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ケルトの映画館

FRANK/フランク

FRANK
製作:2014年
原題:Frank
上映時間:95分
監督:マイケル・ファスベンダー、ドーナル・グリーソン、マギー・ジレンホール
ジャンル:ドラマ/コメディ/音楽

ストーリー

ひょんなことからあるバンドに加入することになった青年ジョン。
そのバンドのリーダー「フランク」は、奇妙奇天烈な被り物を四六時中つけた謎の男だった。
バンドメンバーから信頼され、いつも明るく、ときに破天荒な「フランク」のその不思議な魅力にジョンも次第にひかれていく。
あるとき、バンドのWEB映像が話題となり、彼らはアメリカの超人気フェス「SXSW」から招待を受ける。
しかし、次第に様子がおかしくなるフランクによって、バンドは解散の危機に…!?
(DVDパッケージより)

物語の時代

現在

ロケーション(撮影した場所)

アイルランド ダブリン(言わずと知れたアイルランドの首都)

アイルランド ウィックロウ州 ダン湖

このダン湖はウィックロウマウンテンズ国立公園の中にありまして、有名な観光スポット「グレンダーロッホ」があります。ダブリンからバスツアーを申し込むと、適当にこのあたりに連れて行ってくれますが、けっこう長時間放置されます。(集合は4時間後で!的な)ちなみに、グレンダーロッホはバイキングに襲われた村の遺跡が残っているため、ケルトの歴史よりもバイキングの歴史についての展示の方が多い、不思議なスポットです。

登場する土地

クラケットレーン(主人公のジョンが住んでいる町の近く)

音楽を嗜んでいるけど、バンド活動するほどじゃない…そんな、夢を諦めかけている主人公がこの付近の田舎町で暮らしています。(撮影はウィックロウ州のブレイで行われています)そんな彼の町に、フランク率いるバンドが現れ、キーボード担当が急遽出れなくなったことで、主人公のジョンが抜擢され、物語ははじまります。

その後、「演奏に参加しないか?週末アイルランドに行くぞ」と誘われて、バンドメンバーと合流するのがクラケットレーンです。

Vetno, Ireland(アイルランド ヴェトノ)

バンドのメンバーとジョンが、アルバム製作のため、新しいサウンドを探すために山ごもりをするんですが、それが作中では「Vetno」と呼ばれています。
山と川、湖に囲まれた手付かずの自然の中で、いろいろなことが巻き起こるわけですが、これらはすべてアイルランド、ウィックロウ州のダン湖で撮影されました。

後半はガラリと変わってアメリカはテキサスに舞台を移します。

店長のココが見所♪

まずは、何と言ってもバンドのリーダーことフランクです。この笑いを誘うハリボテを被っているのは、なんと当コーナーで紹介している「ハンガー 静かなる抵抗」で主演をつとめたマイケル・ファスベンダー!まさかの大物 in the 被り物。

この映画は、とっても小規模なインディ系の作品ですが(製作にアイルランドの映画会社が名を連ねています)マイケル・ファスベンダーをはじめ、世界的に有名な俳優さんが出ています。

さて、店長的に少し興味深かったのは、イングランドの都市からアイルランドに出国する際、フェリーを使ったところです。
楽器を積んで車で移動したい=飛行機は使えない=フェリー=フェリーでアイルランドに行けるの?!という思考を辿りました。

そこで気になったので調べてみるたのですが、ロンドン界隈に住んでいる人がフェリーでアイルランドに行こうと思うと、当然西に向かわないといけないですから、西に車を走らせます。そうすると、これもまた当然、西にはウェールズがありますから、自然とウェールズの北部に入ります。
目的地はウェールズ グウィネズの港町ホーリーヘッド

大きめの町の割に、人口は1万人ちょいだとか。
ここからアイルランド行きのフェリーが出ていまして、乗れば、ダブリン郊外のフェリーターミナルに到着します。
フェリーに乗り込む際にパスポート等、外国に行く手続きが必要なようです。

このルート、もちろん旅行者にも使えます。
車じゃなく電車を使う場合は、ロンドンのユーストン駅(18番ホーム)から「ヴァージン・トレインズ(Virgin Trains)」のチェスター行き特急に乗りまして、チェスターで乗り換え。その後、チェスター駅(3番ホーム)から「アリヴァ・トレインズ・ウェールズ(Arriva Trains Wales)」のホーリーヘッド行きに乗り換えると、あっという間に船着場!
まあ、4時間ちょいはかかるんですが、その間に、田園風景やウェールズの山岳風景などが楽しめるそうですよ!

