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アイリッシュ・フルートの演奏スタイル

※ この記事は、McNeela Instrumentsの許可を得て記事を翻訳、公開しています。

原文

英語翻訳:村上亮子

アイリッシュ・フルートを始めようとしている方は、おそらく「演奏スタイル」という言葉を聞いたことがあるでしょう。でも、あまり注意を払っていないのではないでしょうか。演奏スタイルとはどのようなもので、あなたの演奏にどのような影響を与えるのでしょうか。

アイルランド伝統音楽の世界では、「スタイル」は重要だけれども捉えにくい概念です。ある人の東ゴールウェー・スタイルは他の人にとってはクレア・スタイルだったし、また別の人のスライゴー・スタイルでした。

― ニール・キーガン Niall Keegan, リムリック大学

厳密な決まりはないということは知っておいてください。多くのフルート奏者は各地域の混合スタイルで演奏しています。自身のユニークなスタイルを作り上げたり、あこがれる奏者のスタイルを取り入れたりする人もいます。選択肢は沢山あるので、選ぶのも簡単ではありません。どのスタイルがあなたに向いているのでしょうか?
 

1. あなた求めるスタイルは…


4人の素晴らしいフルート奏者を集めました。彼女たちの素晴らしい演奏の分析も添えてあります。これら先駆的フルート奏者のユニークな演奏スタイルの秘密を明らかにし、あなた自身の演奏を改善するテクニックを見極めたいと思います。

彼女たちがなぜそんなにも高く評価されているのか見つけてください。アイルランド伝統音楽の中で最も優れたフルート奏者に数えられる方々ですし、輝かしい称賛を得ています。実際、自分の名を冠した曲を持っている人もいます。

これらの優れたフルート奏者をお手本に、自分のスタイルを向上させる方法をお示ししましょう。自分の楽器をコントロールするということがどういう意味なのか分かるでしょう。練習にかかる時間を大幅に短縮させる正しい練習習慣についても、最初から身につけることができるでしょう。

ですから、自分のフルート演奏を次のステップまで高めたいのなら、この記事を読み進めてください。あなたにピッタリの演奏スタイルを見つけるお手伝いをします。読み終わるころには、自分自身のスタイルを発展させる、あるいは一番好きな奏者のスタイルを取り入れるために必要なすべての情報を手に入れることができるでしょう。
 

2. 私の紹介する4人の奏者


気付かれたかもしれませんが、例えばマット・モロイ/のようなよく知られ過ぎた名前は選んでいません。この音楽の巨人については、グーグルで検索すれば、数えきれないほどの結果が返ってきます。彼のコスモポリタンなスタイルは今日最も多くコピーされているものでしょう。

しかし私の好きな、たぶんそれほどは知られていない奏者を紹介するのも面白いと思います。このままお読みください。そうすれば次のセッションで深い知識で周りの人に感銘を与えることが出来ます。

これらのフルートの名手とその演奏スタイルから学ぶことは多くあります。

3. 紹介


この著名なフルート奏者は女性のフルート奏者のパイオニアとして広く知られています。彼女以前、女性のフルート奏者はあまりいませんでした。彼女は男性の多いこの分野で、フルートに関わった最初の女性なのです。

4. ペグ・ニーダム Peig Needham:パイオニア

彼女の驚くべき、特色ある演奏スタイルは…「偉人」に数えられるものである。


ペグ・ニーダム Peig Needham(旧姓マクグレイスMcGrath)のフルートはロスコモン・スタイルの代表です。ロスコモン州の生まれで、彼女のフルート演奏は北コノハトの伝統に基づいています。このスタイルの特徴は長くスムーズなフレージングと多くの素早い、流れるような装飾です。ペグの演奏にこれが見て取れるでしょう。

ロスコモンは優れたフルート奏者を生み出した土地で、その中にはペグも含まれています。この土地に何か秘密でもあるのでしょうか。

ペグは7歳で音楽を始め、アイルランド伝統音楽における最も素晴らしいフルート奏者の1人になりました。彼女の並外れた腕前は良く知られています。1976年にはオール・アイルランド成人フルートの部で優勝し、CCÉで何度も合衆国ツアーをしました。このツアーには本当に優れたミュージシャンだけが選ばれます。言い換えると、ペグの技量の輝かしい証明になります。

