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ケルトの笛 インタビュー

ジャン=ミッシェル・ヴェイヨン(Jean-Michel Veillon)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。
インタビューが行われたのは、2000年頃だと思われます。英語翻訳:村上亮子
 

ジャン-ミッシェルJean-Michelの最新のフルートのCD “Er Pasker”(1999)と、“Beo!”(ギターのイヴォン・リューYvon Riouとのライブアルバム)は、現在入手可能。

ジャン-ミッシェルはブルターニュのグループ、KornogとPennou Skoulmのフルート奏者としてよく知られている。

ブルターニュ音楽に木製フルートを取り入れたパイオニアであり、アイリッシュの曲を演奏してもすばらしいプレーヤーである。
彼のスタイルは繊細かつ力強く、エネルギー、精妙さ、すぐれた感性にあふれている。
彼はケルト界における最も優れた木製フルートの奏者だと、多くの音楽家から見なされている。
 

出典 A Guide to the Irish Flute

ジャン-ミッシェルは1959年に、コート・ダルモール県、サンブリュー近くのフレルで生まれた。

12歳でブルターニュダンス、14歳でボンバルドの演奏を始めた。
1977年に木製フルートを吹き始め、アイルランドの音楽や文化に関心を深め、デシ・ウィルキンソンDesi Wilkinsonやパディー・オニールPaddy O’Neillから曲を学んだ。

1979年には、パディー・オニールやバグパイプのマーティン・ノーランMartin Nolanと共に、ブルターニュ-アイリッシュ・バンドを作った。
また、地元の東ブルターニュのバンドでも演奏し、木製フルートで吹くブルターニュのレパートリーを増やしていった。

1981年から1987年、ジャン-ミッシェルはKornogというバンドで、ヨーロッパ、アメリカ各地で演奏した。

彼は、パトリック&ジャッキー・モラーPatrick and Jacky Molard, Soig Siberil、クリスティアン・ルマトルChristian Lemaitre とともに、ペノウ・スコウルムPennou Skoulmというダンスバンドの創立メンバーである。

1988年から1992年はデンDenというグループで演奏した。
また、ボーカルのヤン・フォンシュ・ケメネー Yann-Fanch Kemener とともにバルザズ Barzazの創立メンバーでもある。

高い評価を得た最初のソロアルバム “E Koad Nizan” は木製フルートでブルターニュ音楽を演奏した最初の録音である。
ジャン・ミッシェルは現在、ギターのイヴォン・リューYvon Riou とのデュオで活動している。
1995年に ”Pont Gwenn ha Pont Stang”というタイトルのアルバム、2000年にはライブアルバム “Beo!” を出している。
 

作品

  • •Kornog "Premiere: Live in Minneapolis" Green Linnet, 1983.
  • •Kornog "Ar Seizh Avel" Green Linnet, 1984.
  • •Kornog "IV" Adipho, 1986.
  • •Musique a danser en Bretagne, Adipho, 1988.
  • •Barzaz: "Ec'honder" Escalibur-Diffusion Breizh, 1989.
  • •Den: "Just Around the Window" Escalibur-Diffusion Breizh, 1989.
  • •Pennou Skolum "Pennou Skoulm" Escalibur-Diffusion Breizh, 1990.
  • •Barzaz: "An den kozh dall" Keltia Music, 1992.
  • •J.M. Veillon: "E Koad Nizan" Gwerz Pladenn-Diffusion Breizh, 1993.
  • •Soig Siberil: "Digor" Gwerz-Pladenn-Diffusion Breizh, 1994.
  • •Bro Dreger V: "Konskried" CCB Lannuon, 1994.
  • •Alain Gentry: "La Coleur du Milieu" Gwerz Pladenn-Diffusion Breizh, 1994.
  • •Dan Ar Braz: "L'Héritage des Celtes" Sony Music/Columbia, 1994.
  • •Bro Dreger VI: "Dans Kerne" (CCB Lannuon, 1995.
  • •J.M. Veillon & Y. Riou: "Pont Gwenn ha Pont Stang" Gwerz Pladenn-Diffusion Breizh, 1995.
  • •Dan Ar Braz: "L'Heritage des Celtes LIVE" BYG/Sony/Columbia, 1995.
  • •Penn ar Bed: Didier Squiban L'oz Production, 1996
  • •Gérard Delahaye: La Balade du Nord-Ouest Blue Silver, 1996
  • •Er Pasker, Coop Breizh CD 888, 1999
  • •Beo! (with Yvon Riou), An-Naer Produksion, 2000.
 

