いところからたどらなくてはいけないからです。
フルート、あるいはフルートの型に対する好みは全く個人的なことです。
製作者としてみると、演奏者の意見は製作の基準だとかフルートの歴史におけるその型の価値や位置などに強く影響されています。
フルートを学び始めた人に推薦するとすれば、それぞれの型の演奏の特性を考慮することがより大切です。

プラテンの新しい型(大きなflat-taper なボアと大きな指孔のコンビネーション)はより明るく大きな音が求められるようになってきて、生まれました。
19世紀を通して、名高い製作者や演奏者はクラッシックのキーつき6孔フルートの発展にかかわってきました。(それ自体バロック・フルートから生まれてきたのですが)
19世紀中ごろに向かって、イングランド(そこでは、チャールズ・ニコルソンの時代から大きな音が求められてきた)では、新しい試みや新しいフルートの型が多く生まれてきました。

1848年のベームの円筒管フルートは、フルートの世界に革命を起こしました。
フランスではこの全く新しい考え方はすぐに受け入れられましたが、イングランドでは、そうはいきませんでした。
イングランドの演奏者は伝統にこだわり、円錐管のフルートと古い運指にこだわっていて、さらに何十年か、別の解決策はないか模索していました。
プラテン型もその一例です。
アイルランド音楽の演奏には向いているために私達にも知られているプラテンは、(本来は)より精巧なキーワークのプロ仕様のフルートがあったのですが、伝統的な8キーの初心者向けモデルです。

ルーダル&ローズのデザインはさらに古く、イングランドの古典派後期、ロマン派のフルートから直接つながっています。
そのミディアム・モデル(アイリッシュミュージシャンの基準では。孔が小さいと言う意味)は孔の大きなものより広く使われていました。
孔の大きなモデルはイングランド・ロマン派時代の、最盛期の名高い製作者の中でも最高の品質に匹敵しています。

つまりこれが、プラテンかローズか、どちらの型が好きか自分の考えが固まってきた背景なのです。
実際、豊かな音色、バランス、優れた演奏性、エレガンス、演奏しやすさ、どれをとってもルーダルのほうが優れています。
そして私の個人的な印象と歴史的「価値」は完全に一致しているのです。


フルートを選ぼうとしている人に、アドバイスです。

・自分の好きな音色は(プラテンとローズの)どちらか?(他の誰かが出す音だけでなく、あなた自身で出す音)
・反応の速さと安定性
・適応性(強弱、音色の作り方)
・イントネーション(リッピング、フィンガリング)
・演奏性(息の入れやすさ、指孔の大きさ、指孔の間隔)