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ケルトの笛 インタビュー

グレイ・ラーセン(Grey Larsen)

※ このインタビューは、ホームページ「A Guide to the Irish Flute」より、著作権保有者のBrad Hurley氏の許可を得て日本語翻訳し、公開しています。英語翻訳:村上亮子


経歴

グレイの“Essential Guide to Irish Flute and Whistle”は、メル・ベイ出版から2003年11月に出ている。
詳細や注文についてはグレイのウェブサイトをチェックしてください。
 

出典 A Guide to the Irish Flute

グレイ・ラーセンは北アメリカのフォークミュージックのファン、とりわけアイリッシュ愛好家の間ではよく知られた名前である。
アメリカにおけるアイリッシュフルート、ティン・ホイッスル、コンサティーナの代表的人物の一人で、作曲家としてもよく知られ、彼のケルトスタイルの曲、特に“Thunderhead”は世界的に有名である。
彼の専門知識はギターやキーボードにも及び、フィドルではアメリカや北欧の伝統曲を演奏している。

アイルランド伝統音楽を学ぶ中で、グレイはスライゴー州のフルート奏者トム・バーン Tom Byrne、リートリム州のフィドル奏者トム・マカフリー Tom McCaffrey、ゴールウェイのメロディオン奏者マイケル・ケネディMichael Kennedyと共に多くの時間を過ごした。
それぞれアイルランドからの移住者で、グレイの故郷であるオハイオに住んでいた。
彼自身も音楽を求めてアイルランドを訪れている。

1975年にマルコム・ダルグリーシュ Malcolm Dalglishと組み、それから1982年にはダルグリーシュとピート・サザランド Pete Sutherlandと共にメタモラ METAMORA というトリオを作り(後にマーチン・シンプソン Martin Simpsonも加わる)、それ以来アメリカ、ヨーロッパのコンサートやフェスティバルで多くの聴衆の前で演奏している。

レコードやCDで楽しんでいる人はさらに多く、10万枚以上が売れ、批評家や音楽愛好家の高い評価を得ている。
CDの一例として、Banish Misfortune、Thunderhead、The Great Road、ウィンダムヒルレコードのMorning Walk、A winter’s Solstice IIがあり、彼のソロアルバムThe Gathering は1987年にNAIRD(The National Association of Independent Record Distributors)の特別賞を得ている。

1992年、フランス系カナダ人でギターとヴォーカルのアンドレ・マーシャル Andre Marchandとデュオを組んだ。
彼らのCD「The Orange Tree」は1993年にシュガーヒルレコードから出て、CDレビューマガジンでその年のワールドミュージック部門の上位に選ばれた。

映画音楽作曲、レコードプロデューサー、レコーディングエンジニア、シングアウトマガジン(1950年にピート・シーガー Pete Seeger、ウディー・ガスリー Woody Guthrie等が創刊した世界フォークミュージックの季刊誌)の音楽編集者としても知られている。
多くの映画愛好家は1989年の映画“Far North”のサム・シェパードやジェシカ・ラングのために書かれた曲や有名な子供向きのケーブルTV番組“Tuck Everlasting”の曲を聴いたことがあるだろう。

グレイのウェブサイトでは、彼のCD,書籍、コンサート、また音楽学校や教育機関の音楽学部でのアイリッシュフルートのマスタークラス、専門教育など様々なクラスの情報が得られる。