左枠:インタビュアー 右枠:ジャン=ミッシェル・ヴェイヨンさん

最初はボンバルドをやっていたのですね。
どうしてフルートでブルターニュ音楽をしようと思ったのですか。

最初はダンスでした。
12歳のときに伝統的ブルターニュダンスのバンドで(コスチュームを着て!)ダンスを始めたのです。
14歳になったとき、ピポ(pipeau プラスティックの一種のホイッスル)を始め、それからボンバルドを吹き始めました。
ブルターニュの縦笛で、ダブルリードでとても大きな音がします。
ちょうどその頃、ブルターニュの音楽家達はアイルランドやスコットランドの音楽に関心を持ち始めていました。
こういう流れの中でアイルランド音楽を聞く機会を得たのです。
アイリッシュフルートの音は ―ケイリーバンドのかき消されそうな音だったり、フォーク音楽の録音だったりしましたが、― 私を虜にしました。
でも、まだアイリッシュフルートに心から惚れ込んだわけではありませんでした。
ティンホイッスルを買って、初めてアイルランドへ旅行したのは1976年のことでした。
1977年に、やっと古いフランスのフルートを手に入れることができました。
半分壊れて、ピッチの低いものでした。
その頃は、まわりにフルートを吹く人は誰もおらず、したがって、助言や情報を得ることもできず、田舎の少年の例として大雑把な私は、自分で調整しようと決めました。
フットジョイントをのこぎりで切って、それから右手の指穴を大きくしました。
それがうまくいったのです!(まあ、幾分は)
それから何時間もかけて、もっぱらアイルランドの曲を吹いて、このポンコツ楽器から、何とか我慢できる程度の音を得ようと努力しました。
ボンバルドの奏者だったので、フルートでブルターニュの曲を吹こうとは思わなかったし、その必要性も感じていませんでした。
後に、周りの人々が、ブルターニュの曲をフルートで吹いたらどうかと強く勧めてくれたので,やってみようと思ったのです。

フルートを始めたとき、一番大きな影響を受けたのはどなたですか。
今、特に好きなプレーヤーを何人かあげてください。

1975年当時、チーフタンズの初期のレコードを別にすると、私はアイリッシュフルートの音楽をほとんど知りませんでした。
1976年に初めてアイルランドに行ったとき、トム・マックヘイルTom McHale、マット・モロイ Matt Molloy、シェイマス・タンゼイSeamus Tansey、ロジャー・シャーロック Roger Sharlockのレコードを何枚か買って帰りました。
ですから、これらのミュージシャンの影響は幾分受けたと思います。
でも同時に、私は主にボンバルドを演奏していましたし、当然ブルターニュのミュージシャンの影響を一番受けていると言えます。
フルートを始めてまもなく、ベルファストのデシ・ウィルキンソン Desi Wilkinson(フルート)とティローンのパディー・オニール Paddy O’Neill(フィドル)に会いました。
二人はアイルランドのことを色々教えてくれました。
(音楽だけでなく歴史や政治も!)彼らから多くの曲を学びました。
デシが私のスタイルに直接影響を与えることはありませんでしたが、彼のおかげで自分の演奏に関して色々考えるようになりました。

それ以来私が受けた影響は様々です。
フルート奏者だけでなく、ブルターニュの歌手、ボンバルドやバグパイプの奏者、trujenn gaol(ブルターニュのクラリネット)の奏者からも影響を受けています。

フルート奏者について言えば、特に好きなのはジョシー・マクダーモット Josie McDermottとパディー・テイラー Paddy Taylorです。
彼らのフレージングはシンプルです。
(ブルターニュのミュージシャンを連想させます。ブルターニュとアイルランドの音楽には多くの違いがあるのですが。)
今日のアイルランドのフルート奏者について言えば、印象深い人を何人かあげることができますが、好きな人は他にも大勢いるのです。
マット・モロイは常に素晴らしい演奏で、シーマス・タンゼイは自信にあふれたエネルギーで私を魅了しますし、ケビン・クロフォード、マイケル・マックゴールドリック…でも、あまり多くのアイリッシュ音楽のレコードを聞いてはいないということも言っておかねばなりません。
訪ねてきてくれるアイルランドの友達と交流したり、録音させてもらったりするほうが好きですから。

伝統的アイルランドのフルート奏法と、あなたが開発したブルターニュの奏法の違いを幾つか教えていただけませんか。 ブルターニュ音楽をフルートで演奏する上で、あなたが直面した問題について何かコメントはありませんか。