男性がずっと支配的だった分野で、ペグは1つのロール・モデルとしてあらゆるところで輝きました。彼女は多くの若い女性の背中を押して、偉大なミュージシャンの仲間入りをさせました。その中にはキャサリン・マケヴォイもいます。

ペグ・マクグレイスはこの時代の偉大なフルート奏者として認められています。アイルランド伝統音楽運動への影響は、何年も年上の名人たちに引けをとらないものです。彼女の貢献は傑出し、後進を力づけるものです… このロスコモンの愛娘は誠実に堂々と自らの足跡を残したのです。

― Labhrás Ó Murchú, Ardstiúrthóir CCÉ

(1)しばしば見過ごされる技量

ペグは自分の楽器を見事にコントロールしています。息は穏やかで計算し尽くされ、息苦しさを見せたことはありません。そして装飾は流れるようです。短いフレーズに心持長いフレーズを織り交ぜ ― 息継ぎのパターンによるのですが、― いつもきちんと意識的にしています。このようにリズミカルな演奏の特徴として息継ぎを使っています。

フルートを始めたばかりの人は息の大切さを見過ごしています。すぐに華やかな装飾に飛びついてしまうのです。しかしカットやロールや他の装飾も、もう少し肺の力を高めれば、劇的に向上します。経験を積んだフルート奏者でも、呼吸練習をすれば呼吸が楽になります。呼吸の練習を毎日の練習に取り入れれば、ペグに匹敵する肺の力を手に入れることができます。


(2)ペグのようにフルートを吹くには

ペグの演奏はしっかりとコントロールされているけれどリズミックで、安定しているけれど生き生きとしていました。他の同時代の音楽家と比べても引けを取りませんでした。彼女の演奏には踊りだしたくなるような高揚がありました。でも私の言葉を信じるのではなくて、自分の耳で聞いてみてください。

※ 権利上の問題でYouTubeでしか閲覧できない動画ですので、リンクをクリックしてください。

この録音ではペグは有名なリールを2つ吹いています。― The Boys of The LoughDarby’s Farewell to Londonです。いい曲ですね。

ここではペグは力強い木管らしい音を出し、いくつかの音では少し吹き込んでいます。吹いている時の彼女の口の形(アンブシュア)を見てください。堅いアンブシュアで演奏しており、下唇はフルートの頭部管にしっかりと乗せて、口の両脇の筋肉は緊張して後ろに引いています。

フルート奏者のアンブシュアはそれぞれ少しずつ違った形です。それぞれ選ぶフルートも違うので、それが相まってそれぞれの音色に違いが生まれます。ペグは力強くも息音の混じった音色で、ところどころ強く吹き込んでおり、それが彼女のリズミックな演奏を際立たせています。

Darby’s Farewell to London(2番目の曲です)はペグの友達でもあり指導者でもあるロスコモンのフルート奏者で作曲家のジョシー・マクダモット Josie McDermottの作曲したものです。この2人は若いころ一緒に演奏していました。実際ジョシーは最初に作曲した曲を、ペグにちなんでPeig McGrath’s Reelと名付けています。(覚える価値のある曲です)

(3)1枚アルバムを買うとすれば(もし見つけられれば…)

1981年にキャサリーン・スミス Kathleen Smyth(フィドル)、メアリー・マルホーランド Mary Mulholland(ピアノ)と共にCherish The Ladiesというアルバムを録音しています。こちらでその中の何曲かのジグを聞くことができます。

このアルバムの曲はどれも聞く価値がありますが、手に入れるのは難しいと思います。宝探しをしてみるのもいいかもしれません。この珠玉のアルバムは最高の伝統的アイルランド音楽の素晴らしい例です。余分なものはありません。ただ素晴らしい曲とさらに素晴らしい演奏があるだけです!


