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ケルトの笛 インタビュー

ジャック・コーエン(Jack Coen)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。英語翻訳:村上亮子
 
 

ジャック・コーエンと過ごした1週間のノート

残念なことに、2012年にジャック・コーエンが亡くなられたことをご報告しなければなりません。
FMクレアの2009年のキッチンセッション・シリーズにジャックのインタビューがあります。

「常に自分よりも上手な人と一緒に演奏してください。そうすることで上達できるのです。」
―ジャック・コーエン

1997年、私はジャック・コーエンのフルートクラスを受講し、1週間ジャックと生活を共にしました。
ニューヨークのイースト・ダーハンで行われたアイリッシュ・アート・ウィークでのことです。

ジャックは多忙な人で、面会を求める人も多く、座ってきちんとしたインタビューをすることはできませんでしたが、私の受講ノートには彼の言葉や教えてもらった様々な情報が残っています。

ジャック・コーエンはゴールウェイ州のウッドフォードに生まれ、1950年代後半に合衆国に移民しています。

ティペラリーのアコーディオン奏者の故パディー・オブライエン Paddy O’Brien と、フィドルの故ラリー・レディカン Larry Redicanとトリオを組んで、オールアイルランドのトリオ部門で優勝しました。
Green Fields of America (1978年にフィラデルフィアで結成されたアイルランド伝統音楽のバンド)のメンバーで、1991年にNational Endowment of the Arts (文化基金)のNational Heritage Award (伝統芸術のアーティストに与えられる最高の賞で、これは日本の人間国宝のような終身の栄誉にあたります)を受賞しています。

コンサティーナを演奏する兄弟のチャーリー・コーエン Charlie Coenと作ったアルバム”The Branch Line”(グリーンレネット)やマーティン・マルヘアー Martin Mulhaire、シェイマス・コナリー Sesmus Connolly、フェリックス・ドーラン Felix Dolan と作った”Warming Up” (同じくグリーンレネット)で、彼の演奏を聞くことができます。

2001年には、息子のジミーがギターで伴奏してフルートのソロアルバムも出ました。

ジャックの膨大な曲のストックの中には今日では滅多に演奏されなくなったものもあります。
また、ファーザー・ケリー Father Kelly、トミー・ウェレン Tommy Whelan、パディー・オブライエン Paddy O’Brien、ショーン・ライアン Sean Ryanのような人の音源から直接覚えたものも多くあります。

ジャックは長年フルートを教えていて、暖かくウィットに富んだ人柄は、生徒や多くのミュージシャン仲間に慕われています。

70歳代にしてかくしゃくとし、演奏は力強く、技術と精巧さにあふれ、演奏する1曲1曲に語る物語があり、素晴らしい記憶を誇っています。

彼はメアリー・バーギン Mary Bergin、ウィリー・ケリー Willie Kelly、ビリー・マクミスキー Billy McComiskeyなどのよく知られた音楽家たちの尊敬を集めています。

ジャックはあまり装飾をつけず、メロディーが際立っています。
彼は自覚してこういう選択をしているのです。
装飾を使いすぎると曲は破壊される、つまり元の形がわからないほどになってしまうこともあると彼は信じています。

ジャックの演奏を聞くと、聞きなれた曲でもまた違った味わいがあります。
Earl’s Chair とFather Kellyのよく知られた2つのリールについて、ジャックは元々の曲に忠実に演奏していると言っていますが、私は意表をつく美しい旋律の流れに心を打たれました。
もしあなたが多くの装飾を使う傾向があるのなら、一度ジャックの演奏を聞いて、よりメロディーを重視したスタイルを試してみるといいと思います。

このような演奏をするには技術と音楽性がさらに必要になってきます。

私にとってジャックのレッスンは自分自身のフルート奏法を見直す契機となりました。
今では、自分がメロディーの中の難しい部分を避けるために装飾でごまかしていたということがよくわかります。

ジャックの好みは、今の標準からするとかなり遅いペースです。
パブセッションの速い演奏にも十分対応できるのに、完璧に拍を刻み、ゆっくりとメロディーを味わうように演奏しています。

彼の演奏は、若いプレーヤーがよくするような速くて、派手で、人目を引くような演奏の対極にあるものです。

力のある音と、強いリズムと、上質な優雅さがあって、エキサイティングで美しいと思います。
それらの特質は最近よく聞くアグレッシブな演奏には欠けているものです。

ジャックは主にホィートストーン(Wheatstone)の8キーのフルートを吹いていますが、最近はアンティークのドイツのフルートも吹いていて、どちらのフルートでも、多くの倍音を含む強い伝統的な音を得ています。

今日市場に出ているほとんどのフルートを吹いたことがあり、特にブライアン・バーン Bryan Byrneやパトリック・オーウェル Patrick Olwellのフルートは高く評価しています。
受講生が持ってきたM&Eのプラスティックのフルートには感銘を受けたようで、私も吹いてみて、音色が素晴らしく低音が力強いと思いました。

ジャックのレッスンでのアドバイス。

高いDを吹くとき、ほとんどの人は一番上の指穴を開けるが、それは必要ない。
それでは余分な動きをすることになってしまう。
低いDと同じ指、つまり、すべての穴をふさげばいい。
私自身(インタビューアー)は高いDの時、一番上の穴を開けたほうが、ほんの少し余計にフルートが「歌う」ような気がするが、それはゆっくりした曲やエアーの時に感じられるだけで、ダンス曲の場合は問題にはならないと思う。

高い音を吹く時には、低音よりも「呼吸をゆるめ」、楽に吹くということを覚えてほしい。
フルートはホイッスルとは違う。
強く吹くことで第2オクターブの音を出すのではない。
そうではなくて、アンブシュアを狭くするのだ。
ジャックの演奏では、特に下のDに降りていく時、第一オクターブは第二オクターブより少し大きく聞こえる。
オクターブについて言えば、今日の多くの奏者は低い音を強く吹きすぎるので、「曲がすべて1オクターブ上に上がってしまったみたいだ」とジャックは嘆いている。
ジャックの見解では、それがメロディーを台無しにしてしまう。

装飾について:
「指をむちゃくちゃに動かしてはいけません。」

呼吸について:
「四分音符では息を吸ってかまいません。息を吸わなければならないわけではないが、必要なら息を吸っていいのです。」
また、Aパート、Bパートの最後から2つ目の小節で息を吸うのが賢明であるとも言っている。
そうすれば、最後まで力強く吹くことができる。

曲を覚えるということについて:
「1週間に新しい曲を2曲以上は多すぎます。完全に覚えることはできません。」
ジャックが言うには、多くの人がたくさんの曲を覚えているように見えるが、実は中途半端に覚えているに過ぎない。
このワークショップでジャックは13曲教えてくれたが、「本当に理解して、上手に吹けるようになるには、何年もかかるでしょう。」と言っている。

「音は正確に出しなさい。あいまいにしてはいけません。」

「いつも自分よりも上手な人と一緒に演奏しなさい。そうすることで、上手になれるのです。」