ここではケルト音楽(ここでは主にアイルランド音楽)で使われる楽器をご紹介します。
ケルト音楽に興味があるけど、何をはじめようか迷い中……という方や、どんな楽器があるんだろう? と思っている方は、ぜひこちらのページでざっくりとした種類をご確認ください!
アイルランド音楽を代表するかわいらしい縦笛、ティン・ホイッスル。
安価で買いやすく、誰でもカンタンに演奏が始められ、携帯性にすぐれており、アイルランド音楽で広く愛用されています。ピアノの白鍵だけのような7音階の笛で、たくさんの伝統曲が演奏できます。
ティン・ホイッスルは様々なキー(サイズ)がありますが、中でも低音のティン・ホイッスルは「ロー・ホイッスル」といいます。
フルートと聞いてすぐに思い浮かぶのは、銀のフルートでしょう。アイルランドで演奏される木製のフルートはその先祖にあたる楽器で、19世紀イギリスのフルートをモデルに作られています。
指孔が開いただけのストンとした外見で、その温かみのある音色と運指のシンプルさを生かした演奏法が特徴的です。
ケルト音楽といえば、バグパイプがとりわけ有名です。とくにスコットランドのグレート・ハイランド・パイプスが知られていますが、他にもアイルランド、ウェールズ、ブルターニュなどケルト各地の独特なバグパイプが演奏されています。
バグパイプは1000年以上も前から演奏されていたと言われており、笛と袋が合体したから「バッグ&パイプ」というネーミング。
一度聴いたら忘れられない独特な音色です。
アイリッシュ・ハープ、ケルティック・ハープ、フォーク・ハープ、レバー・ハープ……とも呼ばれ、通常クラシック音楽などで使うグランド・ハープより小柄で携帯性に優れています。
ハープは特に古い時代からアイルランドやスコットランドで使われていた楽器です。
アイルランドの伝説や物語に数多く登場し、ギネスビール(黒ビール)のシンボルにもハープが刻印されています。かつて吟遊詩人という物語を語り継ぐ人がおり、その人たちが物語を語る時の伴奏に使われていたのが、ハープだったそうです。
1800年代前半~中盤にかけて開発されヨーロッパで一大ブームを巻き起こした、一風変わった形の楽器、コンサーティーナです。
アコーディオンと同じように、両手で持って蛇腹を伸ばしたり縮めたりすることで風が送られ、音が鳴る仕組みになっています。アコーディオンよりもかなり小さめで軽く、女性に人気があります。
今では他の楽器と変わらないお値段になっていますが、実は開発された当初は激安楽器のひとつで、お手軽なサイズも手伝って老若男女問わず飛ぶように売れ、一気に普及したそうです。
コンサーティーナよりもさらに大きな音が鳴るということで登場し、人気を博したのがアコーディオンです。
アイルランド伝統音楽で使われることの多いのは、ボタンだらけのボタン・アコーディオンというモデルです。(ピアノ鍵盤のなら知ってる! という方も多いかと思いますが、そちらもピアノ・アコーディオンと呼ばれています)
アイリッシュに人気のボタン・アコーディオンですが、元々はボタンがちょっとしかない、かなりシンプルな「メロディオン」と呼ばれるモデルが広く演奏されていたそうです。ですが、曲の多様化に伴い、演奏の幅が狭いことから「ボタン多いバージョン」へ移行していったといいます。
アイルランド音楽の中でもとりわけ有名な楽器のひとつがバウロンです。 とてもシンプルな構造で、片側だけに皮が張られた手持ち太鼓は、周りは木の枠、後ろにはわたした木があり、そこを片手で持ち、もう片方の手でビーター(右下の棒)を使って、あるいは素手で演奏します。
バウロンはアイルランドでは古くから演奏に使われていたそうですが、それ自体の用途は、割と最近まで、ただの生活用品だったんだそうです。
食事や飲み物などを運び終えて腰を下ろしたあとに、そのお盆を叩いて使っていたのがバウロンの元祖、なんて言われています。
元々、ヒョウタンの実を削った楽器で、1600年代にはアフリカなどで演奏されていた記録が残っているそうです。
その後、アフリカから連れてこられた奴隷の人たちによってアメリカに持ち込まれ、一気に広がったという歴史を持っています。
アメリカでカントリー音楽とケルト音楽が融合した「ブルーグラス」と呼ばれるジャンル音楽では必ず演奏される楽器のひとつですね。
ちなみにバンジョーが初めてアイルランドに紹介されたのは1845年、アイルランド系アメリカ人が率いるグループによって、そしてアイルランド音楽の中でバンジョーを使った最初の録音は1920年代アメリカで、という様にアメリカからの逆輸入としてやってきた楽器だったようです。
古くは1600年代にはすでにアイルランドでフィドルを演奏していたという記録も残っているそうです。アイルランド音楽の歴史ではハープ、イリアンパイプのブームがひとしきり去った頃、フィドルが盛り上がったんだそうです。
ちなみに、クラシック音楽家はヴァイオリン、伝統音楽の演奏家はフィドルと呼び分けていると言われています。
メソポタミア文明の頃に誕生したという説もある歴史の長ーい楽器ですが、現在アイリッシュ音楽にも使われるブズーキの形になったのは、20世紀後半ギリシャでのことなのです。
アイルランド移民としてアメリカに移り住んだ音楽家たちが、世界のいろいろな文化・音楽を取り入れていった中にブズーキもありました。さらに、このブズーキの音色をアイリッシュの奏法にフィットさせるべく、それまでのアボカドを半分に切ったような形だったものを、ギターのような両面が平らな形状に変化させ、「アイリッシュ・ブズーキ」が誕生したのです!ぱちぱち
このように、アメリカではさまざまな文化の融合を経験し、それがアイルランドに逆輸入される形で入り、新たな風を巻き起こしたのです。
古くはリュートの親戚みたいな楽器「マンドーラ」が起源とされている、イタリアを代表する弦楽器のマンドリン。
そんなマンドリンがアイルランドの伝統音楽に紹介されたのは1960年〜70年代と言われています。
こちらの楽器もバンジョーやアイリッシュ・ブズーキのように、アメリカに渡ったアイルランド移民によって発見され、アイリッシュ音楽に適した奏法が形作られながら、アイルランドに逆輸入され、よりアイリッシュ、とりわけダンス音楽に適した形に発展していきました。
ケルト音楽の中でも、とりわけハードルが低いことで(店長の心の中で)有名なのが、こちらのスプーンズ(とボーンズ)です。なぜって、楽器がスプーン、もしくは骨(ぼーん)なんですから、うまくいけばその辺りにあるもので始められるんです!(まあ、日本の家で牛のあばら骨が転がっていることはあまりないかもしれませんが)
こちらの楽器は1本のスプーン(もしくは骨)を親指と人差し指の間に挟み、同じ手の中指と薬指の間にもう1本のスプーン(骨)をはさみます。そして、手を揺らして各々を当てることで、カチカチといった音を鳴らします。言葉だけで説明すると、子どものいたずらに思えるかもしれませんが、うまく使うと、まさにアメージング!な打楽器になるのです。ぜひ動画で見てみてくださいね。(YouTubeでSpoons、Bonesと検索してみてください)