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ケルトの笛 インタビュー

クリス・アベル (Chris Abell)

※このインタビューは、ホームページChiff and Fippleより、著作権保有者のDale Wiselyの許可を得て翻訳、公開しています。
インタビュー年は不明ですが、2000年頃だと思われます。
アベルのティン・ホイッスルは、ケルトの笛屋さんを通じて、取り寄せることができます。
興味のある方はお問い合わせください。英語翻訳:村上亮子
 


クリス・アベルは、ノースカロライナ州アッシュビルで、パートナーでフルート奏者であるケイト・スタインベックと、2人の間にできた2歳半の息子ガレンと共に暮らしている。
(2005年現在:子供は2人になって、ガレン8歳とルーシー5歳)クリスの工房は築90年余りの農家の機織場にあり、そこで、アフリカン・ブラックウッドと銀を使ってベーム式フルートを作っている。

ありがたいことにクリスはホイッスルも作っていて、クリスの作るホイッスルは高く評価されている。
フルートと同様に、クリスの好みは、ホイッスルにもアフリカン・ブラックウッドに銀のチューニングスライドとフィッティング(木の管の外側に巻く金属の輪)を使うことだが、他の木材でも作るし、注文があればデルリン(コープランドやオリオーデンも使っている黒いプラスチック)のホイッスルも作る。

※左枠(インタビュアーデール)右枠 クリス・アベル

経歴について少しお聞かせください。
どこの生まれか、どのような教育を受けたのか、本職は何かとか…

コネチカット州ニューヘイブンで、1951年9月に生まれ、1953年にはノースカロライナ州アッシュビルに引っ越しました。
父はアッシュビル・カントリー・スクールの校長を1953年から1975年まで勤め、私もその学校に通い、1970年に卒業しました。
それからノースカロライナ州ローリンバーグの St. アンドリュース長老派大学で2年間学び、宗教学と哲学を専攻しましたが、卒業せずに退学しました。
教室での授業とは違う形での学問の必要性を感じたからです。

農場や建設現場や工場で普通の労働者として働きました。
景観整備の仕事をしたり、野外活動の指導をしたり、サッカーのコーチをしたり、パン屋もしました。

1981年、金属のフルートを作る訓練を受けました。
アッシュビル地区の小さな事業でしたが、やがて廃止されてしまいました。
それで、自分で作ったフルートを1つ持って、ボストンに行ったのです。
ボストンでは、何十年にもわたって、すばらしいフルートが生産されています。

ボストンのブランネン・ブラザーズ社で仕事を得ることができました。
もっとも有名なフルート製作会社のひとつです。
私はボストンに引っ越し、ブランネン・ブラザーズで3年間働きましたが、自分で工場を作れば、もっとうまくやっていけると感じました。

それで、マサチューセッツ州コンコルドに自分の工房を設立し、ブランネン・ブラザーズの下請けを続け、一方、自分の楽器製作も始めました。

この時期に、ホイッスルの製作を始めたのです。
材料はフルート会社を通して、簡単に手に入りました。
私はボストンにとどまって、ブランネン・ブラザーズのためにフルートを作り、自分ではホイッスルを作りましたが、1995年にはアッシュビルに戻り、以来ここにいます。

1981年以来、フルートとホイッスルの製作に専念しています。

私は何よりもまずフルート製作者で、仕事の一部としてホイッスルも作っています。
どちらの楽器も私独自のデザインで、完璧なイントネーション(音程の間隔)、シンプルで絶妙なデザイン、そして手ごろな価格という要求を満たすようになっています。
私の作るフルートはプロ仕様モダンベーム式木製フルートで、オーケストラやレコーディングで使われ、世界中で売れています。

どうしてホイッスルの製作に関心を持ったのですか?ホイッスルの研究をした時、誰の作品を手本としたのですか?

