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メアリー・バーギンのように吹くには

※ この記事は、McNeela Instrumentsの許可を得て記事を翻訳、公開しています。

英語翻訳:村上亮子
 

メアリー・バーギンのようにホイッスルを吹くには

伝説的ホイッスル奏者メアリー・バーギン。彼女は今の時代の最も優れたホイッスル奏者で、ホイッスルの演奏に革命を起こし、この素朴な楽器を今の地位に高めました。 

彼女の影響が牽引力となって、ティン・ホイッスルは今のように高く評価されるようになりました。広い世代の音楽家が彼女の影響を受け、メアリー・バーギンはまぎれもなく、この小さな楽器に起こった最も大きな「現象」であると言えます。

メアリーの演奏スタイルは特徴的で彼女のスキルは素晴らしいものです。ホイッスル奏者は誰もが彼女のように演奏したいと思うものです。

メアリー・バーギンは全てのホイッスル奏者があこがれるもの ― 純粋なトラッドなのです。

― ジョーニー・マッデン

ティン・ホイッスルを志す方々が、どうすればこの素晴らしい先達の足跡をたどることができるか、このささやかなガイドでお示ししたいと思います。
 

1. 継続は力なり

私達はみんなこの古い言い回しを知っています。どうしたらカーネギー・ホールに行けるか?練習しかありません!

ここでも同じことが言えます。ティン・ホイッスルをマスターしてメアリー・バーギンのレベルまで行きたいのなら、練習が必要です。

優れたミュージシャンの技術に感嘆すると、「生まれつきの才能」と言いたくなります。しかし才能あるミュージシャンは、たゆまない努力をしてそのレベルに達したのです。あなたも努力すれば、その成果を得ることができます。日々の練習を習慣にすれば、演奏が目を見張るように変化します。大変だと思うかもしれません。しかし1週間に1度長い練習をするより、毎日20~30分の練習を重ねる方がずっと効果的なのです。

スタミナがついて、体が覚えていきます。日々専念することで音楽を体に染み込ませるのです。何を躊躇するのですか?さあ、始めましょう。

手助けが必要なら、私のブログ効果的な練習法をご覧ください。
 

2. 持久力と推進力

ホイッスルは小さな楽器ですので、演奏するのにそれほど持久力は要らないと思うかもしれません。しかし、これはよくある誤解です。

優れたティン・ホイッスル奏者の演奏を聞くと、1つの共通点があるのに気が付くでしょう ― 肺の力です。メアリー・バーギンも例外ではありません。次の記事(革命的ホイッスル奏者、マイケル・マックゴールドリック)と下の動画を見てください。

しっかりとした呼吸のコントロールは、ティン・ホイッスルの演奏には欠かせないものです。ホイッスル奏者にとって呼吸をマスターすることはその楽器をマスターする上で大切なステップになります。

呼吸は音色に影響するだけでなく、リズムや曲の流れにも関わってきます。

あなたが憧れる演奏者に負けないような肺の力を鍛えましょう。難しいことではありません。練習です!


(1) 呼吸の練習
簡単な呼吸練習は息のコントロール改善し、肺の容量を増やすのに役立ちます。

この訓練法を毎日の練習に取り入れると、呼吸、楽器、そして演奏をコントロールできるようになります。

もちろん肉体の鍛錬も大切ですが、呼吸の練習は長椅子に寝そべってもできるのです。いいでしょう?ホイッスルやフルートを練習している方にお力添えするために、いくつか提案しました。こちらをごらんください。

(2) 息継ぎの目的
メアリー・バーギンの呼吸は彼女の演奏スタイルの特徴です。彼女は息継ぎで曲に脈打つような躍動感を与えています。

彼女自身の言葉です:

ホイッスルの演奏で私が好きなのは音と息継ぎの組み合わせです。息継ぎは、単に空気を取り込むということではなく、息継ぎを使うことで曲を前へ前へと推し進めていくのです。他の人が流れるように続けていくところを、私は息継ぎでフレーズを作り、時々曲に「かけ声」をかけるのです。

― メアリー・バーギン

この動画を聞いてください。彼女の息継ぎの役割に気付くでしょうか。

 

