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ケルトの映画館

ザ・ガード 西部の相棒

映画の基本情報

THE GUARD
製作:2011
原題:The Guard
監督:ジョン・マイケル・マクドナー
出演:ブレンダン・グリーソン、ドン・チードル
ジャンル:コメディ/犯罪/ドラマ

ストーリー

アイルランドの西端の町ゴールウェイ州のコネマラ地方でのんびり巡査をしているジェリー・ボイル。
勤務中でもビールを飲んでゲームに興じ、スピード違反を悠々と見逃すマイペースな彼の住む、犯罪とは無縁の町で、一件の殺人が起きる。
その直後、国際的な麻薬密輸組織がゴールウェイで取引をするという事件を追って、アメリカからFBI捜査官がやってくる。
麻薬密輸に全く興味のないボイル巡査だったが、皮肉とジョークでのらりくらりとFBIの捜査に巻き込まれないようにしていたが、彼の周りで起こる出来事が、彼を真相に近づけていく!?

物語の時代

現在

ロケーション

アイルランド ゴールウェイ州バーナ、コネマラ、ソルトヒル、スピッダル

アイルランド ウィックロー州

登場する建物

フッカー・バー(Hooker Bar)
ザGホテル(The G Hotel & Spa Galway)

登場する伝統音楽

主人公が死期の近いお母さんと訪れる「Hooker Bar」で「Gilderoy」という伝統曲がが演奏されています。

店長のココが見所♪

本筋は犯人(麻薬組織)を特定し対峙するまでのミステリー系統のお話ですが、映画「パルプ・フィクション」のように、その合間合間の雑談こそが、この映画の見どころになっています。

そんな雑談には多くのアイルランド人の強烈な皮肉&ジョークが含まれていて、そこからアイリッシュの常識感や現実をうかがい知ることができます。

「アイルランド人=大酒のみのバカ」
こんなステレオタイプなアイリッシュに対するイメージが、世界中で定着していますが、それを逆手にとって
「あえてアイルランド人(大酒のみのバカ)っぽく振舞っているだけで実は賢いんです」
という逆に神話のような性格の主人公の存在そのものが、世界の常識に対しての挑戦なんですね。

 

I.Satさん(@isatchannel)が投稿した写真 -


また、麻薬密売事件を追ってアイルランドにやってきた黒人捜査官が、ひとりで聞き込み調査を試みますが
「ここはアイルランドだぞ。英語が話したけりゃイギリスに行け」
とゲール語で門前払い。

しまいには自転車に乗れそうで乗れない子どもや、馬にまで無視される始末。
全員、普段は英語で会話しているんですが、こうした部外者に対する態度も反イングランド精神を象徴しています。


「いいかみんな、5億ドルは、10億ドルの半分だぞ。わかるか、半分だ。」
億単位の大金が動くことのない田舎町(もしくはアイルランド?)の警官にもわかるように、かみくだいた説明。

「何を怒ってる?人種差別発言はアイルランド人の文化だぞ」
偏見的皮肉は、単なるあいさつかもしれません。(この倒錯的な感覚は映画「グラン・トリノ」を見るとわかりやすいです。

「今日は休みだ。一日で捜査に進展なんてない」
時間にルーズなアイリッシュらしい一言。

「ホットウィスキーと冷たいものをくれ。あとビールも。」
大酒飲みのアイリッシュらしい一注文。

映画は全編に渡ってゴールウェイの田舎町や港町の風景を見ることができます。

また、主人公を演じているブレンダン・グリーソンは、アイルランド出身の俳優であり、フィドラーでもあります。(なので付け焼き刃ではない本場のアイリッシュアクセントが堪能できます♪)
「ハリー・ポッター」シリーズの目玉がくるくる回るオヤジ、"マッドアイ"・ムーディ先生役で有名です。

そんな超シニカルで大人向けのコメディは、間違っても子どもさんと一緒に見たりはしないでくださいね。

 

店長の早わかり歴史

アイルランドの常に後ろ向きで攻撃的なジョークセンスは、時代の不条理の中で育まれていきました。

 

Maggie Strongさん(@vileslut)が投稿した写真 -

「ガリバー旅行記」の作家ジョナサン・スウィフトは、貧窮にあえぐのアイルランドの現状を打破するえげつない方法を大真面目(な感じ)に書籍にしました。(1729年出版:アイルランドの貧民の子供たちが両親及び国の負担となることを防ぎ、国家社会の有益なる存在たらしめるための穏健なる提案)

日本人のジョーク許容範囲を大きく超えているこの冊子に、アイリッシュジョークのスケールの大きさの片鱗を見ることができます。(勇気のある方は調べてみて下さい。図書館でも借りられました)

また、ジャガイモ飢饉を経て多くのアイルランド人が海を渡り、アメリカに移り住んだ時に、それよりも前から移住していた諸外国の移民たちから「酒飲みでバカだから何もできない」と嘲笑され、まともな仕事を回してもらえないということがありました。
その影響で、建築や警官や消防士など、誰もやりたがらない過酷な体力仕事ばかりが回され、反対にそれらの職業にアイリッシュ魂が深く根付くようになったわけです。(警官が亡くなった時の葬儀でバグパイプを演奏するのもそのためです)
アメリカのアイリッシュマフィアも、そういった過酷な労働を回されたアイリッシュ同士で一致団結して、あいつらに一泡ふかせてやろうぜ!と意気込んだところが発端、だと思います。

また多種多様な民族が集まって国を作り上げたアメリカならではの「エスニックジョーク」からも、大きな影響を受けています。

これは「ある民族の民族性、もしくはある国の国民性を端的にあらわすような話によって笑いを誘うジョークのこと」というような、なかなかデンジャラスなジョークの一種です。

有名なのはこちら。

様々な民族の人が乗った豪華客船が沈没しそうになる。それぞれの乗客を海に飛び込ませるには、どのように声をかければいいか?
●イタリア人「海で美女が泳いでいます」
●フランス人「決して海には飛び込まないでください」
●イギリス人「こういうときにこそ紳士は海に飛び込むものです」
●ドイツ人「規則ですから飛び込んでください」
●アメリカ人「今飛び込めば貴方はヒーローになれるでしょう」[1]
●日本人「みなさん飛び込んでいますよ」

そういったエスニックジョークの中で「アイリッシュは大酒のみでバカ」というのが定番化して、笑いの種になっている、ということを知っていただければ、この映画を「そういったエスニックジョークに対する、小粋な回答文」として楽しんでいただけると思います♪
 

関連映画

「ヒットマンズ・レクイエム」

今作監督の弟さんが製作したアイリッシュギャングの悲しくも笑えるコメディドラマで、ブレンダン・グリーソンも出演しています。

  

 
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