1974年頃からホイッスルを吹いていましたが、私の演奏スタイルや芸術的好みに合うものを見つけられずにいました。
1985年ブランネル・ブラザーズで働いていた頃、工場で手に入るアフリカン・ブラックウッドと銀の管材を使って、自分で作ってみようと思いました。
最初スザートのD管を指孔の間隔とマウスピースのデザインのモデルにしました。
私の最初のホイッスルを完成して1週間で、10本の注文を受け、それ以来ずっとホイッスルを作り続けています。
休んだのはパートナーのケイトの出産で、1996年に1年間休暇を取っただけです。
(デール:おそらく数年前に流れた「クリス・アベルは引退した」という噂の出処は、これだろう)
スザートのホイッスルは、私が作り始めた頃は、市場でもっとも音色と音程が優れたものでした。
私が不満だったのは材質とチューナブルでないことだけでした。

Kelischek氏の笛は力強く(bold)、よく出来ていて、驚くほど音程がよく、手頃な価格でした。
私は高級なホイッスルを売り出そうと思いました。
申し分のない材料と、美しいデザインと、安定した音程の、そして、チューナブルで、様々な調子のボディーに付け替えることのできる、そんなホイッスルです。

幾つくらいホイッスルを作ったか、わかりますか?

1985年に最初のホイッスルを作って以来、それぞれの笛にシリアルナンバーをつけています。
笛によって、700とか685とかになっています。
それぞれの笛を買ってくれた方の記録も残っています。

聞くところによりますと、自分で直接笛を販売して、卸はしていないそうですね。
どうしてでしょうか?

いつも同じ品質のものを作り続けるのためには、少量ずつ作ることが好ましいのです。
値段を手頃なところに抑えて、かつ一定のペースで生産することが可能になります。
もっとも大切なことは、どんな問題が起こっても、どんな疑問がわいても、お客様にきちんと対応できるということです。
15日間の「お試し期間」を設けているのですが、購入後15日以内なら、使用感のないものなら、全額返金に応じています。
お客様はご自分のところでそのホイッスルを吹いてみて、それが本当に気に入ったものかどうか、試してみることができるのです。

小売店を通してでは、このようなサポートを続けることはできません。

ウェイティング・リストはどんな具合ですか?

(2006年更新:最近クリスから聞いたところによると、ホイッスルで5、6ヶ月、フルートで1年だそうだ。)

クリス・アベルのフルートの写真を見たことがありますが、一見の価値がありますね。
材料の違いについて話していただけますか?

基本的には2つの素材、アフリカン・ブラックウッドとデルリンを使っています。
デルリンとはデュポン社が作っている黒いプラスチックで、加工のしやすさでも、音色の点でもアフリカン・ブラックウッドとよく似た性質をもっていますが、気候の変化の影響は受けません。
私は見栄えも音色も、アフリカン・ブラックウッドのほうが好きですが、デルリンも、悪くはありません。
値段の点でも同じです。
フィッティングには銀だけしか使いません。

このところ、ローホイッスルの人気が高いですが、ローホイッスルは
作らないそうですね。
どうしてですか?

ローホイッスルの問い合わせが多く来ていますが、私の返事は決まって、「1つ作ったことがあるのですが、キーだらけになってしまうのです。(ベーム式フルート)」というものです。

困ったことに、私の作るホイッスルの形(円筒形で、長さと内径の比が適切な割合になっている)でローDを作ると、キーをたくさん使うほかないのです。
正しい音を出そうとすると、指穴の間隔と大きさは、手の大きさが普通の人にも手ごわいし、手の小さい人にはまったく無理です。
指穴が離れすぎていて、大きすぎで、指で押さえられないのです。
指穴の間隔と大きさ、また、長さと内径の割合には多少の余裕はありますが、理想の形から離れるほど、楽器の性能は劣るのです。

私の解決策はキーをつけることになりますが、今のところは、ローホイッスルを作る研究や開発を始めるつもりはありません。

企業上の秘密に触れない範囲で、どのように仕事をしているのか、少し話していただけますか。
全工程通して、ある程度の数量を同時に作るのですか?
日常の仕事について話していただけたら、読者には興味深いことだと思います。