〈ディスコグラフィー〉

* The Green House / Grey Larsen and Paddy League (スリーピークリークミュージック)-2001年
* The Orange Tree / Grey Larsen and Andre Marchand(シュガーヒルレコード)-1993年
* Morning Walk / Metamore (ウィンダムヒルレコード)-1988年
* The Great Road / Metamore(シュガーヒルレコード -1987年 NAIRD INDIE 賞
* Metamora / Metamore(シュガーヒルレコード) -1985年
* Windham Hill Sampler ’89 / Metamoreを含むコンピレーション(ウィンダムヒルレコード)-1989年
* A Winter’s Solstice II / Metamoreを含むコンピレーション(ウィンダムヒルレコード)-1988年、500,000枚以上売れゴールデンレコード
* The Gathering / Grey Larsen(シュガーヒルレコード)-1986年、NAIRD 特別賞
* Thunderhead / Malcolm Dalglish and Grey Larsen(フライイングフィッシュレコード)-1983年
* The First of Autumn / Malcolm Dalglish and Grey Larsen (ジューンアポールレコード)-1978年
* Banish Misfortune / Malcolm Dalglish and Grey Larsen(ジューンアポールレコード)-1976年
* Helpless Heart / Maura O’Connell(ワーナーブラザーズレコード)-1990年
* Far North / サム・シェパードの映画のサウンドトラック(The Red Clay Ramblersと)、(シュガーヒルレコード)-1989年
* Stone From Which the Arch Was Made / Mark O’Connor(ワーナーブラザーズレコード)-1989年
* Step by Step / John McCutcheon (ラウンダーレコード)-1984年
* Poor Man’s Dream / Pete Sutherland(フライイングフィッシュレコード)、-1984年
* Mountain Hornpipe / Pete Sutherland(イーパクトミュージック)-1989年

※左枠:インタビュアー 右枠:グレイ・ラーセン

どんなフルートで演奏していらっしゃいますか。
どなたが作ったもので、どうしてそのフルートを選んだのでしょうか。

Firth、Pond and Hallです。
1850年代にニューヨークで作られました。
6キーで、素材はコーカスウッド(アメリカアフリカン・ブラックウッド)です。
音がよくて指穴が小さいのが魅力です。
初めて吹いた時、その音色に魅了されました。
指穴の大きなフルートと比べると、大きな音は出せないかもしれませんが、様々な音色が出せ、私が求める繊細で微妙な陰影を表現できます。

4年ほど前にクリス・アベル Chris Abell が私のフルートに新しいヘッドジョイントを作ってくれました。
それでフルートの反応が格段によくなり、いい音が安定して出せるようになりました。
アベルのヘッドジョイントは本当にいいです。
もっと低い音が出せればいいなと思うことも時にはありますが、6キーのシンプルさもフルートの軽さも気に入っています。

低いBまで出せる12か13キーのフルートも持っていて、ドイツ製で製作者はわかりません。
でもこれを使うのは主に低い音域が必要なレコーディングの時だけです。
Firth、Pond and Hallの音色とフィーリングと反応のよさの方が気に入っていますから。

あなたの演奏スタイルにはどなたの影響がありますか。
それは他のフルート奏者ですか。
それともフィドルやバグパイプや他の楽器を演奏する人でしょうか。

私の演奏スタイルには様々な楽器の演奏者や歌手の人の影響もあります。
ジョシー・マクダーモット Josie MCDermott、メアリー・バーギン Mary Bergin、マット・モロイ Matt Molloyは私の賞賛するフルート、ホイッスルの演奏者です。
他の楽器では、ノエル・ヒルNoel Hill、ケヴィン・バーク Kevin Burke、パディー・クローニン Paddy Cronin、パディー・キーナン Paddy Keenan、 リアン・オフリン Liam O’Flynn、そして歌手では、ドロレス・キーン Dolores Keane、アンディー・アーヴィン Andy Irvine、ミホール・ オドーネル Mícheál Ó Domhnaill、トリオナ・ニ・ドーナル Triona Ni Dhomhnaillなどがいます。

熱心なフルート愛好家に薦めたいお気に入りのミュージシャンは誰ですか。

フルートに意欲があるのなら、まずジョシー・マクダーモット Josie MCDermott、メアリー・バーギン(フルートよりもティン・ホイッスル奏者として、より知られているが)、マット・モロイ Matt Molloyは聞いてみるべきです。
様々な楽器の、様々な人の演奏、そしてもちろん歌も出来るだけ広く聞いてみるべきです。
スローエアーに興味がある場合は特にそうです。

フルートの初心者に何か一般的なアドバイスはありますか。
何かいい知恵とか注意すべきこととか。

装飾(カット、タップ等)が安定した拍で出来るようコツコツと努力してください。
メトロノームを使って、あまり速すぎないテンポで練習してください。
そうでないと、自分の間違いをさらに強化してしまいます。
自分で丁度いいと思うよりさらにゆっくり練習し、自分の演奏を聞いてください。
鏡の前で練習してください。