3. 華麗な装飾

メアリーの演奏はホイッスルの古い伝統的なスタイルです。しかし彼女が古い世代の人々と違う点は装飾の使い方にあります。

メアリー・バーギンは自分の楽器を驚くほど正確に操っています。彼女のスキルは控えめに言って強い印象を与えるものです。

タンギング、カット、ロール、トリプレット、スライド、バウンス―彼女の演奏はこのような素晴らしい装飾で彩られています。それでもゴチャゴチャしているとか、飾り過ぎだとかいう印象は与えないのです。それぞれの装飾は注意深く考えられ、曲の魅力を引き出しています。

メアリーは音楽が求めるまま、適切と思われるときだけ装飾を使います。その結果繊細なものから大胆なものまで、彼女の演奏は状況によって変化します。

華やかに装飾されているけれど、取り散らかった感じがしない。彼女の演奏は歯切れのいいア ーティキュレーションが特徴的です。

― フィンタン・バレリー

下のジョー・マッケンナ Joe McKenna、アレック・フィン Alec Finn、Bríd Uí Bhraonáinとの演奏はいつ、どのように装飾をつけるかという高度なテクニックを見せています。彼女の演奏はジョーと完璧に溶け合っていますが、一方で必要な時、さらに重要なのは音楽が要求する時には、うつくしく際立っています。

 

4. ふさわしい楽器を選ぶ

好きなミュージシャンの音色を手っ取り早く真似るには、同じ製作者の同じモデルの楽器を使うという手もあります。

しかしこれは言うほど楽なことではありません。多くのプロのミュージシャンは何十万円もする楽器を使っているからです。

でも、もしメアリー・バーギンと同じ楽器を使いたいと考えているなら、良いお知らせがあります。

メアリーはジョン・シント John Sindt、パット・オリオーダン Pat O’Riordan、マイケル・コープランド Michael Copelandのホイッスルと並んで、ジェネレーションのホイッスルも使っているのです。下の動画ではジェネレーションのホイッスルを吹いています。

シントやオリオーダン、コープランドは本当に美しいホイッスルを作っていますが、とても高価です。また、これらの楽器はますます入手が困難になってきています。しかしジェネレーションのホイッスルなら10ユーロ(およそ1300円)もあれば買えます。ただ、このような量産品のホイッスルは当たり外れが多いのが欠点です。

質のいいホイッスルが手に入りやすくなる前は、熱心な人は、時間をかけて多くのホイッスルの中から隠れている宝を掘り出そうとしたものでした。

品質のいいホイッスルが手ごろな値段で手に入るようになったので、こういうことも今では必要なくなりました。

メアリー・バーギンの明るく澄んだ音色を再現できるいいホイッスルを2つ紹介しましょう。


● ワイルド・アイリシュ・ホイッスル

この新しいティン・ホイッスルはごく最近マクニーラ楽器店で扱い始めたものです。これは初心者にも、中級者にも、上級者にも満足のいくものです。

ワイルド・アイリシュ・ホイッスルは吹きやすさを考えてデザインされました。驚くほど吹きやすく、反応も素晴らしいものです。そして一番大切なことは、あまり強く吹かなくても大きな音が出せることです。軽く吹くだけでいいのです。

このティン・ホイッスルはオクターブ間のチューニングに優れ、高い音域でもいい音色がします。不快なキーキーとした音を出すことがありません。高い音域でクリアーな音を出すために練習が欠かせないホイッスルもありますが、ワイルド・アイリシュ・ホイッスルは誰でも澄んだ音が出せます。

誰もが手に取り、吹いてみたくなるホイッスルです。演奏のしやすさから美しい音色まで、このホイッスルは最初に一吹きした時から、吹く練習を楽しい経験に変えてくれます。さらにソプラノもアルトも様々なキーのものがそろっています。