まず、私には企業上の秘密というものはありません。
私の笛を手にした人は、私の「秘密」をすべて手に入れたことになるのです。
生産の規模や方法について質問があれば、どんな質問にもお答えしています。
もし誰かが私の笛の正確なコピーを作って、もっと安く売ろうとするなら、「どうぞご自由に」です。
なぜなら、大事なのは楽器そのものだけではないのです。
製作者の考え方や誠実さは、出来上がった製品と同様に、顧客との信頼関係を築く上でなくてはならないものだからです。
反対に、もし誰かが、私の笛を、独創的でユニークな発展のための踏み台として使うなら、ホイッスル製作の発展の礎になったことを名誉に思います。

ホイッスルにおけるGeorge Kelischek、フルートにおけるビックフォード・ブランネンは私にとっての踏み台であり、お二人の影響には常に感謝しています。
私も自分の製作を通してフルートとホイッスルの世界に少しは貢献したと思いますが、しかし、それは純粋に「私が自分一人で作ったもの」ではないし、そのことは日々意識しています。
ということを申し上げた上で、私の楽器製作の方法について、少しお話しましょう。

楽器製作で一番気を配っていることは、自分が定めた基準を守るということです。
つまり、どの笛を買っていただいても、私の笛の品質を保っているということです。
一定の基準を守っているということは、現在の、そして未来のお客様に、高級なホイッスルを買う決心をする足がかりを与えてくれます。

最初のデザインが決定すると、生産に必要なものを集めます(銀の管材、木材、エポキシ、デルリン)。
そして、量産する技術を確かなものにするために、幾つか作ってみます。

新しい製品を生み出すたびに、材料や道具や生産工程のために、多くのお金と時間がかかります。
新しい製品が、軌道に乗ってくると、後はただ作るだけです。

研究と開発の楽しい時間は終わり、後は、ただ作るだけ。
だから、この最後の段階に、日々の生産活動がシンプルに楽しくできる工夫が必要です。
(私の工房では、すばらしい音響システムを使って、伝統音楽やジャズやクラシックを流し、作業の退屈さを紛らわせています。)

ジェフ・トーマスという従業員がいて、何年間か一緒に働き、木材の旋盤作業や、部品つくりや、組立作業を学んでいます。
おかげで、私はホイッスルが出来上がってくる間に、同時にフルートの仕事ができます。

最近は、ホイッスルは大体20本を同時に作っています。
木材を旋盤にかけ、穴をあけ、外側と内側に、銀のフィッティングをつけ、指穴をあけ、最後に手作業で、マウスピースや指穴の仕上げをします。
部品の生産はすべて、金属加工の道具 ― 旋盤やフライス盤、アーバープレス、マイクロモーターなどを使ってします。
このような装置を使うと許容誤差を小さくし、製品の質を均一にすることができます。

ホイッスル1本作るのに約5時間かかかり、私たちは80時間で20本作っています。
20本のホイッスルは生産の各段階ごとにまとめ、まとめて次の段階に移ります。
それで、それぞれの生産段階のホイッスルが一定数あることになります。

実際に笛を作る時間のほかに、道具の保守点検、材料の注文、顧客連絡、記録などの時間も要ります。
笛製作にかける時間は、労働時間の80%ほどでしょうか。

フルートのような音色のホイッスルを作りたいと思いますか。
または他に何か特徴のある音色とか…

ホイッスルを作り始めた時、特にどんな音を作りたい、とかはなかったのです。
それより、2オクターブ以上の音域で、澄んだ、にごりのない、力強い(clean、 clear、 powerful)音の出るホイッスルがほしかったのです。
木のホイッスルを作っていますが、リコーダーの音を求めているわけではないし、伝統的な「ティン・ホイッスル」の音に近づきたいのでもありません。
たくさんのホイッスルを作ってきて、どの音も、すばらしい、よくできた木製ホイッスルの音であることに満足しています。