難しいですねえ。
ブルターニュにはフルートの伝統はありません。

ブルターニュ中部では短いファイフは使われていましたが、第一次大戦の頃に消えてしまい、残ったのは何枚かの写真だけでした。
パトリック・モラー Patrick Molardとアラン・コロア Alan Kloatrがイングランドの木製フルートを使った最初のブルターニュの音楽家です。(1975年頃、彼らがアラン・スティーベル Alan Stivellと演奏していた頃、アイルランドで購入)
でも、彼らは特にブルターニュ音楽をフルートにあわせようとしたわけではありません。

フルートでブルターニュの曲をどのように演奏すればいいかを考え始めたとき、それまでにもまして、ブルターニュのあらゆる地方の歌手や”sonneur”を聞くようになりました。(”sonneur”というのは、バグパイプやボンバルドの奏者、広い意味ではすべてのブルターニュ伝統音楽の音楽家の意味)
それから文字通り、彼らの音楽やフィーリングを私のフルートに「翻訳」しました。
時間がかかりましたし、ブルターニュ音楽を演奏するために自分が選んだテクニックがいいか悪いかなんて、確かなことは言えないのです。 「伝統を作りだす」ようなものだと思います。

でも、質問へのお答えとして、私の音楽の基本だと思っている幾つか重要な点についてお話しましょう。

● 伝統的ブルターニュ音楽には、多かれ少なかれよく知られ、また尊重されてきた、多くの異なったスタイルがあります。
ブルターニュは大きく西部と東部に分かれ、それぞれがさらに小さな地域に分かれています。 (コルヌアイユ、レオン、トレゴール、バンヌ、ペイドルディア、ルドン、ナント、レンヌ、ポンティエフなど)
この文化的、地理的多様性は、どんな楽器を演奏するにしても、音楽にも現れないわけはありません。
ですから、モードの選択、フレージングや、装飾、アーティキュレーションは重要で、注意する必要があります。

● リズムは最初思うほど単純ではありません。
ブルターニュの曲の多くでは、2拍子と3拍子のリズムの間にはたいがいスイングがあります。
気づかないほどわずかなこともありますが、大切です。

● すべてのダンスのテンポは厳密に守らなければなりません。
ダンス曲は速すぎても、遅すぎてもいけません。
それに、正しいテンポで演奏すれば気分がいいし、言ってみれば、踊っている人達とトランス状態を共有して、ダンスの中に包み込まれるような心地がするのです。(ブルターニュのフェスト・ノズ fest-nozでは、何百人もの人が踊ります)
※フェスト・ノズ はブルターニュに伝わる伝統的ダンスの集いです。

● ブルターニュ音楽は基本的に単旋律で、ほとんどいつも変奏しています(時にはほとんど即興で)。
ですからハーモニーを使うときは慎重でなければなりません。
必ずしも歓迎されるとは限りません。

フルートのテクニックについて。
練習して経験をつんで、次のようなことがわかってきました。

● 長い間、私はとても大きな音でフルートを吹いていました。
でも、強く吹き過ぎたり、「フルートをねじ伏せる」ようなことが、微妙な色合いや、深い息遣いや、いいアーティキュレーションなどの可能性を狭めていることに気づきました。
● また、アイルランド音楽を演奏することで身につけた動きの中で、捨てる必要のあるものもありました。
フルートの装飾には普遍的なものもあります(カットやタップ)が、そうでないものもあるのです。
たとえば、ロールはブルターニュの音楽には合いません。
アイルランド音楽では最もよく使う装飾ですね。(私の聞いた昔の演奏家で使わない人もいましたが。)最初はロールを使わないようにするのには、抵抗があったのですが、しばらくして、うまくいくようになりました。

● 一般的に、ブルターニュの曲のフレーズをそれらしく吹くには、音(note)のはじめだけ出なく、終わりにもタンギングできるようにならなければなりません。 ・ ちょうどボンバルドでするのと同じようにするのです。(つまり、TAH HAT—TAHA-HAT’TAというふうに。これでわかりますか?…)
前に述べた2拍子3拍子のスイングは、ニュアンスを含んだタンギングと「レガート」と呼吸の拍の組み合わせで、フルートに移すことができると思います。
● T/D/K/Hの様々なタンギングをつけることで、さらに微妙なニュアンスを表すことができます。
どこか歌うのに似ているかもしれません。

あなたの演奏を聞いて、多くの人がまず圧倒されるのは、素晴らしい音色です。
それは、もちろん、あなたの技術でもありますが、フルートの品質でもあると思います。
あなたはフルートにどのような品質を求めますか。

ありがとうございます。
フルート奏者は演奏中に自分の音は聞けないと言われたことがあります(ちょうど自分の話す声が聞けないように)。
頭の中で響いて聞こえ方が変わってしまうのですね。


