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ケルト音楽 はじめの一歩

アイルランドの古き歌唱形式「シャーン・ノース」

前回、失われつつある古い歌の話を書きましたが、今回はアイルランドに残る非常に神秘的な伝統歌「シャーン・ノース」について書きたいと思います。

シャーン・ノースは歌うスタイルの形式の名前で、ほとんどの曲はゲール語で書かれています。そして何より特徴的なポイントは、「ひとりで無伴奏で歌う」というところにあります。
百聞は一見に如かず、まずはぜひ下の動画で実際のシャーン・ノースをお聴き下さい。
 

世界の発展の中で楽譜文化が生まれ、アンサンブルや和音が開発されていく中で、このシャーン・ノースはそのいずれの分野にも逸れることなく、口承によってのみ子孫に伝えられている、純粋で始原的な歌唱形式を守っています。

さぁ、こんな風に歌うにはどうすればいいでしょうか??
歌詞を覚える、音階をなぞる、楽譜で書いてみる…?これらを実践したとして、この動画のように果たして歌えるでしょうか。きっと難しいと思います。

シャーン・ノースは習熟するのが恐ろしく難しく複雑な形式である、と称されています。この動画の演奏のように、理屈では語れない世界観、教則本では習えない音楽観というのは、まさに「神秘的」です。

これらの歌が受け継がれている地域は、アイルランドの中でもゲール語話者が暮らす地域ゲールタハトに限られているそうです。そして、そこに住み、こうした伝統を受け継いでいる人たちは「(歌が)昔のものほど豊かではなくなった」と危惧しているそうです。

シャーン・ノースの伝統を残すには、歌い手を育てる、歌を保存する(もしくは復元する)、ゲール語話者を増やす、ゲール文化を残す…とかなり大変な道のりが待っています。かつて西の端っこと言われていた小さな国で、そうやって頑張りながら今日もおじいちゃんにシャーン・ノースを習っている子ども達がいるでしょう。

東の端っこと言われていた日本に住む私たちにできることは、そういった伝統を受け入れ、聴きたいと願うことではないでしょうか。そして私たちの周りに、今まさに消えようとしている伝統がないか、今一度目を凝らしてみたいものですね。

 
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