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ケルトの映画館

ハンガー 静かなる抵抗

映画の基本情報

HUNGER
製作:2008年
原題:Hunger
上映時間:96分
監督:スティーヴ・マックィーン
出演:マイケル・ファスベンダー、リアム・カニンガム
ジャンル:ドラマ/実話

ストーリー

1981年、北アイルランドのメイズ刑務所には、サッチャー政権により弾圧され、政治犯としての権利を奪われたIRAの囚人たちが収監されていた。
ボビー・サンズを中心とした彼らは自らの信念を貫くために、様々な抵抗を重ねたが、看守たちはそれを暴力で制圧していた。
あらゆる手を尽くしても変わらない惨状に、サンズは、最後の手段として、暴力に寄らない抗議活動「ハンガーストライキ」の実行を決意する。

(Blu-rayパッケージより)

物語の時代

1981年

ロケーション(撮影した場所)

北アイルランド ベルファスト(映画のほとんどはセット内撮影=メイズ刑務所ではない)

登場する建物

メイズ刑務所(正式名Her Majesty's Prison Maze)
 



刑務所は2000年を持って閉所しました。
屋外の映像は冒頭と、終盤の回想シーンだけです。

 

店長のココが見所♪

ほとんどセリフのない静かな映画です。

刑務所に関わる人たちの日常を静かに淡々と描いた「序盤」
生々しい暴力の実態が映し出される「中盤」
ハンガーストライキの主導者ボビー・サンズと神父が激論を繰り広げる「前終盤」
そしてハンガーストライキに突入し、何も言わぬまま静かに死に行く「後終盤」
の4部構成のような形を取っています。

4部の中で唯一「激論」が繰り広げられる前終盤では、この映画のほぼ全セリフ量を、17分ものワンショット(カットしない長回し撮影)で見せてくれる離れ業を披露。この映画の大きな見所となっています。(この2人の役者さんは、このシーンを成功させるためにしばらく同居して練習を重ねたそうです)
また、この激論は、当時のIRA側の主張と、それに賛成しかねる北アイルランド人の主張をしっかりと教えてくれます。

その17分(さらにその後5分の長回しがあるので計22分)以外は、本当にセリフの少ない、サイレント映画に近い作品です。(言葉の代わりに映像が多くを語ってくれます)

物語は「刑務官」→「収監されたてのIRA青年」→「主人公のボビー・サンズ」へと静かに流れながら、それぞれの周りの人物も丁寧に描かれていて、決して「どちらが悪い!」とは決めつけない、客観的で平等なスタイルを取っています。

とにかく「リアル(生々しい)」で「衝撃的」な映画なので、食事中の鑑賞(絶対にダメ!)や、初デートで肩寄せ合って見る、なんてことはオススメしません。

また、アイリッシュの色男マイケル・ファスベンダーの演技力(と驚異的な激やせっぷり)が世界で注目を集めた作品でもあります。
この映画のS.マックィーン監督とのコンビは、「SHAME/シェイム」「それでも夜は明ける」と現在まで続いています。
 
あ、「それでも夜は明ける」は1840年代アメリカの映画なんですが、映画中にティン・ホイッスルが2度ほど登場します!
アカデミー作品賞を受賞した作品でもありますので、興味のある方はぜひご覧ください。

ちなみにこの「ハンガー」は、このコーナーでこれから紹介するアイルランド映画も全部含めた上での、店長的ベスト5のひとつです。

店長の早わかり歴史

IRAはアイルランドが独立した時に、北アイルランドだけを「取り戻し損ねた」と感じたので、北アイルランドの英国からの独立を目標に、時には過激な手段を選ぶ、ちょいワル組織です。(現在は活動していません)

組織のそもそもの成り立ちは映画「マイケル・コリンズ」→「麦の穂をゆらす風」の順番に見れば、しっかりと把握できると思います。

外野から見れば、彼らの行為はテロそのもので、世界からはテロリスト集団と見られていました。

でも、「自分たちの国を取り戻す!」「腐りきった政権を打倒する!」という政治的な動機と行動によって逮捕された彼らは、例えば泥棒とか放火魔とは 「そもそものくくりが違う」という感覚があったんです。(それは例えば、もしもサッチャー政権じゃなかったとしたら、彼らは罪を犯さなかったか、彼らは罪に問われなかったという点で明らかかもしれません)

そして当時の政府も、IRAの活動で囚えた人たちは 「政治犯」であって、「ただの犯罪者」とは区別が必要だと認識していて、当初は明確に刑務所も指示を与えていたようです。(私服が許される、とか)

でも、その「政治犯としての権利」を、時の首相マーガレット・サッチャーが、ある時反故にしたことから、 この政治的弾圧に対して、刑務所内からでも抗議ができるんじゃないか、と行動を開始。その少しあとぐらいの時代から、この映画は始まります。

様々な種類のストライキを試みましたが、鉄の女サッチャーは意にも介さなかったので、ついには首謀者のひとりでもあった活動家ボビー・サンズほか10名が、この映画のようにハンガーストライキを行い、ついには死者が出たことで、英国政府も彼らの要求を無視できなくなった、という歴史なのでした。

その後、IRAは1997年まで活動を続けますが、現在は武装解除しています。

「英国とアイルランドは仲が悪い」というのは、世界の共通認識ですし、事実な部分もありますが、英国がアイルランドを征服していた長い歴史の中で、多くのイングランド人が海を渡ってアイルランドに移り住んでいます。
そんなわけで、アイルランド島にも一定数以上のイングランド人、もしくはその血を受け継いだ人たちがいたわけです。

なのでアイルランド独立の時に「そんなのいやだ、アイルランド島全部に独立されたら、ボクの居場所がなくなる!」と主張した人たちも多かったのです。
そういった人たちが、半ば追いやられるように北に逃げ込んだ土地が、現在の北アイルランドというわけなんだね。

 

関連映画

「ヒットマンズ・レクイエム」
「マイケル・コリンズ」
「麦の穂をゆらす風」
「レクイエム」

 
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