フルートを始めてから今までに、何本ものフルートを吹いてきました。
そのフルートが私の今日の演奏を決定してきたと思います。

長い間、キーなしか、1つから3つのキーがついたフルートを吹いてきました。
ホルザフェル Holzapfel(D管)、Bruce du Ve (D管)、ハミルトン Hamilton (D管)、レアール Lehart(D,B♭、E♭、F管、古いブルターニュスケールのG管)などです。
それからパトリック・オーウェル Patrick Olwellの竹のフルートも2,3本ありました。

それから3年前、3本の8キーフルートを吹き始めました。
古いクックのD管と、ルーダル&カルトのE♭管と、ブルターニュのピーター・メレベト Peter Merebethが作ったD管でした。
今はクリス・ウィルクス Chris Wilkesが作ったプラタン型の8キーのD管とE♭管を吹いています。
素晴らしいフルートを作る人です。
レアールのフルートも吹いています。
メーカーさんはご存知ですが、私はどんなフルートがほしいのか、しっかり説明して選びます。
これ以上は言えないくらい言います。

インドのフルートも吹いていますね。
どうしてインドのフルートを吹くようになったのですか。
どなたに習ったのでしょうか。
アイルランドとブルターニュとインド、他にどんな音楽(そしてフルート)を演奏しますか。

フルートを始めてからずっと、世界中の様々なフルートの音楽(そして歌)に、耳を傾けてきました。
私が聞いた素晴らしいものの中で、フルートで演奏したインドのラーガ(インド音楽の旋法)、特にハリプラサド・チョウラシア Hariprasad Chaurasiaによるものが、私にもっとも強い影響を与えました。
眠りを誘うようで、リラックスできて、同時に活力を与えてくれる。
彼の音楽を聞かずに1週間すごすことはできません。
何年か前、デリーからハレシュ・ワルダン Harsh Wardhan師を招いて、ブルターニュで「バンスリー(竹のフルート)による北インド伝統音楽」の入門ワークショップを開きました。

とは言っても、私はバンスリー奏者ではありませんし、ワークショップの世話はしましたが、ラーガがどういうものなのか、よくわかっていません。
ハレシュ・ワルダン師はインドへ行って、彼の元で学ぶようにと言ってくれましたが、それには一生かかってしまいます。
私は、3週間ブルターニュから離れるだけでホームシックにかかってしまうのです!でも、家で寛いでバンスリーを吹くのは本当に好きです。

ブルターニュとアイルランドとスコットランドを少し、それ以外の伝統音楽はやっていません。
時々コンサートでバルカンの曲(何年も前にコルノグ Kornogでよく演奏したものです)とか、アメリカインディアンの曲を入れたりします。
それだけです。

マーティン・ヘイズ Martin Hayesとデニス・カヘル Dennis Cahill、あるいはケヴィン・バーク Kevin Burkeとマイケル・オドムネイル Michael O’Dhomnaillのように、あなたとギターのイヴォン・リューとの演奏は本当にぴったりのデュオですね。
彼のギターはただの伴奏だなんて言えません。
どうやって二人で曲のアレンジを作り出したか教えてくれませんか。

まず、私たちのスタイルとムードに合うと思える曲を選びます。
それから興味を引いた箇所で立ち止まりながら吹きます。
私は普通リズミカルな構成を提案し、ハーモニックなアイディアはイヴォンの直感に任せます。
私たちは曲を書き取ったりしません。
二人とも、楽譜を読んだり書いたりできないのですから。

フルートの初心者に何かアドバイスはありますか。
フルートでブルターニュの音楽を吹きたい人へのアドバイスはどうでしょうか。

もちろん、まず他の人の演奏をきいてください。
できるだけ回数多く、注意深く聞いてほしいのです。

教えられたことと、自分で見つけたこと、経験したこととのちょうどいいバランスを見つけてください。
時にはそれが大きな違いになります。

うまくいかなかったら、吹く時、できるだけ具合のいい姿勢を探してください。

● 立っていても座っていても、上体をまっすぐにしてください。
● フルートを水平にしてください。あるいは、少なくとも唇と平行にしてください。

うまくいかなかったら、できるだけゆったりと呼吸する練習をしてください。

演奏するたびに、そこに注意してください。

息を切らしたまま曲を吹き始めてはいけません。
ゆっくりと何か思いつくままに吹いて、心を解き放って、鼓動をしずめるように集中してください。
そして、正しく呼吸していると思った時が、フルートを吹く時なのです。

ただフルートを吹くと考えただけで、心地よくなれるのです。