出展 pixabay.com

ずいぶん長い間、映画の話をしていなかったので、映画の話をします。

作品のトーンとしては、前半は絶え間なくクスクス笑ってしまうぐらいネジの外れた、異様な風景が可笑しさを醸し出す展開が続きます。

これが後半になると、「なんで彼は被り物をつけているの?」という精神的な疾患に対する探求と周囲の無理解、という、一転して社会問題を斬る(中にも笑いが散りばめられています)ようなトーンに移行し、なんだかわからないけど哀しい気分になること請け合いです。
幸せの絶頂期に見るより、何か嫌なことがあった時、落ち着きたい時、破局・離婚のあとに鑑賞すると、胸に色々なものが染み込んできますぜ。(I LOVE YOU ALL)

そんな被り物をした主人公の心理を、面白おかしい人という見た目だけの印象ではなく、何か(今回の場合は被り物)に依存していないと自己表現ができない、素の自分単体では何もできない、という脅迫感に苛まされている人、という目線で映画を見てみると、イロモノではない、生身のフランクの心の痛みや悲しみが、少しずつ伝わってくる、そんな映画になっています。

ちなみにですが、フランクのモデルになった「フランク・サイドボトム」という人物(キャラクター)が実在しまして、これは英国の音楽家クリス・シービー Chris Sievey さんの生み出した、同じような被り物をつけた人気キャラクターです。
映画は伝記とかではなく、ストーリーはオリジナルのものとなります。

店長の早わかり歴史

今回は、アイルランドの歴史は関係ないので、先ほどちらっと書いたアイルランドの映画会社の話を書いてみたいと思います。

アイルランドの映画会社といえば「アイリッシュ・フィルム・ボード」通称「ifb」が最大手の映画会社になります。 名前は別にどうでも良いんですが、外国の映画に他国の映画会社が製作費を提供した場合に、共同製作としてその会社名がクレジットされるんですね。
 

で、当然ながらお金を出す以上、出資者におトクな話がないと困りますよね。
リターンを期待しての出資ですから。(嗚呼、カネの話)

そこで、ifbはだいたいこういうことを製作陣に求めて、それを受理したプロジェクトにだけ出資をする、というプロセスを踏むわけです。

  • ●映画の何%以上はアイルランドの国内でロケを行ってください。
  • ●映画に何名以上の地元の俳優を起用してください。
  • ●ロケ中のスタッフをアイルランド国内で雇用してください。

みたいな感じ。(細かくは交渉ごとに変わるので調べようがありませんが)

ので、今回の映画でいう、前半丸々アイルランドで撮影されているということや、フランクを演じたマイケル・ファスベンダーや、主人公のドーナル・グリーソンがアイルランド人であることなんかも、見事にifbの意向に沿った映画作りなわけですね。

ちなみに監督のレニー・アブラハムソン(すごい名前)はダブリン出身のアイルランド人監督です。
この監督の前作「What Richard Did(リチャードは何をしたか)」がすごく高く評価されて注目を集め、この「FRANK/フランク」で世界の映画ファン、音楽ファンに大きなインパクトを残しました。
そして翌年2015年に公開された監督作「ルーム」では米国アカデミー賞の監督賞にノミネートされ、まさに世界のトップ監督のひとりになってきました。次回作も楽しみですね!

アメリカの音楽フェス「SXSW」(サウス・バイ・サウスウェスト)は、日本でも音楽ファンの方には馴染みがあるかもしれません。音楽フェスだけではなく、映画祭なんかも共催しています。

興味のある方は、ぜひ調べてみてくださいね。

関連映画

「ハンガー 静かなる抵抗」(マイケル・ファスベンダー主演)

「ザ・ガード 西部の相棒」
この映画のアイルランドのトンデモ警官を演じているブレンダン・グリーソンが、今作の主人公ジョンを演じたドーナル・グリーソンのお父さんです。(ハリー・ポッターと死の秘宝 part1で親子共演しています)

 
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