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日本のケルト音楽

 

tricolor 4th アルバム「旅にまつわる物語」

 
  • 旅にまつわる物語 / tricolor

    アイルランド音楽の楽器や演奏スタイルをベースにしたオリジナル音楽を創作するtricolor。 じっくりと聞かせる曲、心にしみる演奏は、あらゆる世代の音楽ファンの心をひきつけるでしょう。 初めてふれるアイルランド/ケルト音楽としても、大変お勧めできる1枚です。

    2,850円

〈曲目〉
1. 5 steps
2. trip note
3. Letter From Barcelona
4. A West Ocean Waltz
5. The Accursed Kerryman
6. Will You Come Home?
7. Bridget Cruise
8. First Pint
9. Railway Polka
10. August to August
11. last autumn
12. はなむけの詩

[guest]
梅田千晶(Harp)
野口明生(Uilleann Pipes,Whistle)
渡辺庸介(percussion)from Drakskip
 

プロフィール


緑で囲まれた小さな島国アイルランドの日常から生まれた音楽と、その伝統音楽への共感を下敷きにしたオリジナル曲を、3人それぞれの色を混ぜながら演奏している。
様々な規模の音楽フェスや野外イベントから、カフェや古書店、電車内ライブや結婚式での演奏、さらにはアイルランド大使館関連の公的イベントまで、「場所と人」「人と人」の出会いやつながりを大切にし、独自の活動を展開中。

2009年4月、お花見パーティでの演奏をきっかけに結成。
その後テーマの異なる、しかしサウンドはどこまでもtricolor感たっぷりのCDアルバムを5作発表。
2014年NHK連続テレビ小説「マッサン」の楽曲演奏を担当し注目を集める。
2016年11月より、NHK Eテレ「シャキーン!」にて、森ゆにと共作での書き下ろし曲「じかきうた」が放映。映像にも出演する。

〈メンバー〉

中村 大史 accordion,bouzouki, guitar,whistle & vocal
中藤 有花 fiddle & concertina
長尾 晃司 guiter,banjo & mandola

ホームページ
 

笛屋さんからの推薦コメント


アイルランド音楽の楽器や演奏スタイルをベースにしたオリジナル音楽を創作するtricolor。
じっくりと聞かせる曲、心にしみる演奏は、あらゆる世代の音楽ファンの心をひきつけるでしょう。
初めてふれるアイルランド/ケルト音楽としても、大変お勧めできる1枚です。  

「旅にまつわる物語」レビュー


日本人3人組のケルト音楽ユニットtricolorによる4作目のアルバム「旅にまつわる物語」は、聴けば不思議と優しい空気をまとわせてくれる、柔らかな聴き心地の作品が詰まっている。
tricolorは2016年9月時点で5枚のアルバムをリリース。
最新作は2016年4月20日に発売された「うたう日々」で、こちらは歌もの、オリジナル曲が中心に収録されている。
「旅にまつわる物語」が器楽曲メインであるのとは対照的だが、tricolorのふわりとあたたかなサウンドは一貫しており、聴く者にやすらぎのひと時を与えてくれる。
今回紹介させていただく「旅にまつわる物語」は2015年3月15日に発売されたもので、前作「Good Morning, Liffey」から2年ぶり4枚目のアルバムだ。
ジャケットはイラストレーターの小池アミイゴ氏が手掛けている。
小池氏の作品は黒鉛のシンプルな線と抑えた色数による少しせつない上品な表現が印象的だが、「旅にまつわる物語」のジャケットでは、海岸の三人組が静かに歩き出す様子を桃色から水色の絶妙なグラデーションを背景に艶やかに描いている。

1曲目、アコーディオンの重厚でおおらかなベース、バンジョーのちょっとおどけたかわいらしさが牧歌的なサウンドでアルバムの最初を飾る。
お昼ちょっと前のやさしい日差しのような、あたたかいフィドル。
踊り出すかのようなタンギングが表情豊かなホイッスル。
まさに旅の始まりに相応しい、希望あふれる一曲だ。

