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ケルトの笛 インタビュー

エイモン・コッター(Eamonn Cotter)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。英語翻訳:村上亮子
 

「いい音を出すためには引き締まったアンブシュアが必要です。
トーン練習はほかの事と切り離して、個別にする必要があります。
ロングトーンの練習をして、納得のいく音が出るまでアンブシュアを調整してください。」
(エイモン・コッター)

レイチェル・マーシュに感謝します。
イングランド、北デヴォンのフルート奏者で、エイモン・コッターにインタビューすることを快く引き受けてくれました。
1999年、ミルタウン・マルベイで行われたウィリー・クランシー・サマースクールでのことです。
レイチェルは、インタビューの文字起こしもしてくれました。


経歴

エイモン・コッターはクレア州キルマレイKilmaley 出身で、フルート奏者、製作者、指導者として高い名声を得ている。
シャスキーンShaskeenというよく知られたバンドで演奏している。

ソロアルバムを2枚、"Eamonn Cotter: Traditional Music from County Clare” と(2012年の) “The Knotted Chord” を出している。
個人レッスンの他、ワークショップやサマースクールで教えていて、ウィリー・クランシー・サマースクールもそのひとつである。

これはエイモン自身が自分の作品について語っていることである。

「最初のレコーディングは1979年で、カセットテープで出したものでした。
5年間一緒に活動した学校時代のバンドで作りました。

学校というのは1972年から77年まで在籍した聖フラナガン校St. Flanaghan’s Collegeのことです。
音楽家にとっては素晴らしい学校で、私はノエル・ヒルNoel Hillやポール・ロッシェPaul Rocheなど、多くのよく知られた音楽家と共に学びました。

「あの頃、私たちはケーリーバンドで演奏していました。
学校が創立百年を記念して、アルバムを作ってくれることになったのですが、残念なことにカセットだったのです。
いいアルバムですよ。
CDだったらよかったのですが。
ダブリンのウィンドミル・レインで録音しました。
今では有名なスタジオですが、当時はまだ出来たばかりでした。
それ以来、そこでシャスキーン・ケーリーバンドShaskeen Ceilli Bandの録音をし、”The Mouse Behind the Dresser” のソロを録音しました。
これはよく知られたアルバムです。

もちろん私自身のソロアルバムもあります。
その2年後、1996年にリリースされました。
なかなかいいですよ。
結構いいレビューをもらいました。
ビックリです。
こういうアルバムだと当然批判的な反応もあるものなのですが。
皆さん、好意的です。
批判も当然あると気を引き締めていますが、まだありません。
みんな私がそれに耐えられないと思っているのじゃないですか?」

※左枠:インタビュアー 右枠:エイモン・コッター

音楽を始めた頃のことを、お話いただけませんか?
最初はどなたの影響を受けられたのでしょうか?
最初に始めたのはフルート、ホイッスル、それとも何かほかの楽器ですか?

私は音楽家の家系に生まれているのです。
母は50年以上もクラッシックピアノを教えています。
姉のGeraldine、(アルバムに参加しているのですが)はティン・ホイッスルを演奏して、何年も前にオシアンから本を出しています。
ティン・ホイッスルの教本で、世界中に広まっています。
O’Neillの本みたいなものです。

兄弟のKieranはコンサティーナをやっています。
家族全員演奏家です。
私はまずピアノから始めました。
当然家にはピアノが2台ありましたから。
でもホイッスルのほうが好きになりました。
ピアノを教えてくれるのが母で、親子だからお互いわがままも出て、いつも機嫌よくできるわけじゃないってことですね。
よくあることです。
ホイッスルなら家中にありました。

それで、ホイッスルを始めたのです。
家にはワーグナーやベートーベンや、様々なクラシックのレコードがたくさんありました。
伝統音楽のレコードは1枚だけでした。
(60年代後半のことです)それはチーフタンズの最初のアルバムで、私はその中の曲を全部、耳で覚えました。
レコードは回転スピードを落とすことが出来ました。
そうすると、曲の音程はおかしくなりますが、ニュアンスを聞き取ることが出来ました。
古いレコードのいい点です。

それから70年代、もちろんボシィー・バンドがいて、マット・モロイとトミー・ピープルが何年間かエニスにやってきました。
私の生まれた町です。
私はマットのフルートの技量に驚嘆しました。
彼は当時ほかの誰よりもずっと優れたフルート奏者でした。
そう言いつつも、私は主にフィドルの影響を受けていました。

クレア州では、フルートはよく吹かれているのですか?
確かにパダー・オラクリンPeter O’Loughlin がいますね。
でも、クレアといえばフィドルやコンサティーナやパイプの伝統が強いと思っていました。
これらの楽器はあなたの演奏スタイルに影響を与えていますか?