(4)ペグのフルート

ペグが選んだフルートは美しいブラックウッドのルーダル&ローズ Rudall and Roseです。他の所でも書いていますが、美しく力強く、ボリュームのある木管特有の音がします。

木製のフルートが「木管らしい音がする」というのはおかしく聞こえるでしょう。みなさんは「そりゃ当然でしょう?木製なんだから。」と思っていらっしゃるでしょう。しかしフルートごとに違いがあって音色も独特で、材料の木質のちがいを反映して、他より響く音を出すものもあるのです。

アフリカン・ブラックウッドはアイリッシュ・フルートの製作者には好まれる素材ですし、実際フルートに適しています。堅く耐水性があります。強くて緻密で、フルートには最高の素材です。見栄えも悪くありません。

もしペグの音を真似てみたくて、アフリカン・ブラックウッドのフルートを試してみたいのなら、当店にもいくつかあります。マクニーラのアフリカン・ブラックウッドのフルートは力強く反応のいい楽器で、どなたにも最初の一本としてお勧めできます。また有名なフルート職人Ari de Keyserのフルートもございます。どちらも初心者の方に最適なフルートです。
 

5. 紹介


次のフルート奏者はラジオのブロードキャスターとしても、アイルランド伝統音楽の世界で広く知られ、愛されています。その仕事を通して仲間のミュージシャンに計り知れない活動の場を提供し、特に若い世代を支えています。

6. ナンシー・ニ・フシュドゥラ Neansaí Ní Choisdealbha:支援者

アイリッシュ音楽は高齢男性だけのものではないと気が付きました。


ナンシーはアイルランド語のラジオ局RTÉ Raidió na Gaeltachtaの音楽部門の責任者です。1週間を通して多くの番組を放送しています。私のお気に入りはCeol Binn ó na Beanna(「断崖の美しい調べ」)です。意欲的な音楽愛好家にとっては素晴らしい情報源です。聞いてみてください。


(1)コネマラの特色

ナンシーはゴールウェイ州のインヴェリンIndreabhán / Inverin という村で育ちました。音楽でよく知られた地域です。両親とも音楽家で、幼い時から伝統音楽を学んできました。

ゴールウェイ州西部コネマラ地方のゲール語地域(ゲールタハト)出身ですが、ナンシーの演奏には東ゴールウェイの伝統が見て取れます。このゆったりした演奏スタイルは流れるようなリラックスしたテンポが特色となっています。私としては彼女の演奏に東ゴールウェイの優れたフルート奏者マイク・ラファティMike Raffertyの影響が見て取れます。 フルートの構え方やアンブシュアの形にも表れています。

しかしナンシーを東ゴールウェイとひとくくりにしてしまうのは、コマネラ地方の音楽の伝統に対して失礼かもしれません。彼女は自分の音楽にコマネラの味わいを加えていると言うのが正しいかもしれません。

ナンシーの演奏は世界中の若いフルート奏者に豊かなインスピレーションを与えています。


(2)ナンシーのようにフルートを吹くには

ナンシーのスタイルはリズミックですが、あわただしい感じがしません。アーティキュレーションや装飾を多用し、しっかりと息のコント―ロールをしています。ペグと同じように、長いフレーズや短いフレーズを織り交ぜて使っています。時には緊張感を出すために特に長いフレーズを入れることもあります。

下の動画でナンシーの演奏を聞くことができます。アイリッシュ・ハープのオシーン・モリソンOisín Morrisonと共にThe Green Mountain と Ríl Neansaí(ナンシーのリール)を演奏しています。

お分かりと思いますが、ナンシーはペグよりも力を抜いたアンブシュアです。彼女の唇はフルートのヘッドに対してほとんど並行で、口の両側の筋肉を少しだけ緊張させています。これを自分でやってみるには、唇をリラックスさせて「ム」と大きな声で言ってみてください。(マッシュルームmushroomという時の最初の音です。)下あごはできるだけ動かさないようにしてください。これがその形です。次に下唇をフルートに当て、下唇を少し押し出すように感じです。口の両側を緊張させてください。(しかめっ面のように)これでOKです。あとは音に納得のいくまで調整して下さい。


(3)フルートの魔法

この動画の2番目の曲はナンシーのアルバムDraíocht na Feadóige(フルートの魔法)のためにクレアのフルート奏者マイケル・ハイネスMichael Hynesが作曲したものです。ナンシーのアルバムは刺激に満ちた演奏のいい例であり、フルート奏者なら誰でも覚えておくべきたくさんの曲が含まれています。私がそう言うからじゃなくて、ご自分で聞いてみてください。

これはフルートのアルバムです。曲は気持ちよく演奏され、速すぎるところはありませんが、間延びしているわけではありません。1つ1つの音、1つ1つのアーティキュレーションがきちんと聞き取れます。ナンシー の息のコントロールは完璧です。伴奏者がフルートを引き立てています。