3曲目は、とある休日の朝、ふと雨音で目を覚ましカーテンをすこしめくると、今日は静かな雨が降っている。まるでそんな出だしである。
ギター、フィドル、アコーデイオンの静かな旋律が終わりをつげるとき、次第に雨はあがる。
そう、午後からだって素敵な外出はできる。
今日は駅まで自転車で行って、それからどこまでの切符を買おうか。できるだけ遠くへ行ってみたい。
同じメロディが様々なアレンジで重なり合いながら物語は新しいページへ。
よりドラマチックにアコーディオンの重音とパーカッションが絡み合い、最後はささやかな鈴の音で終わる。

アコーディオンからホイッスル、フィドルの低音と旋律が徐々に厚みを増していった先に、アコーディオンが再び先陣を切り新たな道を示す6曲目。
ロー・ホイッスルの豊かな丸い音の粒とふくよかな長音のビブラートが花を添える。

8曲目。
賑やかなバンジョーのイントロに、湧き上がる衝動を抑制しつつも徐々に放出してゆくアコーディオンの重低音。
パイプが加わり、抑えられていた楽しさいっぱいの旋律が顔を出し、いまにも踊り出してしまいそう。
ダンスチューンはリズムを変えて、楽器たちの一体感がより深まっていく。

9曲目はパーカッションのダイナミズムが印象的な楽しさあふれるポルカ。

10曲目はギターの静謐なメロディにアコーディオンの重音がダイナミズムを添える。
ギターが伴奏にうつると悲しくも情熱的な新しいメロディをフィドルが奏でだし、ロー・ホイッスルがさらに情緒的に音楽を展開させる。
アコーディオンの重音がさらに広がりを見せたかと思えば、F調独特の爽やかさに曲の冒頭から受け継がれる静かな情熱が溶け出して終わる。

そして11曲目、まるで洋風の居間で、暖炉の火を眺めているかのような冒頭。
バンジョーとフィドルのユニゾンにギターの甘い伴奏。
次第にパイプとパーカッションが音楽に賑わいを添える。
みんなでホットミルクをふうふう冷ましながら談笑する、出発前のひとときのような。
ハープのきらめきは星の煌き。
ゲストも含めたアルバム参加者全員で送る大団円である。

そして、これまでの旅路を静かに振り返るかのような12曲目。
ゆったりとした揺らぎの中で最後ひっそりとギターのつぶやきが締めくくり、旅の余韻に浸る。

 

音楽評論家 大島豊による「Tricolor BigBand」レビュー

  • Bigband / tricolor

    オーケストラでもない、ジャズのビッグバンドでもない、tricolorではないけれどやっぱりtricolor、それが tricolor BIGBAND!

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このアルバムの企画を聞いたとき、いささか驚きました。このバンドの音楽は普段着の、あるいは家での毎日の食事に通じるところがあって、何か凄いことをやってやろうという気負いも衒いも無い一方で、良い素材を揃え、念入りに手をかけて仕立てたり、料理したりして、質の高いものを生み出すのが本質だし、そこが魅力だと思っています。わが国のケルト系ではこれまでで最大の人数を揃えたビッグバンドというのは、それとはいわば対極にある、豪華なドレスで着飾った宴会に思えたのでした。

けれども、これはやはり筆者の勘違いだ、と今になってわかります。確かにこのアルバムのジャケットや、PV、あるいはレコ発ライヴのステージなどでは、手の込んだデザインと衣裳も見られます。けれども、それは宮廷での饗宴というよりはハウス・パーティー、とりすました社交の場ではなく、気心の知れた仲間たちのアトホームな集まりなのでした。

改めて振り返ってみれば、前作《うたう日々》ではゲスト・シンガーを4人迎えて、その世界を大きく膨らませていました。ビッグバンドへの布石はあそこですでに打たれていたのでしょう。

このアルバムのプロジェクト自体、1年以上前から始まっていたといいます。ここに参加しているメンバーは、全員が集まったのは今回が初めてではあるものの、いろいろな形、組合せで、tricolor のメンバーが音楽をともにしてきた人たちです。中には録音当日におたがい初めて顔を合わせた人たちもいたそうですが、個々には tricolor と深くつながっていました。また、最終的な形におちつくまでに、人数を変えて、いろいろライヴで試してもきたそうです。様々な条件、スケジュールやアレンジやの多くの条件から、アルバムを録音した時点でおちつくところにおちついた、というのが、ここに登場しているメンバーというわけ。

