ゴールウェイの女の子と、歌手のエド・シーラン

ゴールウェイの女の子と、歌手のエド・シーラン

みなさん、エド・シーランという歌手をご存知ですか?

今さらここで説明するまでもなく、世界的な大スターなんですが、くしゃっとした赤毛が特徴のカワイイ系のお兄さんです。

映画「ホビット」2作目の主題歌を歌ったことでも有名な彼が、2017年に発表したアルバム「÷」の中に、とても興味深い曲が2曲あったので、ご紹介。

まず1曲目のタイトルは「Galway Girl(ゴールウェイの女の子)」

ゴールウェイは、アイルランドの西(左)側にあるささやかな港町で、ゲール語(アイルランドにある元々の言語)文化圏「ゲールタハト」でもある、アイルランドらしさの残る町。

この曲は、そんなゴールウェイからダブリンに出てきて、アイリッシュバンドでフィドルを弾いている女の子が、あろうことか(?)出会って恋した相手がイギリス人だったということを、イギリス人の男の子目線で陽気に歌った伝統音楽テイストの濃い一曲です。

歌のおおまかなお話はこんなかんじ。

アイリッシュバンドのフィドル弾きの女の子が、恋した相手はイギリス人。
グラフトン通りのパブの前で出会ったふたりは、一緒にお酒を飲んで、しゃべって、踊って。
ダーツして、ビリヤードして、キスして、踊ったあと、彼女は伝統曲を歌ったんだ。
店が閉まる頃には、手を取り合って彼女の家に招かれた。
つまみとお酒を開けて、最高の夜を過ごしたんだ!
(元の歌詞はこちらでご覧いただけます)

的な感じ。(なんだか、うらやましい)

エドは、ルーツがアイルランドにあるので、前々からアイルランド伝統音楽を演奏したい、作ってみたいと公言していて、以前に何度か挑戦したけど、なんやかんや頓挫して、しばらく寝かせてたんだけど、今回のアルバムでついにそれが叶ったんだ!と語っています。

なので、彼のアイルランド愛の表れとして、この歌詞の中に、アイリッシュな単語が本当にたくさん出ているので、簡単な解説付きで紹介してみます。

フィドル(Fiddle):

言わずと知れたフィドル、ヴァイオリンじゃなくて、ちゃんとフィドルって言ってます。

イギリス人に恋をした(But she fell in love with an English man):

これはもう定番ネタ。

反英精神を受け継いだ土地で、イギリス人に恋するなんてのは、ロミオとジュリエット級の所業?

グラフトン通り(Grafton Street):

アイルランドの首都ダブリン、石畳といい感じのパブが並ぶテンプルバーの、目抜き通りのお名前。

有名店も多くいつも人通りが多いので、若いミュージシャンたちが、いたるところで演奏している活気溢れる通り。

チェイサーでジェイミー(Jamie as a chaser):

日本でチェイサーといえば、強いお酒を飲んだあとに飲む弱いお酒やお水のことを指すのが一般的ですが、イギリスでは逆に弱いお酒のあとに飲む強いお酒のことを指すようです。

ジェイミーはジェイムソン・ウィスキーの愛称。

ちなみにアイリッシュ・ウィスキーは世界五大ウィスキーのひとつ。

楽しむためのジャック(Jack for the fun):

ジャックは、アメリカウィスキーのジャック・ダニエル。

テーブルの上のアーサー(Arthur on the table):

これはアーサー王かしら?と思われるかもしれませんが、アイルランドが世界に誇る黒ビール、ギネスの創設者アーサー・ギネスのアーサー、つまりギネスビールのことになります。

ジョニーをショットで(Johnny riding as shot gun):

ショット(ガン)は強いお酒を、ショットグラス(ちっちゃいやつ)でぐいっと一気に飲み干すこと。

ジョニーはアイリッシュウィスキーのパワーズというブランドを立ち上げたジョン・パワーズの愛称。

ヴァン(Van on the Jukebox):

ヴァンは、北アイルランド出身の伝説的歌手ヴァン・モリソン。

ジュークボックスでヴァンの曲に合わせて踊る、という感じで歌われています。

ケーリー(Cèilidh):

アイリッシュダンスのひとつ、ケーリー・ダンス。

伝統曲を歌った(Singing to Trad tunes) /キャリックファーガス(Carrickfergus):

ケーリーを踊った後に、彼女がアイルランドの伝統曲を歌います。

その曲が「Carrickfergus」。

ざっとさらっただけでも、結構なマニアックワードがてんこもりですね!

全体を通して、アイリッシュ=酒飲みという定番ネタも回収しています。(ウィスキーとウィスキーとビールとウィスキー飲んで、上では紹介していませんが、彼女の家に行ってからもワインを開けています!なんて酒が強いんだ、若人たち)

これだけのアイリッシュワードを忍び込ませた一曲ですが、さらに北アイルランドの伝統音楽バンドBeogaを招いて録音されているので、ベースはとってもトラッド風、でも曲調はちょっこし現代風。

これぞまさに新しい伝統音楽!という感じになっていると思いませんか?

関連記事

ナンシー・マリガンとエド・シーラン