― Seán Laffey, Irish Music Magazine

(4)甘く豊潤な音色のナンシーのフルート

ナンシー が吹いている美しいフルートが他ならぬサム・マリーのものだと気が付いているかもしれません。このブラックウッドのフルートは甘く豊潤な音色で音に厚みがあります。ナンシーのような演奏者の手にかかると本当に力強い音がします。

サムはベルファストのよく知られているけれどあまり人前に姿を見せないフルート職人です。彼は50年近くにわたって製作の腕に磨きをかけ、世界中で彼の素晴らしいフルートの品質と職人魂が評価されています。何年間かフルート製作から離れていましたが、需要が多くまた製作に戻ってきました。

サム・マリーのフルートは値打ちのあるものです。ナンシーが示してくれているように、このフルートはどのようなレベルになっても困ることがありません。幸い当店にはサム・マリーの各種のフルートがそろっています。一度覗いてみてください。目にとまるのもがあるかもしれません。すぐにナンシーのように吹けるようになります。
 

7. 紹介


次のフルート奏者は、端正な演奏にテクニックが輝き出るような人です。彼女の演奏は見かけ通りではありません。簡単そうに見えるものは実は名人級の精妙さなのです。

8. タラ・ダイアモンド Tara Diamond:北アイルランドの風

みんな明らかに驚いていました。…この小さな女の子がフルートを吹いている―普通ではありませんでした。


タラ・ダイアモンド(旧姓:ビングハム)は北アイルランドのダウン州出身で、1970年代後半にベルファストの伝統音楽界に現れました。ハリー・ブラッドレイ Harry Bradleyなどの多くの才能豊かなフルート奏者や、フルート職人のハミー・ハミルトン Hammy Hamilton、サム・マリー Sam Murrayなどと同じ頃です。

タラの演奏は北アイルランドのフルート演奏の特徴を備えていますが、同時にそれまでに出会った様々な音楽上の影響を反映していました。彼女は滑らかで流れるように演奏し、装飾は注意深く使用しました。同時代のベルファストのフルート奏者と比べて、「跳ねる感じ」は少なめかもしれませんが、リズムやエネルギーに欠けるわけではありません。

タラは父親からフルートを学びました。父はレスリー・ビングハムLeslie Binghamという若いころ評判のフルート奏者でした。音楽家の家庭に育って、多くの音楽家が家に訪ねてきました。その中にはファーマナFermanagh のフィドル奏者キャサル・マコーネル Cathal McConnellもいました。The Boys of The Loughの結成時のメンバーで、タラが覚えられるように曲を録音してくれました。

父を通してタラは多くの演奏家と出会い、そのことは彼女が自分のスタイルとレパートリーを確立する手助けとなりました。リートリムやロスコモンに住んでいたころ、多くの時間を家族で音楽をして過ごしました。木製フルートを吹く若い女性として、彼女は稀有な存在でした。
 

(1)ベルファストのフルート奏者

ベルファスト地域は(演奏スタイルはリートリムに近いですが、このことはまた別の機会にお話ししましょう。)すばらしいフルート奏者を生み出しています。よかったらご自分でも探してみてください。

こちらの動画ではTG4 Gradam Ceoilの表彰式で、同時代のベルファストのフルート奏者ハリー・ブラッドレー Harry Bradley、マイケル・クラークソン Michael Clarkson、デイビー・マグワイア Davy Maguire、ブレンダ・オハラ Brendan O’Hareと一緒にポルカを演奏しています。

ベルファストつまり北アイルランドのフルートの伝統は、他にも色々あるのですが、男の人が猛然と息を吹き込んでいるという印象があります。指は猛烈なスピードで動き、フルートが割れるかと思うほどに激しく息を吹き込む…しかし、タラ自身のスタイルはもっと穏やかです。

タラは曲の中の空白の価値を理解しています。控え目な方がいい場合もあるのです。ひとつひとつの音を十分に吹き、クリアに発音します。他の人がロールで装飾するところを長い1つの音で吹くことがよくあります。彼女は不必要な装飾でメロディーを飾り立てることがないのです。


(2)タラのようにフルートを吹くには


装飾について知っておいてほしい大切なことの1つ、それは装飾を使うべきでない時を知るということです。タラの演奏は、特に装飾を使い過ぎることに疚しさを感じている人には役に立つ練習になります。このソロ演奏を聞いてください。Four Provinces Fling、スコティッシュ・タイプの素晴らしい曲で、北アイルランドのレパートリーに入ってきています。