下の動画でメアリー・バーギンの後を継ぐホイッスルの巨匠、ロバート・ハービー Robert Harveyがワイルド・アイリシュ・ホイッスルを吹いています。

● セタンタ・ホイッスル Setanta Whistles

ジョン・オブライエン John O’Brienが、ここマクニーラ楽器店の工房で、美しいセタンタ・ホイッスルを作りました。アイリッシュ・ミュージック界のレジェンドに当工房を使っていただき、ジョンの音楽家魂、職人魂から多くを学ばせていただいたことを光栄に思っています。この高級なティン・ホイッスルはジョンのホイッスル愛から生まれたもので、手に取ってみればすぐにお判りになるでしょう。しかし、この新しいホイッスルを特別なものにしているのはどういった点でしょうか。

ジョンはバグパイプとホイッスルの経験が深く、リバーダンスにも出演しています。プロの音楽家として自分自身と他の人の要望に応える形でこのホイッスルを設計しました。

セタンタ・ホイッスルにはソプラノ、アルト、ロー・ホイッスルと全ての調がそろっています。それぞれが高低どちらの音域でも美しく温かいクリアーな音、素晴らしい反応性と驚くほど正確なチューニングを兼ね揃えています。

この美しい楽器は、ホイッスルを吹く方ならどなたでも欲しくなるものです。特別な楽器が生み出す違いを聞き感じることができるでしょう。
 

5. 音楽を感じる

メアリーを真似て全く同じように演奏したいというだけなら、ここで終りです。しかし個人のスタイルは優れた演奏者を模倣するのと同じくらい大事です。音楽の喜びもしかり。なぜ音楽をするかは、どう演奏するかと同様に大切なことなのです。

もしかしたら世界で最もテクニックに長けた奏者になれるかもしれません。しかし、自分が演奏する音楽とつながっていないなら、音楽が心を震わせ喜びをもたらさないのなら、一体それが何になるでしょうか?

音楽においてもう1つ私が大切に思うものは、魂を込めることです。...もし音楽が頭から来るものなら、頭を使って頑張るものなら、それは頭に届いてそれでおしまいです。頭じゃない別の場所を使って演奏し、私の中の別の部分に働きかける人が欲しいのです。これはどのような音楽についても言えることです。もし誰かが、あらゆるテクニックを使って、頭を使って私を感動させようと思うのなら、私は即聞くのをやめます。―どんなに上手だとしてもね。

― メアリー・バーギン、アイリッシュ・タイムズ

音楽へのこのようなつながりを深めるにはどうすればいいでしょうか。答えは簡単です。よく聞くことです。
 

6. 聞く

伝統的アイルランド音楽の優れた演奏家が共通して持っていることが1つあります。それは先人の音楽の中で育ってきたということです。彼らは伝統音楽の中にどっぷり浸かり、伝統音楽に囲まれて育ってきました。自分の楽器だけでなく音楽そのものについてあらゆることを学ぶために、貪欲に他の人の演奏を聞きました。

アイリッシュ音楽のレジェンドの音楽を聞くことも大切です。メアリー・バーギンの素晴らしいソロ・アルバムは、最初に聞いてみるべきものでしょう。

Feadóga Stáin と Feadóga Stáin 2 はティン・ホイッスルのレコーディングの中でも最高の2冊です。これは素晴らしい伝統曲を集めたものでティン・ホイッスルの録音の中でも優れたものです。

しかし、もし私と同じようにこの素晴らしいアルバムをもう覚えてしまっているのなら、次は何を聞いたらいいでしょうか?
 

7. さらに前の人々

あなたがあこがれる音楽家は誰から学んだでしょうか。彼らは誰の演奏を聞いて育ってきたのでしょうか。これらの人々のレコーディングを探して聞いてみてください。「原典にもどる」です。様々なアイルランドの伝統楽器を聞いて下さい。多くの音楽を覚えれば覚えるほど、あなたの指先から紡ぎだされる音楽が素晴らしいものになるのです。

Caitlín Nic Gabhann

メアリーの演奏は主にPackie Duignanのフルートとウィリー・クランシー Willie Clancy のホイッスルの影響を受けています。この伝説的な2人の演奏を聞いて、現代の最も優れたホイッスル奏者に影響を与えた彼らの演奏スタイルがどのようなものか、調べてみてはどうでしょう。

私が古い録音を聞くようにお勧めすると、様々な理由で― 録音の音質とか、時には録音そのものが理由で嫌がられることがあります。古い演奏スタイルは馴染みのない耳には心地よく響かないかもしれませんが、豊かな情報の泉だと保証します。