パダー・オラクリンとシャノンの パディー・オドノヒューPaddy O’Donoghue を除くと、フルートの優れた奏者はあまりいません。
主にコンサティーナとフィドル、他はアコーディオン奏者が何人かです。

パディー・カーティーPaddy Carty や キャサリン・マケヴォイCatherine McEvoyと同じように、あなたのフルートの演奏はメロディックですね。
最近の演奏家の多くはメロディーよりも装飾に力を入れているように思えます。
そのため、メロディーが不明確になってしまうこともあります。
あなたはどうしてメロディックなスタイルを好まれるのですか?

周りにフィドル奏者がいっぱいいると、フィドル演奏の影響を色濃く受けることになります。
メロディックな影響はそこから来たのでしょう。
フレージング、音の長さが必ずしも均等でないこと、レガート。
そういうのを聞いて育ったのです。

もし私がスライゴーかリートリムにいたなら、ほかのフルート奏者の影響を受けたかもしれません。
そういった土地にいたら別の面が出てきたでしょう。
でも、私はそういったスタイルには馴染みがなかったのです。

いずれにしろ私のやり方じゃない。
そういったタイプのパワーで演奏することは私の個性ではありません。
つまり私にはスタミナはあるがもっと控えめなのです。

エネルギーはあります。
しかしフルートを吹くとき、私はフィドルのことを考えます。

時々フィドルを弾いてみますが、フィドルはあまり上手ではありませんし、普通は家族が家にいないときに弾きます。
私のレパートリーの多くはボビー・ケイシーBobby Casey、 P.J.ヘイズP.J.Hayes、 パディー・キャニーPaddy Canny、 Peter O’Loughlinから学んだものです。

私がもっとも影響を受けた奏者を一人挙げるなら、パディー・カーティーPaddy Carty です。
というのもパディーはレガートを多用する演奏をするからです。
セッションではまた違うと思いますが、バンジョーのミック・オコナーMick O’Connor と作ったCDでは彼はメロディックな演奏をし、私はそれに感動しました。

フルート製作でも優れた仕事をしていらっしゃいますね。
あなたが作っているフルートについて聞かせてください。
古いモデルの複製ですか?それとも自分で工夫したデザインですか?
あなたが求めているのはどういった特質ですか?

最初始めたときは趣味だったのです。
機械工場を持っていて、父がしてきたように、来る日も来る日も、機械やら金属やら溶接やらの仕事をしていました。
父の仕事を継いだのです。

フルート製作は、最初は片手間の遊び半分だったのですが、すぐに夢中になりました。
機械の仕事を減らして、ますます多くの時間をフルートの試作にかけました。

最初は古い楽器、ルーダル&ローズやプラタンのコピーを作りました。
でもすぐに、古い楽器の多くはチューニングに問題があると気がつきました。
F#は第一オクターブから音が外れていて(訳者注:低い)、Aは少し高いのです。

どうして音の外れたフルートを複製するのかって聞かれたら、答えようがありません。
今作っている楽器はぴったりA=440です。
第一オクターブも第二オクターブも力強い音で、完璧に音程が合っています。

私のフルートは伝統的アイルランド音楽のために特化したものです。
もし初期のクラシックの音楽を演奏したり、第3オクターブの音を多用したりしたいのなら、デザインし直さなくてはなりません。

また、正しい音程にもこだわっています。
音程が正しければ、唇を硬くしなくても、気持ちのいいアンブシュアを得ることができ、同時に、一気に駆け上がるのも駆け降りるのも自由にでき、低いDもよく響きます。
みんなが望むものです。
今のところこのレベルまで到達していると思います。
それについてはいい感触を得ています。

私は普段自分のフルートを吹いていて、昨夜のリサイタルでも自分のフルートを吹きました。
(1999年、ウィリー・クランシー・サマースクールでのフルート&ホイッスル・リサイタルのこと)

アフリカン・ブラックウッドについては、将来手に入るのか、環境問題として大丈夫なのかという危惧が広がっています。
どう思いますか?
アフリカン・ブラックウッドの供給は近い将来、難しくなってくるのでしょうか?

ええ、アフリカン・ブラックウッドの供給は難しくなるでしょう。
今日とか明日とかは言いませんが、いずれは問題になるでしょう。

フルート製作者は熱帯雨林に影響を与えない素材を使い始めるべきでしょうか?