こうして出来上がったこの録音は、人数、編成、そして音楽において、類例の無いものになりました。ゲストやサポートなどでトータルではこれを超える人数がクレジットされている録音はあります。けれども13人が一斉に音を出しているのは初めてです。アイリッシュで使われる楽器は一通り揃っていますが、わが国ではバンジョーが加わるのはまことに珍しい。それにニッケルハルパがこういうところに加わるのは、海外でもありません。多人数バンドによる音楽ということでは、たとえばケイリ・バンドもあるわけですが、これはダンスの伴奏ではありません。

多人数でやりたいという欲求は音楽の土台に仕込まれているベクトルなのかもしれません。すべての音楽がそうだというのではないでしょうが、少なくともアイリッシュに代表されるケルト系の音楽はどれも基本的に備えていると思われます。スコットランドには Unusual Suspects やその前にパイプ・バンドがありますし、ブルターニュには Bagad Kemper を筆頭とするバガドがあります。これらは数十人から、時には100人近い大所帯になります。おそらくは、この類の音楽をやっていると、大勢でやりたくなるのでしょう。

多人数でやるメリットは単に音量が大きくなるだけではありません。それとともに中身の詰まったヴォリューム感が出るようになります。アンプによる増幅でも音は大きくなりますが、塊としての実体がやってくる感覚は不可能でしょう。合成音をいくら重ねてもやはりムリ。肉体を持ったミュージシャンが多数いて、一斉に楽器を鳴らすことでしか実現できない感覚です。クラシックの管弦楽は、時代が下るとともに規模が大きくなっています。それにジャズのビッグバンドやスティールドラムのビッグバンドも、そうした量感を得るのが第一の目的です。

そして、それはリスナーにとって以上に、ミュージシャンたち自身が愉しいものなのでしょう。アルバムレコ発ライヴのステージでは、ミュージシャンたち自身が実に愉しそうで、顔には自然な笑顔が浮かんでいました。実際、メンバーの中村大史さんは2曲やったところで、「2曲で満足しちゃいました」と言ったものです。大勢の仲間と一緒に音を出す、音楽を演奏する。アイリッシュ・ミュージックのセッションはその欲求が最も原初的かつ洗練された形で現れたものでもあります。

みんなで一斉にユニゾンで演奏する愉しさは格別ではありましょうが、愉しいのはそれだけではない。というのが、このアルバムの一つの柱です。アレンジを念入りに施し、各々に光が当たり、おたがいに支え、また支えられる役割を交替してゆくのもまた愉しからずや。多人数でやることのもう一つのメリットがここにあります。複雑で変化に富んだアレンジが可能になります。全員でユニゾンもできれば、全員が各々異なるメロディを奏でることもできます。

ですから、これは本来は生のライヴで初めて実感をもって体験できるものであります。録音では、物理的な制約があって、本来の音のヴォリューム感、膨らみ、量感を感じるのは、不可能ではないにしても、ハードルはかなり高いものがあります。

とはいえ、こうしたバンドが常時活動していて、全国津々浦々をツアーしてまわっているという理想世界には、我々は残念ながら住んではいません。そこで、目一杯想像力をたくましくして、その不足を補いながら、この録音を聴くことになります。

そうして耳を傾けてみれば、今度はライヴでは気がつかない細部が聞えてきます。ユニゾンでの音の重なり方。リピートでの編成の違い。パーカッションの細かい芸。曲のつながり、ビートの転換での呼吸。ギター・カッティングとダブル・ベースとパーカッションの役割分担。

そして楽曲の良さ。スコットランド産の楽曲が多いだけでなく、中村さんの作曲になる[10]にもスコットランドの響きが聞き取れるのは、興味深いところですし、スコットランドも大好きな筆者としては、素直に嬉しい。レコ発ライヴではオープナーとして演奏されて、体を浮かせてくれた[09]はその代表。[05]も佳曲で、これは当然ながら、アイルランドでは生まれないでしょう。ここでのピアノの響きはアルバム全体のハイライトの一つです。

冒頭、長尾さんの〈Across The Border〉は、ジブラルタル海峡を初めて渡る直前、彼方のアフリカとイスラーム圏に想いを馳せて作った由。そう聞くと、テンポが上がる後半に燕たちの飛びかう様が浮かんできます。

