バウロンについて Part1

バウロン奏者の上沼健二さんに、「バウロン」について解説していただきました。

楽器の種類と特徴

バウロンBodhránはアイルランド音楽で使われるフレーム・ドラム(枠に皮を張った打楽器)で、ゲール語の「bodhár(鈍い響き、耳の遠い人)」からきているとされています。

打面は主に山羊の皮からできていますが、鹿やカンガルーなど様々な皮が使われます。

現代にバウロンがセッションに多く使われ出した当初の楽器のサイズは18インチくらいの大きめな口径で薄めの胴のものがほとんどで、チューニング機能も付いていなかったため打面を湿らせたり乾かしたりしながらチューニングをしていましたが、最近では14〜15インチの小さめな口径で深めの胴にチューニング機能がついているものが主流となってきています。

演奏にはビーターBeaterやティッパーTipperと呼ばれるスティックを片手に持って叩くことが一般的ですが、素手で演奏することも可能です。

歴史

バウロンは19世紀半ばにタンバリンから進化したとされています。

それ以前は農村地域の儀式のための音楽に使用されていましたが、1960年代に音楽家のショーン・オ・リアダSeán Ó Riadaがコンサートに取り入れるようになってから伝統音楽に本格的に使用され普及・発展しました。

他にも元々は泥炭を運ぶための道具だったという説や、穀物の籾殻(もみがら)を分離する篩(ふるい)もしくは石から土壌粒子を分離するための篩から進化したという説もありますし、バウロン職人のパレック・マクニーラParaic McNeelaは、アイルランド南西部のケルト人が使っていた羊毛の染色もしくは選別のための道具からきているという説を唱えています。

様々な説に想いを馳せながら叩くのも楽しいかもしれません。

主な演奏スタイル

ケリー・スタイルKerry style

もっとも一般的なスタイルで、トラディショナル・スタイルTraditional styleとも呼ばれます。

ビーターの真ん中もしくは少し上あたりを持ち、ビーターの両側を使って演奏します。

トップ・エンド・スタイルTop-end style

ビーターの上を持つスタイルで、主にビーターの片側を使って演奏します。

細いビーターを使い、打面上部を使って高音を出したりします。

ウェスト・リムリック・スタイルWest Limerick Styleとも呼ばれます。

ハンド・スタイルHand style

ビーターを使わず指を工夫して演奏するスタイルで、近年は少数派になってきてはいますが、優しく暖かみのあるサウンドのため使いこなせればセッションに溶け込みやすくなります。

その他

ボトム・エンド・スタイルBottom-end style (Top-end styleと逆で打面上部で高音を出すようにする奏法)や、トミー・ヘイズTommy Hayesのようにビーターの上の部分をメインに使う奏法など、様々な奏法が発明されています。