タラの演奏はあわただしい感じはしないのに、すばらしい勢いがあります。リズムがカギです。曲のリズミックな点を強調するのに息継ぎを使って、メロディーを優しく歌わせています。他の演奏者なら下降トリプレットの音形をタンギングで区切るところ(クラシックの演奏では広く行われているテクニック)を、タラは自由に流れるに任せるのではなく、より豊潤な音を生み出す方を選んでいます。

彼女はメロディックな形への天性の感覚を持っているようで、この特性を輝かせるようにフレージングを構築しています。メロディーは彼女が自分を表現するための自然な言葉なのです。

― Conal Ó Gráda、フルート奏者

タラの音色は耳に心地よいものです。無理に音を出してはいませんが、力強くパワーに満ちた音がします。彼女は丸いアンブシュアでこの音を作っています。自分でこれをするには魚の口のように口をすぼめてください。少し間が抜けた感じに見えるかもしれませんが、それでいいのです。うまくいかなかったら上唇をフルートの歌口の上に少し広げてみてください。あなたが普段吹く時に、どのような口の位置になっているかによって、最初は慣れるのに少し時間がかかるかもしれません。自分のフルートで異なった音色を出すために、身につける価値のあるテクニックです。


(3)タラの素晴らしい楽器
目の肥えた方はタラがアメリカのフルート職人、パトリック・オーウェルの美しいフルートを吹いていることに気が付かれたかもしれません。オーウェルのフルートは多くの人のあこがれの的です。伝説のマット・モロイも吹いていますし、ダヌーDanúの名奏者トム・ドーリーTom Doorleyも吹いています。

オーウェルの待機リストは長いですが、希望がないわけではありません。オーウェルのフルートを手に入れたいと心に決めたのなら、今リストに名前を載せてもらうことをお勧めします。フルートの腕が上達した頃に、その腕を披露する魔法のフルートが手に入ります。

今のところ中級のフルート奏者はArie De Keyserのキー付アフリカン・ブラックウッドのフルートなどどうでしょうか。

タラの演奏をもっと聞いてみてください。一番新しいアルバムSeanchairdeは、有名なフィドル奏者で夫のダーミー・ダイアモンド Dermy DiamondとギターのDaithí Sprouleと一緒にレコーディングし、多くの美しい曲が収められています。
 

9. 紹介


次のフルート奏者は大西洋の向こう側の人です。合衆国に生まれ、今日のアイリッシュ伝統音楽の世界でもっともよく知られた名前の1つになりました。彼女はアイリッシュ音楽では普通使わない金属のベーム式フルートを使ったことで有名です。

10. ジョーニー・マッデン Joanie Madden:反逆児

夢は追い求めるもの。


ジョーニー・マッデンは今日のアイリッシュ音楽で最も尊敬を集めているミュージシャンの1人です。多くの賞を取り、有名なバンド、チェリッシュ・ザ・レディーズ Cherish the Ladiesの創設メンバーで、この35年間このグループを支える牽引力でした。ソロとして、またアンサンブルとして200以上のレコーディングに参加してきました。

たぶん彼女はベーム式フルートを吹くという点で、もっともよく知られていると思います。伝統的な木製のフルートとちがって、ベーム式フルート(クラシック・フルート)はアイリッシュ音楽で使われることはあまりありません。しかしジョーニーは1983年にオール・アイルランド・フルート・コンテストで優勝して、このフルートの名を高めました。1984年にはアメリカ人として初めてオール・アイルランド・ティン・ホイッスル・コンテストの成人の部でも優勝しました。


(1)ジャンルの壁を越えて

ジョーニーはクラシック・フルートでアイルランド音楽を吹きこなす能力で称賛されています。伝統的アイルランド音楽のスタイリスティックな面を彼女の演奏に易々と組み入れました。このことは特に装飾の使い方の中に聞くことができます。下の動画を聞いてみてください。

 

この動画では彼女はコークのフルート奏者コーナル・オ・グラーダConal Ó Grádaと一緒にリールのセットと幾つかのジグを演奏しています。コーナルは熱のこもった演奏としっかり息を吹き込んだ大きな音でよく知られています。ジョーニーは彼のスピード、音色、音量に引けを取っていません。ベーム式フルートを使って素晴らしいことです。