その理由は
(1) あなたの手、肩、腕、首、アンブシュアがどうなっているか見ることが出来ます。
(2) 音がよりクリアに跳ね返ってきて、自分がしていることがよりはっきりと聞き取れます。
(3) さらに重要なことには、集中力を保つことができます。
宙を見つめているだけだと気が散りやすいものです。

フルートは演奏している姿を自分では見ることができないという弱点があります。

よい練習は90%集中力で決まります。
また、疲れないで長い間演奏するのに特別な肺活量は必要ありません。
そうではなくて、息を効率的に使うことを学ぶ必要があり、それは主にアンブシュアの機能、顔の筋肉を緊張させずに唇の間に本当に小さなアパチュアを作れるようになることです。
もちろん正しい姿勢と横隔膜呼吸がとても大切なのは言うまでもありません。

色々な楽器を演奏されるのですが、どの曲をフルートで演奏するか、コンサティーナやフィドルやホイッスルやギターでなくてフルートで吹くのか、というのはどうやって決めるのですか?
フルートに向いた曲とはどういうものですか。

一見フルートに向いていないと思われる曲をフルートで吹いてみるのは、なかなかいい挑戦だと思います。
BbとかBメジャーとか変わった調で吹けるように練習するのも好きです。
もちろんそうするにはフルートでキーを使うことが必要です。

また、フルートにとって低すぎる音を必要とする曲はアレンジするのに恰好の対象です。
ある音とかフレーズをオクターブ上げると、驚くような効果を生み出します。(パディー・カーティー Paddy Cartyのシャナヒーレコードの“The Jug of Punch”とMetamoraの私が吹いた“The Great Road”を聞いてみてください)」

私が一番気に入ったあなたの演奏は、奇妙な話ですが、モーラ・オコーネル Maura O’Connellのアルバム“Helpless Heart”の中の歌“Western Highway”に付けたあなたの伴奏です。
歌の終わりごろ、フルートがやさしく深い感じで、むしろメランコリーなメロディーで入ってきます。
あのフルートパートはあなたが書いたのですか。
どうしてあのアルバムに参加することになったのですか。

ベラ・フレック Bela Fleck があのアルバムをプロデュースして、私に参加するようにと依頼してきました。
“Western Highway”の終わりのほうのパートはベラの意見を聞いて私が即興で作りました。
あそこをレコーディングしている時、あそこには他の楽器も入っていました。(今となってはそれが何だったのか思い出せません。フルートパートが2つあったか、もしかしたら1つはコンサティーナだったかもしれません)
私は演奏して、それから、所々で出たり引っ込んだりしながら、この別の楽器の裏でシンプルなラインを演奏しました。
ミキシングしたとき、別の楽器のパートははずして、シンプルなフレーズを残しました。
これは他のメロディーラインの伴奏だと思われていたものです。

私もあのパートが醸し出す感じが好きです。
ミキシングで音を減らすのはベラのお手柄だったと思います。
彼がそのアイディアをずっと温めていたのか、ミキシングのときに思いついたのかはわかりません。
引き算の美学のいい例ですね。

どうしてフルートに引きつけられたのですか。
フルートの好きなところは何ですか。
フルートの嫌いな点はありますか。

大きな質問ですね。
フルートは私の表現したいことを運ぶ「乗り物」として、他のどの楽器よりも私の魂に合っています。
フルートの音楽はまさに人の息から生まれ、それ故、内面的で個人的なものです。
同じ理由で、それは歌うことや話すことと同質なものです。
言葉のない声で、私にとっては心を解き放つものです。
音色の陰影、表現、力強さ、それらすべてが混ざり合って、私を強くひきつけるのです。

問題点については、もっと低い音が出せたらなぁ、とよく思います。
それから、もちろん吹いている間は、笑ったり、しゃべったり、歌ったりは出来ません。
肩や背中が張ってきます。
不自然な姿勢になって、吹いている間は動かすことが出来ないのです。

私は1987年に交通事故にあって、背骨の丁度一番下の肋骨が背骨にくっついているところを傷つけたのですが、医学療法士が言うには、私の背骨のその部分は、フルートの吹きすぎによるねじれのストレスがかかって、弱くなっていたのではないかということでした。