【私とケルト音楽】第十回:フィドル奏者 小松大さん 前編

シンガーソングライターの天野朋美がお送りする「私とケルト音楽」。

このコーナーでは様々な世界で活躍している方に、ケルト音楽との出会いやその魅力についてお伺いしていきます。

さて、今回のゲストはフィドル奏者であり”音楽のある暮らし”をテーマにひとびとへワクワクする時間を届ける会社、Ode Inc.(オード インク)代表の小松大(こまつだい)さんです。

3回に渡りたっぷりとお届けしていきますのでどうぞお楽しみください。

フィドル奏者と会社経営、二つの顔

――演奏活動をしながら会社を経営し企画もされていますが、まずはプレイヤーとしての小松さんの事を教えてください。

小松:最近ではラグビーワールドカップの対アイルランド戦の時に僕も会場で演奏しまして、NHKの中継ではインタビューを受けました。

アナウンサーの方から「どっちが勝つと思いますか?」と聞かれて、ここは日本というべきところだったのですがつい「アイルランドを応援したいですね!」と言ってしまって、スタジオにいた五郎丸さんが微妙な顔をしていたようです(笑)。

ギタリストとデュオとして活動する時には”幸せなアイリッシュ”というより、ダークで渋めの”ザ・男”というテイストで演奏しています。

1stアルバムに参加しているギタリストの山本哲也さんは元々ロックやフュージョンをやっていた人で、2人でアイルランド音楽を演奏するときにはギターとフィドルでユニゾンなど、独自の雰囲気を入れています。

小松さんとケルト音楽の出会い

――どのようにケルト音楽に出会い、演奏していくことになったのですか?

小松:ケルト音楽を知ったきっかけは、大学4年生の時に学園祭で友人が葉加瀬太郎さんのアイリッシュ・セットを演奏していて、それを聴いて「こういう感じは好きだな」と思ったのがきっかけです。

ケルト音楽に関してテレビゲームは一切経由していなくて、僕の中ではリンクしてなかったですね。

それまでは日本の古いフォークだったり、ボブ・ディランやピーター・ポール&マリーなど70年代の音楽など、親の影響もあったかと思いますがちょっと渋めのしゃがれた感じが好きでした。

――プロフィールを拝見しましたが、高校も大学も音楽学科に行かれたのですね!

小松:小学校の頃から音大を目指していたわけではなくて、街のバイオリン教室に通っていて、コンクールに出るとかそういう事もしていなくて、純粋にバイオリンが好きで演奏していました。

中学2年生の時に普通科ではなく音楽科に行きたくなって、地元の音楽科のある高校に行きました。

全国的にも有名でレベルが高い所だったので、何とかぎりぎり入ったという感じです。

公立高校の音楽科で、高校2年生までバイオリン専門だったのですが、3年生の時にヴィオラに転科して、大学でもそのままヴィオラを専攻しました。

ヴィオラに転科した理由は、将来音楽で仕事をするのに需要があるという事もありましたが、ヴィオラの少し枯れていて哀愁を感じる音色に惹かれたからです。

2005年に音大を卒業したのですが、その後すぐに音楽の仕事ではなく一般職に就いていた時期があって、その時週末にCD音源を聴いたり、hataoさんのホームページを見ながらケルト音楽を演奏していました。

その後仕事をやめ、「これから何をしようかとはっきり決めていなかったけれどアイルランドが気になるから行ってみよう」という事で渡愛を決めました。

心地よい東部のリズム

――アイルランドに実際に行ってみていかがでしたか?

小松:初めて行ったのは2005年の12月で、時期的にも曇っていて暗い印象でした。

地球の歩き方を持って、「とにかくいってみよう」という感じでしたね。翌年の春にまたアイルランドに行きまして、その時は3か月程クレア州のエニスに部屋を借りて住んでいました。

そこから東の方に行くとフィークルという音楽がさかんなエリアが合って、そこのセッションがすごく良いんです!

東部のリズムが自分の中で心地よかったですね。

月並みですがギネスはやっぱり美味しくて、アイリッシュブレックファストも好きでした。

カリカリに焼けたベーコンやブラックプディングとか、時々無性に食べたくなります。

悲しみを纏うアイルランド音楽

――小松さんの思うケルト音楽の魅力を教えてください。

小松:大きく言うと二つあって、一つはハモリがガンガンあるものではなくメロディが主体のシンプルな音楽で、悲しみを感じるところや風景まで見えてくるような所が魅力です。

もう一つは、アイルランドに滞在して思ったのですが音楽の在り方が自然なところですね。

今までクラシックの世界にいて、音楽をやっていること自体を特別な事だという感覚を持っていましたが、アイルランドではミュージシャンとお客さんの距離が近く、お客さんもミュージシャンに対して自然に振舞っていて。

アイルランドに滞在していた時に僕がフィドルを習っていたパット・オコナーに子供が生まれたんですが、村の人達もそれを知っていてパブで彼のセッションがある時に「パットおめでとう」と気軽に声をかけていました。

僕の中で特にプロミュージシャンは特別な存在という感覚があったので、アイルランドでは音楽が自然にあって、この人は凄い人だとかそういう考え方ではない所が良いですね。

表現力やリズム感覚に惹かれる マーティン・ヘイズ

――小松さんの好きなミュージシャンを教えてください。

小松:先ほどお話したパット・オコナーはもちろんですが、同じフィドル奏者のマーティン・ヘイズも好きです。

彼はアイルランドのトップミュージシャンで、最初に聴いたのはデュオやバンドの形式でした。

パットと同じクレア州出身で、表現力やリズムの感覚には惹かれるものがあります。

友達がCDを貸してくれたのがきっかけで、それからハマりましたね。

ケルト以外だとヴィオラ奏者のマキシム・リザノフです。

クラシックの演奏は優雅なものが多いですが、彼の演奏は攻撃的な一面を持っていて面白いですね。

一度クラシックから離れた時に偶然彼の音源を見つけて、「こんな風に弾いてもいいんだ」ともう一度ヴィオラと向き合ってみたいと思わせてくれたミュージシャンです。

一時、演奏だけでなく見た目も追いかけてみた時期があります。

髭も生やしてみたりして(笑)。

日本のミュージシャンではギタリストの真島昌利ですね。

ご存知ブルーハーツのマーシーです。

声、詩、ビジュアル、世界観すべて好きです。

他には、コアなファンがいる”ゆーきゃん”というアーティストが好きで、くるりなどとも親交が深く、一部では”日本一声が小さなシンガーソングライター”とも呼ばれています。

(次回へつづく)

フィドル奏者でありOde Inc.(オード インク)代表の小松大さんをゲストにお迎えした第10回「私とケルト音楽」いかがでしたか?

次回は小松さんの楽器へのこだわりやフィドルの師匠パット・オコナーについてお届けします。

どうぞお楽しみに!

【Profile】


出典 https://www.ode-inc.com/

ゲスト:小松大(こまつだい)
フィドルとヴィオラというふたつの楽器を手に音楽と人と場所をつなぐアーティスト。
“音楽のある暮らし”をテーマにひとびとへワクワクする時間を届ける会社、Ode Inc.(オード インク)代表。
https://www.ode-inc.com/
インタビュアー:天野朋美(あまのともみ)
ケルトを愛するシンガーソングライター、やまなし大使。
株式会社カズテクニカCM出演中。
https://twitter.com/ToMu_1234