ジョーニーは息のコントロールに優れていて、フルートにしっかりと息を吹き込み、息継ぎをリズムの特徴として使っています。マット・モロイの影響を強く受け、彼女の演奏は活力とエネルギーとリズムに満ちています。

もしアイリッシュ音楽を始めたいなら、優れたミュージシャンの音楽を聞くところから始めるべきです。そうすれば自分がどんな音を出そうとしているのか理解できます。1人お勧めするならマット・モロイです。素晴らしいフルート奏者です。

― ジョーニー・マッデン

(2)神話の崩壊

多くのトラッド至上主義の人は「クラシック」のフルートでアイリッシュ音楽を演奏するべきではないと言うかもしれません。ナンセンスです。シンプル・システムのフルートとは運指が違うかもしれません。装飾によっては少し複雑になるかもしれません。(主にロール)しかしジョーニーがやって見せたように、やってみるべき挑戦です。

キーのせいでスピードが落ちると主張する人もいます。これもジョーニーには問題になりません。彼女の演奏は楽々と流れ、素早い指の動きは一見の価値があります。

この主張は、東ゴールウェイ出身の故パディー・カーティーPaddy Cartyの演奏スタイルを見て言われるようになったのかもしれません。パディーはラドクリフ・システム・フルート(木製のベーム式フルート)を吹いていました。彼の演奏スタイルはゆったりしたもので、言い換えると、彼は急いで曲を終わらせてしまおうとはしないのです。しかし、このリラックスしたスタイルは東ゴールウェイ地方の典型だったかもしれません。彼はキーで戸惑うことはありませんでした。

アイリッシュ・フルートのユニークな音を明らかにするカギの1つは、その木管特有の音色です。これは金属のフルートで完全に再現することはできませんが、ジョーニーのような演奏家はふくよかで温かい音色を出すことができます。彼女が豊かな音を出していることは紛れもない事実です。


(3)ジョーニーの素晴らしい楽器
ジョーニーが選んだ楽器は金属のミヤザワ・フルートです。

ミヤザワ・フルートを試奏してみた時―これですが―もう後戻りはできませんでした。音色、キーの動き、触れた感じ、全て最高でした。他のフルートもみんな試奏してみましたが、それ以来ずっとミヤザワを吹いています。大好きです。

― ジョーニー・マッデン

この楽器は日本のフルート製作者、宮澤正史氏とアメリカのフルート製作者P.L.ウェストが共同して作った手作りのフルートです。ミヤザワ・フルートはオーウェルのフルートと同様、いつまでもあなたのフルート人生を豊かなものにしてくれます。


しかし始めるにあたってもう少しお財布にやさしいフルートをお探しなら、マクニーラのベーム式フルートはいかがでしょうか。銀メッキのニッケル製で初心者に最適です。そしてどんなジャンルの音楽にも適しています。


(4)可能性にかけて

驚くべきことに(親の立場にいる人にとっては、そうでもないかもしれませんが)ジョーニーの両親は彼女がプロの音楽家になることにあまり熱心ではありませんでした。大学に進学して、趣味で音楽をすればいいと考えていたのです。しかし堅い決心と努力でジョーニーは素晴らしいキャリアを築きました。今ではアイリッシュ伝統音楽の世界でよく知られた名前で、さらに自らの演奏と明るい人柄で、アイルランドやアメリカのあらゆる世代のミュージシャンを勇気づけています。

本当に好きなことをして、いっぱいいっぱい努力してください。そうすれば必ず成功します。夢は追い求めるものです。

― ジョーニー・マッデン

11. 継承


ここで取り上げたフルート奏者がある共通点を持っていることに気がつかれたことでしょう。アイルランド伝統音楽の世界には大勢の才能あふれた女性のミュージシャンがいます。若いミュージシャンが(それほど若くなくても―始めるに遅すぎるはない!のです)新しく楽器を手に取るたびに、その数は増えていきます。多くの人が偉大なミュージシャンの仲間入りをします。

若いミュージシャンは、ここで取り上げた素晴らしい女性たちの足跡をたどることができる点でラッキーです。彼女たちは演奏家、作曲家、指導者として新しく来る者のために道を切り開き、アイルランド伝統音楽の中で女性の地位を上げた人々なのです。
 

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