ガリシア音楽で使われる楽器「サンフォーナ(ハーディガーディ)」
サンフォーナは、中世のオルガニストゥルムを祖先に持つ楽器で、バイオリンの弓の代わりに円盤で弦を擦って音を出し、鍵盤で音程を変えることによって演奏される楽器です。イベリア半島におけるこの楽器の担い手は主に盲人で、新聞やテレビのない時代に、この楽器の伴奏に合わせ、他の町で起こった出来事を織り交ぜた歌や物語を歌うことで、生活の糧を得ていたのでした。ハーディガーディ自体はフランスを中心にヨーロッパ各地に存在しますが、イベリア半島のものは、踊りの伴奏を目的とするフランスのハーディガーディとは違ってリズム弦がなく、ギター型のボディを持ち、バイオリン型のペグを持つことが特徴です。
20世紀に入るまで、サンフォーナは主に大工が製作しており、楽器としての質は低いものが多かったのですが、20世紀前半にファウスティーノ・サンタリセス(Faustino Santalices) が製作法や現在一般的に使用されているチューニングを確立し、世界で初めて録音も残しました。ガイタ奏者でもあった彼は、盲人が歌うロマンセと呼ばれる歌に加えて、ダンス曲や行進曲など、様々なレパートリーをサンフォーナの演奏に取り入れました。
後にバンドは解散となり、カルロス・ヌニェスはガイタ・笛奏者としてケルト音楽の世界へと羽ばたき、アンショ・ピントスはBerrogüettoというバンドで、サンフォーナ奏者として伝統音楽をベースとしたコンテンポラリーバンドを始めます。このバンドは非常に大きな成功を収めました。アンショがこれまでどこか古風なイメージのあったサンフォーナに新たな風を吹き込んだことで、ガリシアでのサンフォーナ人気は一気に高まり、現在ではフランスに次ぎ最も多くの演奏者人口を抱える地域にまでなりました。