【ティンホイッスル計測シリーズ】マイケル・バーク製作のD管ティン・ホイッスル5機種を大解剖!

ライター:hatao

当店で人気のアメリカのティン・ホイッスル職人マイケル・バーク(以下、バークさん)製作のD管モデルには、5つの種類があります。

どれも素晴らしい楽器なのですが、その特徴と違いがいまいち理解できない……という方もいらっしゃることでしょう。

バークさんは、自身の製作する楽器に独自の商品コードを振っています。

商品コードは、笛のキー、素材、モデルという3つを表しています。

例えば、DASというコードは「D管、アルミ製、セッション・モデル」の略称となります。

記事では、このコードを使ってお話をします。

バークさんが製作する5種類のティン・ホイッスルのコードは以下のとおりです。

DAS D管、アルミ製、セッション・モデル
DAN D管、アルミ製、ナローボア・モデル
DAW D管、アルミ製、ワイドボア・モデル
DBS D管、真鍮製、セッション・モデル
DBN D管、真鍮製、ナローボア・モデル

一覧にすると、アルミと真鍮のラインナップに非対称性があることがわかりますね。

アルミ製にはワイドボア・モデルがあるのに、真鍮製にはワイドボア・モデルがありません。

その理由については、記事の最後に説明します。

アルミと真鍮、素材の違いについて

2種類の素材について、ざっくりとアルミは軽く柔らかい、真鍮は重たく硬いと理解してください。

この特徴の違いはデザイン上での様々な違いにつながります。

素材が音色へ与える影響には諸説ありますが、私はアルミは明るく輪郭がはっきりした音色、真鍮は暖かく輪郭の丸い音色と感じています。

音量については、差は感じられません。

重さの違いについて

アルミより真鍮のほうが重たいため、仮に同じ寸法でアルミと真鍮で楽器を作ると真鍮のほうが重たくなります。

例えばDANは41グラムでDBNは76グラム。

2倍近くも真鍮のほうが重いのです。

上の例はざっくりと比較するために挙げたのですが、実際には完全に同じ寸法ではありません。

アルミは柔らかく真鍮は硬いという性質から、真鍮は薄くても強度が保てるので軽量化のために薄い管を採用します。

一方でアルミは柔らかいので、強度を保つために厚めの管を採用します。

マイケル・バークのティン・ホイッスルでは、アルミは0.68mm厚、真鍮は0.40mm厚です。

つまり、アルミと同じ厚みの真鍮管でティン・ホイッスルを作ると、真鍮製はさらに重くなります。

なお、それぞれの素材に楽器性能的な優劣はなく、価格も同じですから、最終的には好みの音色や見た目で選んでよいでしょう。

ボアサイズの違いについて

ボアとは笛の内径、つまり管の穴の直径です。

バークさんのティン・ホイッスルにはナロー、セッション、ワイドの3種類のボアサイズがあります。

ボアサイズの違いは音色、音量、高音の吹きやすさ、息の消耗度合い、楽器の重さ、指孔の大きさ、指孔の押さえやすさ、運指への反応の速度など、多くの要素に影響を与えます。

以下の表にまとめました。

ナロー ワイド
ボア 細い 太い
音色 輪郭が鮮やか 輪郭があいまいになる
音量 小さい 大きい
息の消耗 消耗が少ない 消耗が大きい
重さ より軽い より重い
指孔の大きさ 小さめ 大きめ
指孔の押さえやすさ ナローのほうが押さえやすい
運指への反応 ナローのほうがより速い

円筒管のティン・ホイッスルの音響的な特性として、第2オクターブが上がりきらずに低くなる傾向があります。

そのため息をたくさん入れて音程を押し上げなくてはいけません。

ナロー・ボアではその特性が控えめになるので、それほどたくさん吹き込まなくても高音が音程よく吹けます。

一方でワイド・ボアは音量が大きく、特に低音は太くしっかりと鳴らすことができますが、高音はかなり強く吹かなくてはいけません。

ただしこれは一般的な傾向の話で、DAWにはラクに高音が吹けるように工夫がほどこされています。

その点については後ほど説明します。

ボア・サイズの選択で迷う方には、息を吹く力が弱く手が小さい方にはナロー・ボアをおすすめし、その反対の方にはセッションやワイド・ボアをおすすめします。

セッションとワイド?

最後に、セッションとワイドの違いについて説明します。

実はアルミと真鍮の「セッション・モデル」の寸法は、異なります。

アルミ・セッションの内径は12.5mm、真鍮・セッションの内径は13.4mmです。

ちなみに、ナローボアはどちらも12mmです。

バークさんはもともとはDAS, DAN, DBS, DBNの4種類のラインナップを製作していました。

それに、新作としてDASよりもボアの広いDAWを追加しました。

DAWのボアの直径は、DBSと全く同じ13.4mmです。

5種類のボア・サイズは以下のようになっています。

DAS 12.5mm
DAN 12.0mm
DAW 13.4mm
DBS 13.4mm
DBN 12.0mm

では、DBWは無いのか? はい、無いのです。

マイケル・バークによると、DBS以上にボアを広げてしまうと極端にうるさく、バランスが取れなくなってしまうから、だそうです。

なお、指孔の比較ですが、ワイドボアなら指孔も当然大きいのだろう、と考えがちですが、上の3つの指孔に関しては、むしろワイドボアのほうがセッションよりも小さいのです。

指孔のサイズは以下のとおりです。

セッション ワイド
L1 5.6mm 5.6mm
L2 7.4mm 5.8mm
L3 7.4mm 6.1mm
R1 5.2mm 5.2mm
R2 7.8mm 7.8mm
R3 7.5mm 7.6mm

なぜだと思いますか?

それは、ボアを広げると倍音の音程が上がりにくいという笛の特性を考慮して、ラクに高音が吹けるように指孔の位置とサイズを工夫したためだと私は考えています。

そのため、DAWはそれほど一生懸命に吹かなくても音程の良い第2オクターブ目が演奏できます。

まとめ

これまで私自身も違いがはっきりしなかったマイケル・バーク製作の5種類のD管ティン・ホイッスルについて、調べてみました。

お買い物の参考になったら幸いです。

私自身はDASが一番気に入っていますが、マイケルさんの最高傑作というDAWも、ぜひ店頭で吹いてみてください。

表現力や音量の豊かさを感じていただけることと思います。

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