さらに、ここには歌があります。tricolor が音楽を担当した、南島原市の観光PR用ショートムービー『夢』の挿入歌〈夢の続き〉と、同じテーマを角度を変えてうたった〈うたかた〉。後者では歌そのものも然ることながら、ユニゾンで奏でられる間奏での、アイリッシュでは普通使われない音階にぞくぞくします。

観光PR用とはいえ、『夢』は独自のストーリーを持った、1篇の映画として見て面白い作品です。実際、観光PR用短篇映画の国際コンクールでグランプリを受賞してもいます。〈夢の続き〉はその中で印象的な使われ方をしていますが、この曲自体、大ヒットしてもおかしくない名曲でしょう。ぜひ、『夢』を見て、この歌にこめられたストーリーと想いを確認してください。その上で聴くと、また新たな切実さをもって響いてくるはずです。

とはいうものの、最大のハイライトはやはりラストを締めくくる[11]。Shannon Heaton のペンになる〈Anniversary〉は、シャロン・シャノンがかの〈Mouth of the Tobique〉メドレーの1曲めにやっているのが印象的な、心浮き立つ曲。だんだんと楽器が増えていって、フル・バンドになったところで、もう一度トリオにもどって始めるその次が曲者。これはさらにその次のリールのテーマになっている〈パッフェルベルのカノン〉をジグに仕立てたもの。初めてこのメドレーを録音したとき、中藤さんの希望で、長尾・中村両氏がアレンジしています。これがはさまるために、次のリールの爆発がより大きくなります。もう一度、楽器がだんだん増えてゆき、「原曲」のマーティン・ヘイズのヴァージョンよりも、より華やかに、祝祭の感覚が膨らんでゆきます。これを聴くたびに、ステージ一杯のミュージシャンたち、いや客席でも楽器を持った人たちが大勢いて、会場全体が湧きたっている光景が浮かんできます。まさにビッグバンドの醍醐味ここにあり。ああ、このまま、終らずに、いつまでもいつまでもこの演奏が続いていってくれないものか。

これは時代を画するアルバムです。現在の、わが国におけるアイリッシュ、ケルト系音楽演奏の隆盛は、ほぼ10年前に始まっていますが、10年を経て、こういう音楽が生まれるところまで来たのです。これだけ多数の、また多彩な楽器のミュージシャンたちが、セッションではなく、しっかりと細部まで組み立てられた形で、1個の有機体として、この種の音楽を演奏したのは、初めてのことです。ジャズの優れたビッグバンドと同様、隅々までアレンジされていながら、自由に伸び伸びと演奏されています。

もう一つ、おそらくより大事なことには、ここには強力なリーダーがいません。アレンジも、参加しているミュージシャンに任せたり、全員で相談したり、あるいはキャッチボールをしながら進めたそうです。最終的なまとめは tricolor の3人がやっているにしても、そうしたコントロールは表には出ていません。クラシックのオーケストラは言わずもがな、世のビッグバンドはいずれも誰かがカリスマ的な「指揮者」となって全員を引っぱる形です。わが国を代表するビッグバンドである渋さ知らズもはにわオールスターズも、あるいはパノラマ・スティール・オーケストラも、渦の中心は明瞭に存在します。ここにはそういう存在がありません。参加している全員で作りあげている。大きな一つの渦よりは、たくさんの渦が踊っているけしきです。あるいはアイリッシュ・ミュージックに備わる基本的性格のなせる技かもしれませんが、これも画期的なことです。

最前衛を突っ走る人たちではなく、一見、どちらかといえば保守的にも見える「普段着」バンドの tricolor からこういう音楽が生まれたのを見れば、真にラディカルな試みは、「常識はずれ」なところよりも、毎日の暮しの質を深めてゆくところから発するとも言えましょう。

 
  • B&B / tricolor

    八ヶ岳のアイリッシュパブ「BULL&BEAR」で録音した2ndアルバム。

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  • Good morning, Liffey / tricolor

    8つの楽器と、そして歌と。日々の生活を重ねるように、音が編まれたtricolorの世界。おだやかながら心が弾む、そんなうれしい朝を迎えた音を集めたNew Albumは、アイルランドの伝統音楽や歌、そしてオリジナル曲も混ぜながら、自然に囲まれた八ヶ岳のアイリッシュパブでレコーディング。

    2,850円
  • うたう日々 / tricolor

    素敵な日々に、よろこびの音楽をtricolorが贈る5th“ヴォーカル”アルバム。

    3,100円