【後編】UKのフルート奏者 トーマス・マクエルヴォーグさん インタビュー

トーマス・マクエルヴォーグ(Thomas McElvogue)

※この記事は、トム・マクエルヴォーグさんの許可を得てご自身のホームページの記事を翻訳、公開しています。

前編はこちら
https://celtnofue.com/blog/archives/1997

英語翻訳:村上亮子

BIOGRAPHY

10代後半にはニューキャッスルの音楽シーンにもう一人のミュージシャンが現れ、私にとっては演奏したり飲んだりする仲間になりました。

リーズのポール・ルネ((Paul Ruane)です。ポールは1つ年上で、音楽に掛ける情熱と腕前は誰にもひけを取りませんでした。

2,3年の間ポールと私は多くの時間を共に過ごしました。

残念なことにポールは2016年に短い闘病の末に癌で他界し、タインサイドやもっと離れた地域にも喪失感が広がりました。

またダラム州セッジフィールドのフルートの眠れる巨人ノーマン・ホルムズ(Norman Holmes)にも出会いました。

何人かの若いミュージシャンもその足跡を残し始めていました。

例えば才能にあふれたマルチ・プレイヤーのクレア・マン(Claire Mann)、バウロンとブズーキを演奏する才気あるパディー・カー(Paddy Kerr)などです。

あの時代のニューキャッスルには素晴らしい音楽と楽しい語らいの時間がありました。

仕方のないことですが、若者の多くが身を固めたり引っ越したりして静かな時間がもどり、私たちが去った後は新しい世代が埋めていきました。

デス・ハーレー(Des Hurley)はこの時代の大きな刺激の源であり、また今日も独特でスタイリッシュな演奏スタイルで知られています。

デスは私をイギリス中の血気盛んな多くのミュージシャンと引き合わせてくれました。

自分と同じようにこの音楽に夢中になっている人がいると知るのも嬉しいことでした。

何名か挙げてみると、その中にはジョー、エンダ&ロナン・モロイ(Jo, Enda & Ronan Molloy)、ケビン・クロフォード(Kevin Crawford)、イヴァン・マイラティチ(Ivan Miletitch)、ブレダン・ボイル(Brendan Boyle)、マルコ・ポリアー(Marco Pollier)、マーク・エバンズ(Mark Evans)、ミック&ポリン・クニリー(Mick & Pauline Conneely)などがいました。

本当に素晴らしい時代で、あの頃のバーミンガムのセッションは何物にも代えられないものでした。

セッションは大概イヴァン・マイラティチがお膳立てをしてくれて、彼は比類のない伴奏者でした。

この時代に終わりが来たのは残念なことです。

光陰矢の如しで、いつかは終わりが来るものなのです。

いい時代でした。

修業時代に持っていたフルートは、ルーダルやプラテンのコピーでした。

17歳になって職を得て、銀行でお金を借りて、素晴らしいフルートを買いました。

初期のクリス・ウィルクスのフルキー付きDフルートです。

これで人生は完成したと思いました。

フルキーであるだけではなくて、キーが金メッキだったのです。

その方が演奏性がいいと考えたのだと思います。

この時からフルートの演奏と学びが再開しました。

最低音のDだけではなく、その下にもいくつか音があることを知りました。

私の演奏スタイルはウィルクスのDフルートを手にしてから変わりました。

このフルートは手放して、クレア・マン(Claire Mann)に売りました。(彼女の音楽をご存知の方もいらっしゃるでしょう。ご存知なければ調べてみてください。)

同じ頃にFのプラテンをノーマン・ホームズの持っていたDのウィルドのフルートと交換しました。

このフルートは2000年にダブリンのマックニール楽器店で素晴らしいフルートを見つけた時まで使いました。

今までに見たことも吹いたこともないようなボックスウッドのルーダル&ローズでした。

今はホームズ₌マクノートンのコンサートDフルートを吹いています。

それはこのボックスウッドのルーダルのコピーです。(ピンクアイボリー製であることを除いて。http://www.holmesmcnaughton.com/

ホームズ₌マクノートンのフルートはより安定していて、気まぐれな所がありません。

他のメーカーのも色々試してみましたが、私にとって重要なのはキーの操作性と音のクオリティーでした。

ホームズ₌マクノートンは銀のキーを使っていて、それがキーを使う半音を吹く時、安定した演奏を可能にします。

これらの笛は比較的新しいものですが、音色のクオリティーと演奏の安定性には感嘆します。

この2つの特性はルーダルにはなかったもので、ホームズ₌マクノートンにはあります。

このフルートはまた反応がよく、それは今までは本当に良いルーダルかウィルクスにしか無かったもので、今ではホームズ₌マクノートンから得られるものです。

これらの要素をー緒にして、ノーマン・ホームズとビル・マクノートンは本当に素晴らしいフルートを作っていて、すでに多くのフルート奏者から高い称賛を得ています。

またコリガンのFプラテンの完成型も吹いています。これは新しい楽器で、まだ短期間しか吹いていませんが、吹いていて楽しい楽器です。

様々な機会に、どのフルートが好きかとか、どのメーカーがいいかと聞かれることがあります。

私は古いオリジナルのフルートも、現代の多くのフルート製作者が作った笛も吹いてきました。

比べるのは嫌ですが、自分も同意できる唯一の考えは、フルート奏者はそれぞれ違うということです。

ある製作者が作るある型のフルートはある演奏スタイルには他のフルートより適しているということはあります。

私の演奏にあっていると引き付けられるフルートは、ルーダル、プラテン、ウィルクス、そしてホームズ₌マクノートンです。

古い楽器の不安定さ、数が少ないことや値段にイライラが高じてきた初期の頃から、私はウィルクスに注目してきました。

その頃以来、クリス・ウィルクスやホームズ₌マクノートンの新しいフルートに決めてきました。

どちらのメーカーも素晴らしいフルートを作っていて、その安定性、丈夫さ、技術、職人魂に称賛を惜しみません。

もう一度言いますが、これは私の経験に基づいた個人的意見であり、他の人はたくさんある他のメーカーのフルートに満足していると思いますし、私もそれを尊重します。

最後にもう1つ。

フルートがフルート奏者を作ることはありませんし、今までもそんなことはありませんでした。

もしそれが言えるなら、マット・モロイのフルートを手に入れればいいということになってしまいます。

フルートは、それがどんなに良いフルートであっても(あるいは悪いフルートであっても)、その楽器から最善の音を引き出す腕を持ったフルート奏者が必要なのです。

私は長い間、このフルートはあれよりも良いものかどうかと気にしすぎて、気持ちが落ち着きませんでした。

本当に大切なことは製作者を決めたらそこで頑張りぬくことです。

もちろん、多くの製作者を試してみます。

が、フルート製作者を選ぶのにこだわりすぎることはしません。

フルートの音程があっている限り、後は演奏者が楽器に秘められた力を引き出すだけなのです。

どれ程演奏するかによって、半年から数年もかかります。

1つ私が気付いた大切なことは、フルートは今日ではそれほど当たり外れはありませんが、演奏者の方は今でも当たり外れが大きいということです。

自戒を込めてそう思います。

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