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「ケルト」という言葉を耳にしたことはありますか?
ケルト人、ケルト紋様、ケルト音楽……。
ケルトとは一体何でしょうか。
ケルト人とは、青銅器時代の末期にボヘミア周辺に誕生し古代のヨーロッパを席巻した、インド・ヨーロッパ語族ケルト語派の言葉を話す共通の文化や宗教を持った集団です。
ケルトの語源は、古代ギリシア人がアルプス以北の異言語の部族をまとめてケルトイと呼んだことに由来すると考えられています。彼らは自然を崇拝する多神教を信仰し、輪廻転生や精霊の存在を信じ、文字を持たない代わりに渦巻紋様や組紐文様を駆使した装飾美術を有していました。
ケルト人は文字を使わなかったために歴史的にも不明な部分が多く、彼らがどんな音楽を奏でていたかについては手がかりがありません。そのため、正しい意味においてのケルト音楽は存在しません。それにも関わらず、ケルト音楽というカテゴリーは国内外を問わず認知されています。
このケルト音楽というカテゴリーは近年、音楽産業によって「ケルト地域から発信される様々な異なった音楽」をくくる言葉として生まれた概念です。そのためケルト音楽のはっきりとした定義はなく、伝統的なものから、伝統とは無関係なポピュラー音楽までを含む場合があります。
ケルト地域の音楽とは、先述した地域の音楽のほかに、スコットランド人が多く移民したカナダのケープブレトン島や、アイルランド人が多く移民したアメリカの伝統音楽が含まれます。また、ケルト文化圏とは言いがたいものの、アイルランドのフォーク・リヴァイバルに影響を受けたスペインのバスク地方やアストゥーリアス地方の音楽も含まれることがあります。
ケルトの諸地域には、それぞれに個性的で異なった伝統がありますが、ケルト地域からの音楽といっても、マン島やウェールズから商業ベースで伝統音楽が世界に発信されることはほとんどないため、その中心はアイルランドとスコットランドとなります。つまり「ケルト音楽」と銘打って輸出・消費される音楽の大半はこの2つの地域の音楽です。
アイルランドにおいてフォーク・リヴァイバル運動を経て伝統音楽が復活したことに刺激を受け、他の地域でも同様のアプローチで伝統音楽を現代的なものに作り替える動きがあります。
また、ブルターニュのハープ奏者アラン・スティーベル(Alan Stivell) やガリシアのガイタ(バグパイプ)奏者カルロス・ヌニェス(Carlos Nuñez) のように、アイルランドやスコットランドの音楽を取り入れた汎ケルティック的な音楽スターも誕生しました。
スコットランドのグラスゴーでのケルティック・コネクション・フェスティバル、フランスのブルターニュ地方ロリエントでのインターケルティック・フェスティバル、カナダのケルティック・カラーズといったケルト音楽を横断しての音楽祭は例年の恒例行事となっており、ケルト地域の相互交流は近年ますます盛んになっています。
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日本とケルト文化圏はユーラシア大陸の正反対に位置し、地球の真裏と言っていいほど離れています。しかし日本が開国した際にアメリカを通じてこれらの国々の民謡が紹介されており、私たちに身近な曲がいくつもあります。
また、映画やテレビドラマやCM、ゲーム音楽でケルト音楽風の旋律やティン・ホイッスルの音色を耳にすることも増えました。
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