人工の素材は使いたくはありません。
使おうという製作者もいますが、もし人工素材を使わなければならないのなら、私はフルート製作をやめて、機械工場の仕事に戻ります。
柘植は好きですし、在庫もあります。
でもなぜだか、柘植はあまり好まれていません。
柘植はオプションとして持っておきます。

ロジャー・シャーロックRoger Sherlock は柘植のフルートを吹いていて、とても美しいメロウな音色です。
人々が求めているのは力強さと音の大きさです。
それは柘植のフルートでは難しいのです。

1、2回、紫檀を使ったこともありますが、もうひとつでした。
それに紫檀は臭いがあるのです。
楓も使ってみましたが、少しやわらかすぎます。

アメリカアフリカン・ブラックウッド(コークスウッド)は…でも、これは高価すぎます。
アフリカン・ブラックウッドが手に入らないような時代になったら、ほかの人と同じように私も見直しを迫られるでしょう。

初心者の方には、どのようなフルートを薦めますか?
キーなしフルートがいいですか?
それとも、初めから6キーか9キーのフルートで、キーの扱いに慣れるほうがいいですか。

もちろん、キーなしフルートです。
もし子供とか、十代の若者のことを考えているのなら、フルートの重さも考慮しなくてはなりません。
6キーのフルートは11歳、12歳の子供には重くて扱いにくいものです。

どっちみちスライゴーやリートリムのフルート奏者の多くは、キーは使いませんし。
あの地域ではキーを使うのは男らしくないんです。
私は使いますけれど、多くのプロは使いません。

私のフルートにはオプションの低いCやC#もつけません。
そういう仕組みが好きじゃないのです。
扱いにくいと思います。
見栄えはきれいです。
でも、アイルランド音楽には、そのようなものは実用的じゃないのです。

うるさいし、キーを押すのに結構力がかかります。
アルバムのレコーディングをしたとき、私はフルートのキーを外しました。
というのも、私は小指でキーを何度も押しましたが、(そのノイズは)デジタル録音では目立ってしまうからです。

初心者に何か一般的なアドバイスはありますか?

いい音を出すためには引き締まったアンブシュアが必要です。
トーン練習はほかの事と切り離して、個別にする必要があります。
ロングトーンの練習をして、納得のいく音が出るまで、アンブシュアを調整してください。
自分の演奏を録音してください。
ジグやリールを吹いて、聞きなおしてください。
そうすれば、いい音を出しているかどうか、すぐにわかるでしょう。

フルートは、音色の質を自分でコントロールできる数少ない楽器のひとつです。
ルーダル&ローズ(訳者注:アンティークのなかでは最高の楽器である)を手に入れることができるかもしれません。
でも、アンブシュアが悪ければ、ひどい音になってしまいます。

アイルランド音楽のあらゆる面は、それぞれ別個に練習しなければなりません。
夕方1、2時間リールを練習してもいいプレイヤーにはなれません。
フルート演奏のあらゆる面を練習しなければならないのです。

私のクラスでは、身体的なことも強調します。
横隔膜の使い方、体力、持久力、どうすれば、3時間、4時間吹き続けてもぶっ倒れないか。
横隔膜を鍛えるために、ひとつの音をできる限り長く吹いてください。
シャスキーンでは、私たちは3、4時間ぶっ続けで演奏します。

もし、あなたがクラシック・フルートから木製フルートに転向したのなら、もっと穏やかに演奏することに慣れているのではないでしょうか。
木製フルートはまったく違う楽器なのです。
演奏するのにもっとエネルギーを必要とします。
ベーム式金属フルートのように容易に反応してくれないし、とにかくもっとパワーが要るのです。
もっと、けしかける様に吹く必要があります。

装飾は個別に練習してください。

まず正しい指使いで正しいテクニックであることを確認してください。
最初はゆっくり練習して、だんだんスピードを速めてください。

ジグにはあまりロールを入れてはいけません。
ジグにロールを1つ入れると、それは1小節の半分を占めて、曲の基本的な形が見えなくなってしまうからです。
まあ、好みの問題ですが。

クランはいろいろな意味で避けたほうがいいと思います。
出来不出来の差が大きいのです。
バグパイプのテクニックで、とても難しいのです。
練習の時うまくできても、本番では…というのは、よくあることです。

レコーディングでは、編集によってクランを入れることもあるかもしれませんね。
とにかく、本当にやりたいときにうまく出来ないテクニックなのです。

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