まだ若い演奏家だったころ、多くの年上の音楽家を探し求めたものでした。彼らはテクニック的に素晴らしいとか、目を見張るような装飾を駆使したとかではありませんでしたが、何か特別なものを持っていました。それはリズムです。自然に足踏みをし、体が動き出すようなリズムなのです。

― メアリー・バーギン

テクニックに秀でたミュージシャンでも、先人から学ぶものはたくさんあります。手に入る録音物を(デジタル時代の現代、昔よりずっと簡単に手に入ります)聞いてください。そしてこれらのミュージシャンがアイリッシュ音楽にもたらしたものは何か考えてください。技術的な才能をもってしても太刀打ちできない、彼らが持っている「何か」とは何でしょうか?それは魂です。
 

8. ティン・ホイッスル教本

ホイッスル奏者がメアリーの足跡を追い、彼女の演奏を真似したいと望んでいることは、メアリー自身も気がついています。それで彼女は教本を3冊作っています。このわかりやすい教本は3巻にわたり、何年にも渡る演奏、指導、研鑽の集大成です。それぞれの本は初心者からプロのレベルまで様々なレベルの要望に応じています。詳細はこちら。

巷にはあまり役に立たない教本もありますが、メアリーの本は素晴らしいものです。彼女の専門知識をどのページにもどの録音にも惜しみなく注ぎ込み、彼女の知識を分け与えてくれています。彼女は才能豊かな音楽家であるだけでなく、優れた指導者でもあります。
 

9. レッスン

メアリー・バーギンの教本はどんなレベルの演奏者にも素晴らしいガイダンスになっていますが、やはり一番いい方法はレッスンです。
上手なティン・ホイッスルの先生は、ワクワクするレッスンで楽しく導いてくれます。専門家としてのガイダンスと音楽へ深い洞察を示し、自分自身のスタイルを築くことに手を貸してくれます。


(1)マクニーラのホイッスル・レッスン

素晴らしい先生と出会うことは必ずしも容易ではありません。それでマクニーラ楽器店はプロのホイッスル奏者で(かつマクニーラ社内でホイッスルを制作している)ジョン・オブライエンJohn O’Brienを教師としてティン・ホイッスル教室をご用意しています。

マクニーラのホイッスル教室では、最初の1音を出すところから、素晴らしい音を出すのに必要なあらゆる技術を身につけさせてくれます。初心者コースではティン・ホイッスルについて知るべき全てのことを教えてくれます。基本的なテクニックや装飾と6曲のセッション・チューンです。10週間でセッションに参加できるようになるのです!

この10課のビデオ・レッスンではセッションに参加するのに必要なすべてのことが学べます。楽しいリラックスした雰囲気で基本的なテクニックや装飾、そして最初のセッション・チューンを身につけましょう。ジョンの専門的なガイダンスに従って、良い練習習慣を築き、わずか10週間で、あなたは十分に力のある、自信にあふれたホイッスル奏者になって、さらに上のレベルをめざすことができます。


(2)次へ進みましょう

初心者コースを終えたら、中級、上級コースに進んではどうでしょうか。世界で最高の講師陣が音楽の旅をガイドします。

あなたがどのレベルを目指していても、私たちは素晴らしいホイッスル・プレーヤーになれるように応援します。ですから、あなたの望みが地域のセッションに参加したいのでも、最高レベルの演奏者を目指しているのでも、私たちにお手伝いせてください。

マクニーラの中級コースを受ければ、あなたの潜在的な音楽性が開花します。音楽の才能を伸ばし、能力を開花させ、上級の装飾をマスターし、もちろん多くのセッション・チューンを覚えられます。たった10週間のレッスンで、自分でも見違えてしまうでしょう。

最後に、さらに上を目指す方には上級コースがあります。こちらのレッスンでは、経験を積んだ演奏家の方にも、新しく学ぶことがあると確信します。最上級コースを修了すれば、ホイッスルのマスターになれます。

さあ、手をこまねいていないで。次の「メアリー・バーギン」になりたければ、私たちがお手伝いします。音楽の旅を始めましょう。